表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
46/63

#045「オオキニ」

@川添家

酒呑「据え膳食わぬとは、四人で牽制し合うてたんやろうか? 漁夫の利で、ワイがいただいてまおうか。油揚げをさらう鳶という訳やな。若大将や弥七は、ともかく、修吉あたりが手ぇ出してもオカシない別嬪(べっぴん)さんやけど」

酒呑、真理に詰め寄る。

真理「マッ、待ってください。理解が追いつきません」

酒呑「スンスン。いや、不助の臭いがするから、やめといたろう。無用な恨みを買うて成敗されるんは、金輪際コリゴリやからな。――さて。無駄話は、小脇に置いとくとしよう」

酒呑、ベッドのそばにある荷物を左脇に抱え、窓を開ける。

酒呑「ほな、行くで」

真理「エッ! 行くって、どこへ?」

酒呑「ヨドヤに決まっとるやないか。他に必要なモンはないか?」

真理、ベッドの上のパジャマと四冊の本を持つ。

真理「それなら、これも。――ワッ」

酒呑、パジャマと本を荷物の中へ押し込み、真理を右脇に抱える。

酒呑「ほんなら、ちょっとした空の旅へ招待しようやないか。せいぜい、ウェンディーになった気分で楽しむことやな」

真理「ピーターパンは、虎の刺繍の入ったスカジャンなんか着ません」

酒呑「頭が固いんやな。ターキースタイルって奴や。暴れて落ちたら、怪我どころでは済まへんさかい、大人しゅうしときや。――エイヤッ」

酒呑、窓枠に立ち、そのまま虚空へ踏み切る。

真理「それを言うなら、タッキーです。――キャー」

  *

@スタッフルーム

不動「何だ、その蓋付きの缶は?」

大日「サイタリーボックスですよ。色付きの小袋に縛って、こっそり捨ててたのを思い出しまして。――ピンクとブルー、どちらが良いと思いますか?」

不動「この次、いつ会えるか解らないというのに」

大日「備えあれば憂い無しですよ、不動くん。顧客層は年配層に偏ってるせいで、若い女性への配慮に欠けるところがあることを、川添さんは教えてくれましたね」

不動「従業員は野郎だけだし、爺さんか婆さんか判らないお客様ばっかりだからな」

大日「老境に入ると、性別を超越するものなのでしょうか? フムフム。面白い着眼点ですから、考えてみる価値がありそうです。差し支えなければ」

不動「勝手に使え。煮るなり焼くなり、好きにしろ」

  *

修羅「新しい色鉛筆で何を描いてるのかな、ミーくん? あっ、ゴメン。やっぱり、見ないでおくよ」

弥勒「見て良いですよ。どうぞ」

修羅「それじゃあ、遠慮なく拝見させてもらおうっと。――オッ! 女性従業員用の制服だな、コレは?」

弥勒「エヘヘ。実はね」

弥勒、スケッチブックと鉛筆を脇に置き、風呂敷包みを開く。

修羅「ワァ! もう試しに作ってたのか」

弥勒「だって、すぐに必要になるでしょう?」

  *

@三途の川、左岸

酒呑「本来やったら、鳥居を潜らなアカンのやけど、緊急事態やさかい、一時的に簡易の抜け穴を開けたんや。ただ、それをするとゴッツイ体力を消耗するんでな。早く閉じる必要から、あんなに急がせたんや。手荒な真似をして済まんかったわ。堪忍してな」

真理「いいえ。そういう事情あったとは、ぜんぜん知りませんでしたから」

酒呑「他に何ぞエエやりかたがあったんかもしれへんけど、思い付かへんかったさかいな。――ほんじゃあ、ワイは退散さしてもらおう。不助にだけは、自分が帰ってくることを言うてへんらしいから、驚かせて、喜ばしたってな。ほな、さいなら」

真理「ありがとうございました」

――再び、常世(ここ)へやってくることが出来たんだもの。今度こそ、後悔のないようにしなくっちゃ。降りしきる雨になんか、負けていられないわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ