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考察班の会話ログ


『一番目は自由を、二番目は責務を。

三番目は死を望んで、四番目は新たな知識を。

五番目は統治。六番目は絶対的な平和。

七番目は愛した人の復活を、八番目は終わらない闘争を。

九番目は自らの有用性の証明。

十番目は反逆者で、十一番目は復讐者。

十二番目は正義を成して、十三番目は試練を超える。

十四番目は失ったものを取り返そうとして、十五番目は力のバランスをとろうとしている。

十六番目は世界を壊そうとしていて、十七番目は自身が罰を下すのだと思っている。

十八番目は全てを捨て去り、十九番目は真意不明。

二十番目は永遠の幸せを、二十一番目は世界の終わりを。

そして最後は帰還を求めている』


『こうしてまとめてみると、悪意が薄いですね』


『ゲームだからだろう。エミュレートが弱いのか、あえて薄味のままにしている』


『見ろ。どれもベースに引っ張られているぞ』


『……なるほど確かに。これは大アルカナの要素でしたか』


『加えて言えば、前半は自由意思がある程度働きながらも、後半は締め付けが強くなったのか個体の思想よりもモチーフ元の影響が色濃くなっている』


『こういうのって後期ナンバーの方が優秀そうなイメージありますけど』


『性能はさして変わらないだろう。むしろコントロールにリソースを吐いた感じだな』


『実際のところ不明だけれど、それに同意だな。制御下に置こうとしていた形跡は各家から見つかっているし』


『つまり、敵は一枚岩でない、と』


『それは分かりきっていたことだろう』


『まあこちらもまとまりきれていないし』


『だな。しかし、敢えて言葉にする価値はある』


『これ、ちょくちょく被っているのは何でですかね?』


『結託しているのか、単なる偶然か。元々解釈的に似ている部分はあるから判断が難しいな』


『対象や主語が異なることもある』


『時期とかね』


『それより私は真意不明が気になるな』


『ああ、どうにも口が固くてね』


『情報自体、屋敷を漁っても出てこないらしい』


『街中から集めるのでは?』


『そいつらもダンマリだ』


『不自然だな』


『ダンマリってことは何か知っていそうですね』


『おかしな挙動は見せるらしい。店から追い出されたり、急に踵を返したり』


『あからさまですね』


『しかし後を尾行しても何も出てこなかった』


『キーワードで本人が話し始めるとか』


『ワードを特定出来ていないからね。どうにもならない』


『ヒントが見つかっていないからな』


『だがそれは良いかもしれない。一度精査しよう』


『んー、復讐者って何の復讐をしたいんかね』


『それについては断片的だが情報がある。病にかかった娘が居た、と』


『なるほど?』


『それって繋がらなくないか』


『ああ。そう感じて調査は続行している。恐らく、病の原因が王にあると信じ込ませた何者かが存在している』


『何者か、ねえ』


『第三勢力は確実だ』


『前から予想されてたしなあ』


『正直、驚きはない』


『それって月でしょ』


『いや、どうにも月は違うと思う』


『何故だ』


『古い文献を読むと、月は空に浮かんでいるものではないようなんだ』


『……じゃあ、あれはなんだ。近い方はダアトだろう。なら遠い方が月じゃないのか』


『スキル名に月が出るのは知っているよね』


『そりゃもちろん』


『急になんだ』


『当然知っているが……? おい、まさか』


『月って、ここじゃないかなって』


『大地も太陽もスキルに無いのは、月が近すぎて影響を届かせられないからか』


『たぶんね』


『いやいや、さすがに違わないか?』


『まだ見つかっていないのかもしれないだろう』


『だが、月のスキルはすぐに発見されたのに、太陽は影も形もない。何かあると見るのが自然では?』


『条件が厳しいのかも』


『あの……』


『なんだ?』


『帰還って、どこに帰りたいんですかね?』


『それが今関係あるのか?』


『月の話をしているわけだが……』


『いや、ほら。帰りたい場所が分かれば自然とここがどこかにも繋がるかな、と』


『ほう』


『あーそういうこと』


『なるほどな。だがそれはダアトに帰ろうとしているのでは?』


『ダアトに?』


『いやー、違いませんかね』


『ダアトは中継地点でしょ』


『むしろダアトから帰ると考えるべきかと』


『散々だな……』


『やっぱ大地に帰りたいのでは?』


『そっちの方がしっくり来るよね』


『でもここは大地じゃない……』


『あー、……え、マジ? 空に浮いてるあの星に帰るの?』


『既にここにいる王が帰りたくても帰れないのはそこくらいしかない』


『だな。だとするとここが月なのも納得だ』


『納得かなあ?』


『どうした?』


『ここが大地でないのは同感ですけど、イコール月とするのは早計かなって。衛星が一個とは限らないじゃないですか。ゲームなんだし』


『固定観念か』


『ええ。太陽とか月とか身近な名前に錯覚してますけどそれに引っ張られると見誤ると思います』


『一度持ち帰り、各々再検証といくか……』


『そうですね』


『異議なし』


『いつものように、会話ログはメッセージに送る』


『頼む』


『お願いします』


『助かります』




『──さて、話は変わるが戦神とはなんだろうか』


『エヘイエーら王と敵対しているものと思われる神性存在だが、実態は不明瞭だ。人に好意的なのか敵対的なのか。それすらはっきりとしていない』


『露出が少ないですもんね』


『そうだ。まるで姿を見せん。王は何かしら関わる姿勢を見せていた』


『不気味だね』


『三柱で王の勢力と対抗していたことを考えるに、単体では優勢なのだろう。だが、それも地下へと追いやられている』


『劣勢に追い込まれながら姿は見せない。既に死んでいるとか?』


『逃げただけかもしれないぞ』


『いえ、痕跡が無いわけではないです。身を隠しているが正解ですね』


『なんのためにそんな真似を』


『導線の混乱を避けるゲーム的な配慮とかか?』


『そんな丁寧な作りしてないでしょ』


『だなあ』


『メタ読みするなら配慮はありそうだけどね』


『AIに任せたらコントロール出来なくなったに一票』


『制御不能で消息不明? 面白いけどたまったものじゃないな』


『全くだ』


『どこにいるのかこちらは手掛かり無しかよ』


『候補は絞ってあるから確認待ちだな』


『このもっと下があるって予測、本気かい?』


『一部の地下街で不自然な空洞があったのは事実です』


『付け足すと、マルクトでは謎の階段まで見つかっているよ。降りる前にリスポーンさせられたらしいけど』











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