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泣く子が強すぎて、僕が添え物みたいになった

 ラガムさんの元で訓練をこなして、ミーナ達とペタンを遊ばせたり。

そんな日々が続いて四ヶ月が経って、僕はラガムさんにとりあえずの認可を貰った。

僕が凄い、というわけではないけど、ペタンが凄かった。

何か僕の判断が要る時は離れていても直観的な映像を心に送ってきて、僕の心を反応を感じて動くんだ。


 だから、僕より先に訓練を始めていてたペルンお兄さんとボートお兄さんより先に一人前の守護獣使役者だと認めてもらったんだ。

だから僕は家族と、村長に僕のやりたい事を話すことにした。

先に皆に時間を取って貰って、村長の家に集まってもらって卓に着かせてもらった。

ミーナはなんなのか良くわかっていないみたいで、僕の事を小首を傾げてみている。

お父さんとお母さんは真面目な顔で村長さんと一緒に僕の対面に座った。

ミーナはお母さんの膝の上。


「して、ユートよ。話とはなんだ」

「なんだか真剣そうだけどどうしたの。そんなに重要な話なの?」

「んー?おにーちゃんなにー?」


 三人が僕が何を話そうとしてるのか聞いてくるけど、お父さんは何も言わない。

……お父さん、なんで何も言ってくれないんだろう。

僕はお父さんの態度に少し不安になって口篭る。


 でも、良く見るとお父さんは口を開かないだけで目元は優しく、話なさいという態度だった。

だから僕は覚悟を決めて、自分の希望を口にした。


「僕、守護魔道師団に入りたいんだ」

「お前が、か」

「えっと、お母さんそんなこと言われても困るわよ。それに貴方まだ10歳なのよ」

「うぅ?よくわかんない」

「わしはギュラフォックスに守護魔道師団の仕事が務まるとは思えんな」

「村長さん、そういう言い方はなんでしょう。でも、それとは別に私はユートに村に居て欲しいわ」

「おにーちゃんどこかいくの?ペタンは?」

「皆が許してくれれば僕はペタンと遠くに行くよ」

「だめ!ペタン連れてっちゃやだ!おにーちゃんがどこかいっちゃうのもいや!」


 口々にダメだしされる僕の希望。

村長さんのペタンに対する偏見に満ちた意見はともかく、ミーナの言葉は堪える。

僕だってミーナが可愛くないわけじゃないんだ。

ちっちゃくて可愛いミーナ。

きっと大きくなったらもっと可愛くなるんだろうなって思うと、僕だって離れたくない。

ペタンの事は特別にしても、大事な妹だもの。


 でも、妹可愛さだけで諦めるようなら僕はこんな事皆に話さない。

可愛いミーナを置いていっても、僕は盲獣と向き合ってみたい。

だからまずは一番激しく反応したミーナを落ち着かせようと口を開こうとした矢先だった。

お父さんが先に言葉を発した。


「ユート、お前どうやって王都まで行くんだ」

「へ?」

「いや、親として情けない話だが……うちにはお前を王都にやるだけの旅費をだしてやる余裕がないんだ」

「あ……そっか。この村から王都に行くのって、お金いるんだねお父さん」

「ちなみに王都に着いてからの暮らしを立てる金も用立ててやれない。すまん」


 お父さんは僕に頭を下げた。

他の皆が反対してる状態なのにそんな事をするお父さんの姿で僕には解った。

お父さんは味方なんだ。

ただ、家にお金が無いから応援できない。


 ぐっと胸の中から湧き上がるものを押し殺す。

なんだか凄く泣きたい気分になった。

悲しいからじゃないけど、なんかわからないけど、お父さんの気持ちは僕の胸に突きささった。

だからこそ、全部飲み込んでお父さんに答えた。


「王都まで遠いって行っても、ペタンに乗っていけばそんなに時間は掛からないと思うんだ。ペタンはね、僕が上に乗っても揺れない走り方を覚えたんだよ。それもかなり速いんだ。だから、ご飯もそんなにいらない……と思う」

「お弁当を用意すれば足りるかしら?うーん、さすがに一回分じゃ無理よねぇ。でも日持ちする食べ物を用意するのも簡単じゃないし」

「おにーちゃん!だめ!」

「ふん。そもそもギュラフォックスを王都になど送れるか」


 お母さんとミーナはともかく、村長さんの言い方はさすがにカチンと来た。


「村長さん。ペタンはそんなものじゃないって何度もいってるでしょ」

「解らんぞ。いつお前を惑わし本性を現すか」

「ペタンはそんなんじゃない!」

「ではあの額の宝石はなんだ!」

「おにーちゃんをいじめないで!」


 僕と村長さんが喧嘩になりそうになったその時、ミーナが声を上げた。


「そんちょうさん、おにいちゃんをいじめないで!ペタンだってぎゅりゃ……なんかきつね!それじゃないもん!そんちょうさん、いじわるだ!」

「む、違うぞ。俺は伝承を尊重して……」

「ペタンはいつもあそんでくれるいいこだよ。わたしたちでペタンがきらいなこ、いないもん。いいこだもん」

「いや、だからな」

「いいこだ……い゛い゛ごだもぉん!」


 もう半分以上泣いているミーナの声に村長は困り顔をして、お母さんに目配せしている。


「こらこら、ミーナ。そんな泣くんじゃないの。きっと村長さんも解ってくれるから」

「ほんと?」

「お母さんがお願いしてみるから、ね」

「うん……」

「あの村長、ミーナの言うとおりです。確かに伝承は大事ですけど、それを根拠に何もしていない子供を偏った目で見るのは子供の性根を捻じ曲げます」

「む、むぅ……だが王都にユートをやる事はアナも反対だろう」

「それは、そうですけれど。それとこれとは別の話です」

「解った、ユートの守護獣ペタンの扱いは一度白紙に返して、自らの眼で判断する事にしよう」

「お願いしますね。ペタンが良くユートのいう事を聞く子じゃなかったら、村長の評価がそのまま子供達の中でも広まって仲間はずれにされていたかもしれないんですから」

「ん……むぅ、それはすまん。はぁ、子供と新たな守護獣は村の宝だというのを少し忘れていたようだ」

「村長、あまり頭は下げないでくれ。解ってもらえればいいから、な。村長にも立場があるだろう」

「すまないなアダン。さて、それではユートの王都行きだが……」

「おうとはめっ!」

「ミーナ、貴女がわがままをいうとお兄ちゃん困っちゃうわよ」

「う、うー……」

「こほん。領主様に援助をしていただけないかお願いしてみようと思う。ただ、そのペタンが強力な守護獣であるかが重要になるが」


 気がつけばミーナを中心に話の流れが一気に変わっていた。

泣いた女の子って凄い。

僕が泣いてもこうはいかなかったよね、きっと。


 そんな感じでなんだか脱力していると、村長さんが僕を改めて見すえて言った。


「ユート。お前の守護獣がどれほどの力を秘めているか、試させて貰うぞ」


 話はなんだか曲がり道を繰り返したけど、まだまだ続きそうだった。

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