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エスカドス戦記  作者: ひび割れた埴輪
盗賊騎士
10/32

9 盗賊体験

 今のところクメイト達は積極的に俺を(ツトメ)に参加させようとしない。

 警備騎士団の見回りがかなり厳しく行われている上、今や裕福な家はそれぞれで用心棒を雇い夜通しの警戒を行わせているのがほとんどでありベテランでも迂闊には動けないからだ。傭兵や、かのアルデリック氏のように時間のある騎士を自分で探し雇っているのだという。

 このところクメイトがかなり忙しくしており中々時間を作れなったというのもある。


 だがそれでも、幸か不幸か三か月の内に何度かは実戦を経験する機会に恵まれてしまった。両方とも盗賊宿で知り合った連中がホストしたお(ツトメ)に参加した形だ。



 俺の盗賊デビューとなる初仕事は、トーニーという男が持ち掛けてきた(ツトメ)だった。


 この男もベテランかつ凄腕であるらしく、かなり俺の初仕事に慎重を期したい姿勢をとっていたクメイトが、珍しく強く参加を勧めてきた。初めは実際の仕事の空気を感じるだけで十分だし、そのためにはこの男の仕事はもってこいだとの話であった。


 この(ツトメ)に関しては俺はあらゆる意味で見ていただけだった。


 まず騎士としての密偵業務、この件への対応をどうするかという点は、これはもうどうしようもなかった。

 何せ標的も方法も教えてもらえたのが実際に(ツトメ)を行う直前で、密告の仕様がなかったのだ。

 流石に俺からの情報流出を警戒していたのだろう。

 最も騎士団への密告などへの警戒というよりは、俺がうっかり同業に口を滑らすかもといった類の警戒だと思うのだが。

 あるいは情報を出し惜しんで現場で先輩として恰好をつけたかったのかもしれない。


 トーニー曰く、


「小さい仕事を助太刀してもらって申し訳ねぇが、それでも金貨200は堅い。うまけりゃ金貨500あるかもしれねぇ。準備は全部任せてもらって大丈夫だ」


 とのこと。大した自信である。


 とりあえず騎士団へはこの日にこういう話がありますとだけ伝えたが、アルスから返ってきた返事は、

情報が少なく特殊な対処がしようもないし被害も限定されそうなので俺の潜入に必要な過程の一つとしてスルーする、とのお言葉だった。

 伝えにきた騎士団の団員は納得がいっていない顔をしていたが、アルスはちゃんとまだ深くまで探りをいれられない俺の立場と、差し当たっての信頼を得ることを考えての判断をしてくれたらしい。

 元々初期段階はこういうケースも多くなる予定だったしな。


 現場では、ただトーニーの仕事が見事という他なかった。


 標的は、とある商人の住宅。

 その商人についてはあまり説明がなかったが、貴族に媚びを売りながらこズルくやっている、らしい。


 見張りは一人しかいないが、敷地の広さがさほどでもなく裏口もないためどう潜入するのかと思ったら、なんと裏の雑木林から家の中にあるという土間の隅までトンネルが掘ってあると言い出した。


 このトーニーは「土竜」の異名をとり唯一適正を持つ土魔術を最大限に活用することで、事前に直前までつなげておいたトンネルの出口を音もなく開通させ潜入するという、仲間内でも唯一無二の手法をとる男として有名なのだそうだ。ソロでも活動できる珍しい本格派でもある。

 俺には真似できん。土魔術の適正もないしな。


 その晩行動を共にしたのはトーニー、俺それにクメイト。

 クメイトが林側の出口で待機しての見張り。俺とトーニーは内部に侵入し、メインであるトーニーが金品を回収している間俺は周囲を警戒、万一起きて近づくような人間がいた場合には仕方ないので声を上げる前に気絶させる係である。

 勿論見つからない方がいいに決まっているが気絶させるとか猿轡をかませるくらいなら本格派でもアリらしい。俺の親父の方は結構ゴリゴリやってたそうだ。

 結構、適当だな。


 果たして、潜入は完璧にうまくいった。ていうかいき過ぎだ。

 見張りも家の鍵も全スルー。家の住人のバイオリズムも把握しており、偶々起きるような気配もなし。

 何か大きな音を立てるようなヘマもなく、あっけなく俺の初仕事はみているだけで終了した。

 クメイトが自信をもって推薦するわけだ。トーニー、恐ろしい子……!


 結局家にあった金は金貨が300枚。そのうちトーニーは250枚を盗み取り、130枚を自分でとり残りの120枚を半分ずつ俺とクメイトによこしてきた。

 今回に限って言えば、俺はもちろんクメイトも何もしていないのにこんなに貰っていいのかと思ったが、そんなものらしい。

 この辺が彼らの絆というか、処世術なのだろう。

 トーニーは、


「まあ予想ピッタシってぇところだな。穴掘るのは楽じゃねぇからちょいと割にはあってねぇが、態々出口はふさいできたからこの仕込みはまだまだ使える。あいつら馬鹿だからどうせ気づかず同じとこにまた貯めるに違いねぇ」


 と言っていた。

 しかし、そう言っているところ可哀想だがこの仕掛けは後で騎士団に報告しておこう。

 もしそれでまた同じようにやられるようであればもう知らん。



 この仕事を切っ掛けに、しばらくの間はちょくちょく似たような確実性の高い(ツトメ)に混ぜてもらいつつ、盗賊としての実績と信頼を稼いでいた。

 被害額が大きくなりそうなときには露骨に警備を増やして中止させたり、金を逃しておいてもらったりしたこともあったが、基本的には見逃してもらえるよう騎士団にはお願いしていた。

 騎士団のお堅い方には微妙に睨まれている感はあったが、その甲斐あってか、この間に一応俺の顔と名前はそれなりに仲間内で知られるようになったと思う。


 そしてごく最近、更に本格派の盗賊達の間に俺の名が知れ渡るような一件が起きた。

 いや、起きてしまった。


 それは、アルマーというかつてじいさんの元でも何度か働いたことがあるという盗賊のもってきた(ツトメ)へ参加したときのことだった。


 その(ツトメ)はこれまで参加してきた(ツトメ)とは色々な点が違っていた。


 第一にかなりシンプルというか、力押しの仕事である。

 標的である貴族出身の医者はかなり広い邸宅に多くの騎士を雇い警護させているが、アルマーはその男の家にエロ本を売りに通い詰めるうち屋敷の一角、金品を貯蔵している倉庫の付近が、ある時刻に割と長い時間無警戒となることを発見したのだという。

 ただ、その場所に気付かれず侵入するためにはかなり高い塀を音もなく超える必要があり、また倉庫の鍵が一筋縄ではいかないタイプであるためレベルの高い瞬動術と鍵開けの技術両方をもった人間が必要となる。


 そこで白羽の矢が立ったのが俺だったというわけだ。

 俺の瞬動はスピードこそ一流の戦士やその道で生きる盗賊には及ばないものの、じいさんに重点的に鍛えられた静かさと小回りは業界でもトップクラスというのがこれまでの仕事をこなすうちに知られている。

 それに加え、ピッキングの腕もクメイトほどまではいかないがそれなりのものという自負がある。

 つまり第二の違いとして、これまでのようなおまけではなく、ちゃんと戦力として期待されながらの参加を要請されたことになる。


 ……盗賊として認められるのは複雑だが、ちょっとだけ嬉しかったりして。


 だが、クメイトは俺がこの仕事に参加するのをかなり心配していた。

 計画がかなり雑なのに加え、彼自身がメンバーとして参加できないためだ。クメイトの瞬動は決して低レベルではないが、その壁を越えるのは無理だという理由からである。

 このクメイトの不参加というのが、第三の違いともいえる。


 そんなこんなで何度もクメイトに考え直すよう言われたが、俺はこの仕事を引き受けた。


 別に俺ならやれると慢心したわけでも、思ったように人が集まらず困っているアルマーが不憫だったわけでもない。

 むしろ俺はこの(ツトメ)は確実に失敗する、失敗させると思っていたためである。


 アルマーはじいさんの部下だったことがあるとはいえそれほど親しくはないし、こんな紙一重な計画の実行を焦るようではどの道長くはない。そんなに金に困っているようだといつ邪道を行ってもおかしくなさそうだし、クメイトが一緒でないのなら突き出すのに躊躇はなかった。

 金額も推定金貨2000くらいとちょっと大事になる額だったしな。


 場所と時間もわかっていることだし事前にリムルを通して団に報告し、包囲網を敷いておいてもらうことにした。これで少しはお偉方のご機嫌もとれようと安心したことを覚えている。

 

 当日の様子はこんな感じだった。


 時は深夜2時過ぎ、例によって盗賊達のゴールデンタイム。

 決めてあった集合場所で合流し足早に侵入地点へと向かう。

 現場は王都西側端からやや北に入ったところにある、王都を囲む壁に接した屋敷である。

 聞いていた通り高い壁が立っている。街外れだから立てられる建築だな、日照権的に。


 地点には監視しているような気配はない。騎士団は壁の内側まで引き込んでから捕えるつもりのようだ。


 では行くか。

 その場にいるメンバーと互いに目くばせをして侵入の意志を示す。

 メンバーは全部で4人、アルマーと俺の他条件を満たす助っ人が2名という構成だ。2000枚もの金貨を盗むのには4人だとかなり少ないが、メンバーが集まらなかったのだろう。この壁を蹴上るとなると結構な武闘派じゃないと厳しいが、一応全員本格派という話だった。真偽は定かではない。


 別にやる気があるわけではないが、普通に上れそうなのでさっさと戦陣を切って塀を上っていく。

 まあこの手の壁のぼりはある程度武術で瞬動のコツを掴んでいるものなら余裕だ。あっさり先頭のまま登り切って頂上で一旦他のメンバーを待つ形になった。

 この状況だと身を伏せていても丸見えだが、かなりの高さであるため普通ならこんな時間に見上げている奴はまずいないだろう。知っている騎士団も中に入るまではスルーするはずだ。

 少し待っていると助っ人の二人も何とかという感じだが上がってくる。


 よしよし、じゃあさっさと捕まりに行くか、などと思っていると、後ろから、


「ヒッ……!」


 とかいう小さな悲鳴が聞こえた。

 目を向けると正に今アルマーが頂上に手を掛けられずに落ちるところだった。

 心の中でお前が登れないのかよ! と突っ込む。

 悲鳴が極小さいものだったのは盗賊の意地か。


 不味い、このままでは引き込む前に(ツトメ)が中断してしまう、と瞬時に考えたわけではないが、


「チッ……!」


 俺は反射的に舌打ちしながら咄嗟に身を動かして上ってきた壁を逆走し、落ちているアルマーに追いつきその襟首を掴む。その瞬間壁を静かながらに強く蹴ることで反転しアルマーごと再び頂上まで上った。

 うーん、我ながら素晴らしい動き。特に完全に音を殺しつつの反転は完璧だった。100点、100点です!


「(す、すまねえな若様……)」

「(シッ)」


 バツの悪そうな顔で礼をいうアルマーを面倒なので一言で黙らせる。

 お(ツトメ)中に余計なこと喋るとか、お前それでもじいさんの部下だった盗賊なの? あと若様はやめろ。


 さあさっさと本番に……じゃなかった捕まりに行くぞ。


 そんな俺の様子にに気を引き締めたのか、アルマーは頷くと今度は率先して駆け下りていく。

 降りる分には問題ないな。音の殺し方はまあ流石のレベルだ。

 しかし上から見たときから思ったが騎士団の姿が全く見えんな。よっぽどの潜伏の達人が見張っていて、蔵に入って確実に逃げられなくした後捕える算段だろうか?


 じゃあさっさと鍵を開けないとな、と思うと既に助っ人の一人がカチャカチャと錠前を弄っていた。

 なら意味ないけど周囲を見ていればよさそうかな、と思ったがなかなか開かないらしい。

 何度か選手交代したが、それでも未だ開いていない。

 焦ってきているようで動きが悪い。

 まだるっこしいな、ちょっと代われ。身振りでそう示し錠をとる。


 どれどれ……あー、これは聞いていたより難しいな。


 ちょっと言われて用意していたようなピッキングキットでは開けられそうにない。

 本来なら一旦引いて準備しなおすのがよさそうだが俺の事情でそうはいかない。

 しかし、周りは焦りまくっているがまだ捕えに来るような気配もない。

 もうさっさと捕まえに来てくれよ……こいつらの瞬動じゃ逃げられんのに……。面倒だが開けて入るしかないのか……。


 仕方ないから裏ワザを使おう。そう決めた俺は小声で魔術の詠唱を始める。

 えーと水魔術、サイズ小、強度大、性質を変化させて氷へ。形状を任意指定にしてあそことあそこが出っ張っていて他は穴に沿う形にして……発動!


「(セルフィジオアクラーム!)」


 最後に傍から聞くと意味不明な単語を組み合わせた言霊を発声すると同時に、水魔術で作り出された氷の鍵が俺の手元に出現する。

 じいさんが生きていた頃に特訓した俺の鍵開けにおけるとっておきである。こういうのは土魔術のほうが向いているのだろうが、これでも十分開けられるはずだ。


 呆気にとられているメンバーをよそに、俺はさっさと鍵と扉を開け中に入る。

 慌てて付いてきた連中が全員入ったのを確認したら戸ほとんどを閉めてしまう。これで袋の鼠だ。

 見張りが立つべきだし、どうせ開けるのだから戸は閉めちゃだめだと思うが、皆想定外が多かったせいで頭が回っていないのかそれを咎められもしない。


 駄目だこいつら……早く何とかしないと……。よく今までこの稼業で生きてこれたな。


 そんな俺の内心を知りもせず、皆して嬉しそうに金貨を探し集めている。

 まあ最後の娑婆くらい楽しんだらいいんじゃないかな……。

 しかし聞いていたより金貨が少なそうだな、500枚くらいしかないんじゃないか。ていうかここまで引き込むつもりなら一応避難させておけよ。


 皆もその金貨の少なさを訝しんでいるようだが、そろそろタイムリミットだ。もう出ないと無警戒時間が終わる前に脱出しきれない。

 それは皆もわきまえているようで未練そうながらも探索を切り上げる。


 だが悪いなアルマー、この扉は一人(俺)専用なんだ。扉を開ければそこにはもう大勢の騎士たちが……、


 って、あ、あれぇ? 誰もいないよ? 何これ、もしかして俺嫌われてるの?


 戸惑う俺を他のメンバーが急かす。こうなるともう普通に脱出するしかない。

 またも自力で登りきれないアルマーを、今度は後ろから押し上げて頂上を越えさせる。

 よく考えたらここで落とせばよかったのかな……。

 でもここから落ちたら痛いどころじゃなくて可哀想だしな……。


 という感じで俺の二件目の(ツトメ)も何故か成功してしまった。

 おかしい、こんなハズはない。どうしてこうなった……。


 その日の夜、盗みに参加したメンバーにクメイト、ボウセン、それに抜け出してきたリッシュを加えた祝勝会で、アルマー達はしきりに儲けが少なかったことを、


「あの妊婦好きの変態医者野郎が! 守銭奴みたいに稼いでやがるくせに、浪費しやがって!」


 とか言って愚痴っていたが、それと同時に、


「いやしかし、若様……ソラ様の手腕には心底たまげやした!

 垂直な塀をまるで平地のように自由自在に走る身体のキレ、

 今正にお(ツトメ)を行う現場だっていうのに眉ひとつ動かさねぇ落ち着き、冷静さ。

 おまけにとんでもねぇ器用さで魔術を使いこなして、他の誰にもあけられねぇ蔵の鍵まで一瞬にしてあけちまうとは……。

 いや、俺は本当にお頭が帰ってきて一緒にお(ツトメ)やってるようにさえ感じたもんだよ。

 今日のお(ツトメ)はソラ様がいなけりゃあとてもじゃないが成功はない。

 それもこの若さで、あんな……。

 このアルマー、心から感服すると共に自分の至らなさを知りやした。

 いやー、クメイトの眼は確かだった。この人、いやこの方はすぐに盗賊達を従えるだろう方に違いねぇ!」


 と大興奮で絶賛するのでたまらない。


 おまけに本来60枚くらいなはずの分け前を150枚よこしてきた。

 確かに俺がいなかったら壁から落ちた時点で終わってただろうけどさぁ……。


 その言葉と態度にクメイトとボウセンは勿論リッシュでさえ感心したように俺を称える。

 このままだと本当にお頭にされてしまいそうな勢いだ。俺の株がバブルすぎてヤバい。


 それもこれもアルスが密告を無視するのがいけない。

 頭にきた俺は態々リムルを通してアポを取り人目を忍んでアルスに直談判に行った。

 おい、アルス、てめぇこの野郎どういうことだ!


「勿論君の報告を受けて僕達も例の医者に忠告をして警備を申し出たんだけどね。

 彼が言うにはそんな盗賊達にウチ自慢の警備網は破れないから第五騎士団の出る幕はない、と詳細を教える前に突っぱねられたんだ。

 よっぽど自信があったか、僕達に見られたくないものでもあったんだろうね。

 え? 倉庫に妊婦系の春本が山ほどおいてあった? じゃあきっとそれが原因だろうね。」


 そんなくだらねぇ事情かよ……。

 とりあえず俺が神経をすり減らした成果を無にした、その変態医者の噂は都中に拡散しておくとして。

 アルマー達は悪いが今からでも密告があったとでも理由をつけて逮捕してしまえばいいか。

 現行犯でもなく物的証拠はないが、一応騎士である俺が見ていたわけだし。


「それが大口叩いて失敗したのを知られたくないのか、被害届が提出されていないんだよね。

 僕と顔を合わせると逃げてしまうし。だからその事件は起きていないことになっている。

 ちなみに蔵に金貨はどのくらいあったって? 500枚?

 ふうん、それだと恐らく多少別のところに移していたんじゃないかな。

 まあ、もらっておいてしまえばいいんじゃない?」


 おいおいマジかよ。

 大体なんだその微妙にそれなりの金を残しておくというプライドは……。

 全部出しておいて代わりに蔵に傭兵でも突っ込んでおけばいいじゃねーか。

 なんかアルスも爽やかな顔の下で結構怒っているのか対応が投げやりかつ辛辣だ。

 俺もどうでもよくなってきた。


 結局特にアルマー達を追い詰めるでもなく事件はなかったことになった。

 どんだけついてるんだアイツ……。

 俺が得た分け前はちょろまかせば普通に懐にいれられそうではあったが、バレたら怖いので返上した。

 とりあえずアルスが管理し、もしまたやむを得ず見逃すような場合に被害を補填する足しにするらしい。

 彼は融通を効かせてくれるので本当に助かる。

 俺的上司にしたい男No.1だ。他の上司をもったことはないけどね!



 こうして皮肉にも失敗させるはずだった案件で盗賊としての名を高めることになった俺だが、そのおかげで早くも盗賊界隈ではそれと知られる存在となった。

 加えて実際には懐に一銭たりとも入っていないとはいえ、俺はこの三か月で金貨300枚くらいは得ているということになっている。

 これならしばらくは仕事を選んでいるふりをして情報だけを集め密告を行っていても不自然ではないだろう。

 結果的にはこれからの仕事がやり易くなったのでよかったかなー、などと思っていた矢先、その事件は起こった。


 この三か月ずっと安定しなかったクメイトの妻の容体が、予断を許さないものへと変わったのである。

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