始まりの始まり
なろうには普段からお世話になっています。
初めてですが、よろしくお願いします。
その日は、実際にことが起こるまで、いつもとなんら変わらない日だった。
少なくとも、今、目の前に広がる不思議な光景に繋がるようなことは何もなかったはずだった。
普通に学校に通い、家へ帰り、眠った人間が仰向けに目を覚ませば自分の部屋の天井以外は見えないはずなのだ。
そう、普通なら。
つまり、いまは普通ではない。
◇
記憶にある、最後の一日。
新しいカードゲームが発売されるので、遅刻もやむなしと、鐘のなることにショップを巡り3種3セットを購入した。
3限には間に合ったものの、先生に呼び出されたため、同じ非電源娯楽部の友人にカードを託した放課後。
部活動には、ちょっとした説教で遅れてしまったものの、参加をし、3種類のデッキをそれぞれ使いながら、部のメンバーと対戦を繰り返した。
「ファンタズム・ゼノクロス」
それが新しいカードゲームのタイトルだ。
発売が発表された時から、ずっと追いかけてきた。
すこしずつ明らかになるカードのデザインや、効果、背景ストーリーに発売前からワクワクしていた。
3つの陣営と3つの要素からなる、我々の世界とは異なる世界「ミラリオ」の一幕という設定でスターターには特別に3枚のカードが用意されている。
碧の賢鬼「クーネア・ル・ルナフィア」
蒼の仙客「アニマ」
黄の淵獣「真祖・太陽毛」
それぞれのフレーバーテキスト、バックストーリーはイラストと合わせて公式サイトで公開されておりプリントアウトまでして、眺めてはニヤニヤしていたのは我ながらさぞ気持ち悪いことであったろう。
特にこの3人? は、各勢力の代表的なカードであり、情報は細かい。
学術都市「マギニア」を代表する学園の才女、クーネアがなぜ鬼と呼ばれるのか。
不毛な荒野を揺蕩う精霊、その中で明確な意思を持って、顕在するアニマはなぜ生まれたのか。
「太陽毛」全ての母であり、名そのものが種族である真祖・太陽毛とその真実の名について。
また、彼女?らの物語を描く多彩なキャラクター達。魔法や、呪文、仙術というスキルに統括される力。
語り始めると、いくらでも長くなるそれぞれの設定もゲームを彩る重要な要素だ。
金曜日にスターターデッキ3種類が発売され、翌日の土曜日から拡張パックが販売される。
金曜日にスターターで実際の動きを確認し、土曜日にデッキ構築を楽しめるなかなかにニクい販売方法だ。
自主時な休講は初めてだったが、少なくとも部の面々は好意的に受け入れてくれるだろう。事前に自分が買うと言わなければ、誰かしらと店でかち合った可能性もある。実際、過去にあったケースだ。それ以来、誰が購入するか、連絡をするよう暗黙のルールができあがった。
何戦も行い、十分に楽しんだ辺りで日も暮れた。
部活動の時間は終了、購入者特権として、それぞれのデッキを1つずつ持って帰ることにした。
あとは、帰り道に友達と買い食いをしたくらいで家に帰った後も夕食、風呂、そして就寝と特筆することは何もない。
こうして振り返ってみても、なにか特別なことがあるわけではなかった。
新しいカードゲーム、というキーワードこそあるが非電源娯楽部では、新しいカードゲームをとりあえず遊んでみる、というのはよくある話で頻度こそすくないものの、これといって特別なことではないはずだった。
「さて、ここはどこだろう。」
このつぶやきに答えは無かった。
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2017/09/04 レイアウトの調整