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『碧の章』第16話:撃鉄先生の危機対策授業

初めて評価をいただきました。

ありがとうございます、これからも頑張ります。

【《撃鉄》アリアングルーヴェルジェ】


 利緒が知っている情報は、フレーバーを含めてカード自体の記述でしかない。というのも、各種公開されているシナリオには登場しない人物だからだ。


 それでも、記憶に残っていたのは、「配置時に低コストカードを回収する」効果に制限がなく、ユニット、魔法どちらを消費していても場面に合わせた選択ができる強カードだったから。

 場に出ただけで仕事をしているにもかかわらず、他のカードを守る効果まで持っており、ブースター販売後の中核になりうると評価されていた。


 所謂クラシックな露出の少ない格好ながら、そんなメイドの格好に加えてキツイ目つきが良い、という意見が掲示板で多々見受けられ、イラスト自体の評価も高いカードでもあった。


「アリア君は、30年以上学園の教育に携わっていて、育てるという点ではかなりのベテランだ。」


 安心してかかっていくがいい、というセラヴィの言に、アリアはスカートを軽く持ち上げてお辞儀をする。

 30年以上の年月が経過しているとは思えない外見は、確かに人間のそれではない。異様に整った顔が、余計に恐怖を演出しているのでは、と利緒は思う。


「じゃあ、適当にかかっていっていいんですかね?」

「ええ、カンナさん。そのために私がいますので」


 ほんの少しだけ微笑んで、いつでもかかってきて良いというアリアを前に、利緒はとりあえず拳を構える。


(「鋼砕く狂鬼の纏」で突っ込んでいけば、いいのか?)


 これからの戦い方について、利緒は色々と考える。


「戦闘教義は受けていないようですね……」


 そんな利緒の格好を見て、アリアが目を瞑った。ほんの少し、利緒は聞こえていた音が小さくなったように感じた。


「ッ!」


 アリアが目を開いた瞬間、何事かわからない不快な感覚が利緒を襲い、思わず後ろへと飛んだ。構えも解けて、体勢を崩したまま、驚きの目でアリアを見る。背中、額、その他、あらゆる場所から嫌に冷たい汗が、玉のように吹き出していた。


「リオ!」


 遠くから驚きの声が上がる。


 少女たち4人には、なにが起こったか理解できない。単純にアリアが目を開いたら、利緒がものすごい勢いで後ろに逃げていったようにしか見えなかったからだ。


「さて、カンナさん。いまの行動の悪い点はわかりますか?」


 アリアは、表情を崩さないまま、利緒への授業を始めた。今までの検証結果を聞いているアリアが言う正解とは「鋼砕く狂鬼の纏」を使うこと。それはセラヴィから受けた指摘でもあったが、こと急に襲いかかってきた危機感に利緒は一瞬の我を忘れていた。


「魔法使いは基本的に打たれ弱いです。その弱点を補助するために強化魔法を唱えることは基本です。カンナさんはかなり効果の高い魔法が使えるのですから、その点では他の方達より有利であると言えます。」


 アリアは淡々と、利緒に対して授業を続ける。


 その間、利緒は相変わらず、落ち着けずにいた。視線を向けられた直後ほどでないにしても、皮膚で感じているような違和感が消えないからだ。素人の利緒ですら感じることのできる威圧感、それも利緒だけに向くという精度の高い指向性を持つ殺意。


「……さて、カンナさん、よろしいでしょうか?」

「え、あ、はい!」


 心落ち着かない利緒はアリアの言葉に、思わず適当な返しを入れてしまった。


「よろしい。」


 そんな利緒の様子を知ってかしらずか、アリアはうんと、首を縦に降る。


「それでは、カンナさんの生存率を上げる為……」


 危険を察知した瞬間に行動できるための訓練を始めましょう。そういったアリアの顔は少しだけ笑っていて、利緒は恐怖した。



「はい、そこまでです。これでちょっとした脅威であれば、大丈夫でしょう。」


 アリアの危険対策授業が始まってから15分、ようやっと合格が出た。「鋼砕く狂鬼の纏」を使え、と言われていたにもかかわらず、使えるようになるまで5分。その後は、都度セラヴィから効果を無効化させられて、敵意が向けられること10分。


 その間、アリアは一歩も動いていないにもかかわらず、利緒は相当に疲弊させられていた。

 目の前にいるにもかかわらず、斜め後方から殺意を感じた時には、「鋼砕く狂鬼の纏」の状態のまま横に飛び出し、10m近くアリアと離れてしまった。

 そこからさらに真後ろから刺されるようなイメージに襲われた時には、利緒はもはやなにをしていいのかわからず、思わずうずくまってしまった。


 その時は必死だったが、ギャラリーがいたことを思い出し、あまりの格好悪さにバツが悪かったりもした。

 セラヴィがなにやら説明をしたようで、視線が向いていることに気づいたクーネアに頑張れ、と応援された時、セラヴィに心から感謝していた。


 そんなこんなを乗り越えて、都合7回目の「鋼砕く狂鬼の纏」を持って合格となった。


「……ありがとうございました。」


 疲れきった体を動かして、どうにか、お辞儀をする。そういえば、検査のために疲れていたんだっけか、と利緒は15分前が、ものすごい昔であるかのように感じた。


「じゃあ、これで終わりですかね。」

「はい、危機対策はこれで終わりです。」

「……危機対策は?」

「これから、実際にどの程度動けるのか、アリア君と戦ってもらおう。」


 いつの間にかセラヴィは、アリアの隣にやってきて、なにやら打ち合わせを始めた。


 クーネア、ヴィズィー、アーシャ、ニナに目を向けると、頑張れ、という気持ちが伝わってきた。拳を前に突き出して、ウィンクする様は。女の子らしくとても可愛らしい。

 いつもならそう思っただろうにと、利緒は心の中で思う。


「カンナ君、準備はいいか?」


(もうやだぁ……)


 利緒は思わず、上を向いて目を手のひらで覆った。


 利緒の受難は続く。

評価指摘感想等々頂けると励みになります。 

また、誤字脱字などありましたら宜しくお願いします。


2017/09/04 レイアウトの調整

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