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エピローグ:祭りから帰宅した光輝、戻ってきた日常

 閉会式まで参加したチームは岐阜駅まで向かうバスで移動し、そのまま在来線で名古屋駅へ向かい、新幹線に乗り換えるところが多いようだ。距離的にもう一泊するというチームもあった。

 ちなみに自腹かつプライベートで来た結姫(ゆき)は閉会式が終わると、


「じゃあ、私は先に帰ってるから。みんなも胸を張って、帰ろうよ」


 そう言い残して、みんなに見送られて、一足先に帰阪の途へと着いた。結姫の方が1時間ぐらい早く帰れるはずなのだが、光輝(みつき)はどこかの乗り換えで迷って、自分の方が先に帰るんじゃ……と思っていた。しかし、今回はそれは杞憂に終わり、無事に帰阪できたようである。

 そして、新大阪駅に到着し、後藤先生から最後の挨拶があり、現地解散となった。短い間だったが、濃い時間を過ごした大阪代表チームもこれで本当に解散となる。名残惜しい部分はありながらも、光輝はそわそわとした様子。


「じゃあな、光輝。お前、花山さんが待ってるんやろ?」


「あ、あぁ……」


 仙崎にそう言われて、光輝が力なく返事をする。


「結姫さん、この2日間、欲求不満なんじゃな~い?」


「変な言い方すんなよ」


 山本がからかい気味に言うと、光輝は口を尖らせて返事をした。

 そして、光輝は気を取り直すと、周りを見渡し、口を開く。


「みんな、ありがとうな! 楽しかった、じゃあな!」


 そう言った今大会の躍進の立役者である光輝はあっさりと帰路へと着き、それをメンバー全員が見送った。

 新大阪から1時間かかるかかからないかぐらいして、慣れ親しんだ自分の住んでる町へと帰ってきた。まさか、修学旅行のようなイベントが二度もできるなんて、高校入学当初は思わなかった。光輝はそんな不思議な気分になりつつも、充実した表情で最寄駅から自宅へのルートを歩いていた。

 ただ、光輝はそんな日でもまっすぐ自宅には帰らなかった。

 名古屋駅にいた時はまだ薄暮の時間帯だったが、すっかり真っ暗な時間帯となった。そんな中で光輝が足を止めたのは古い町家のような建物である花山邸の離れ。


「ちゃんと、無事に帰れたんだな」


 中の明かりが点いていることを確認すると、玄関の扉を開け、いつもの手順で板の間へと上がり、大広間へとつながる襖を静かに開ける。


「あら。いらっしゃい、みーくん」


 そう言って、出迎えてくれたのはスッとした立ち姿と凛とした佇まい、艶やかな黒髪を後ろで一本に結んで垂らしたポニーテールがあどけなさも残す女性。

 服装はTシャツとジャージという和室に不釣り合いなこれからスポーツでもしますといった出で立ち…………こんな日でもいつもと変わらず、結姫は準備万端で出迎えてくれる。

 光輝にとってはそれがなによりうれしかったし、落ち着くような空間だった。


「今夜は遅いし、1試合だけかな」


「まったく、長旅で疲れた俺を労うサービス精神はねーのかよ」


「私も長旅から帰ってきて疲れてるんです~。つべこべ言わずに取るよ~」


「へいへい……」


 そう言って、礼をして、札を並べていく結姫と光輝。もう、二人には日常が戻っていた。大阪代表の躍進の立役者と影のMVPともいえる選手による熱戦が繰り広げられたのだった……!


 そして、試合が終わり、光輝は顔を両手で覆っていた。


「なんで、ゆき姉(ねえ)に勝てねーかなー…………」


 結果は4枚差で結姫の勝利となった。1日取れなかっただけで久しぶりに感じた光輝との試合に勝利した結姫は諸手を挙げて喜び、ご満悦の様子だ。


「まー、こんな日もあるよー」


「いや、こんな日、最近、多くない?」


 いじけるように体育座りをして頭を抱えて、本気で悩む光輝。そんな彼を結姫は慈愛に満ちた表情で眺める。


「みーくん」


 そう呼ばれて、光輝は顔を上げると、結姫は満面の笑みを浮かべる。


「おかえりなさい」


 柔和で、優しく、あたたかな口調で言う。光輝は照れくさそうにするが、一呼吸を置いてから、


「うん、ただいま」


 そう返すと、結姫の笑顔が広がった。

 大舞台や外の世界で躍動する光輝の姿を見れる結姫も充実の日々を送れている。しかし、この花山邸の離れの大広間で二人で取る時間が尊く、大切なことにも改めて気づかされた。

全国高等学校総合文化祭、総文祭編を読んでいただきありがとうございました。ちょうど、話をあげている最中に近江神宮で高校選手権が行われて、解説の元名人の人が総文祭の話を出してましたね。

私自身も非常に思い入れのある大会だったので、今回は試合以外の描写も入れすぎて、長々とした話になってしまったのは反省です。ただ、思い入れがある分だけ、伝えたいことも多いわけで……

たとえば、昨今は高校の部活動にはいろいろな意見や問題が見られます。私が見ている高校野球も世間を賑わす重大なトラブルが明るみに出ています。ただ、部活動には闇の問題だけじゃなく、光の部分もあって、その光によって救われた高校生もいるところも見ています。たとえば、主人公の光輝がこれまでの高校生活を『普通、悪くない』、でも、『青春とは無縁』と表現されています。その普通で青春とは無縁の高校生活の中に彩りを添えてくれる存在が部活動のあるべき姿ではないかと思うのです。この成功体験は全国大会に出場するといったわかりやすい成果だけではなく、地方大会で1勝できた、前よりも成長を実感できた、挫折や苦労を乗り越えた……どんなことでもいいのです。そして、どんな小さながんばりでも大人は見逃さずに称えてあげてほしいのです。意外と高校生と言うのはそう言った経験や言葉で救われることがありますし、それがきっかけで将来の夢につながることもあります。今回はそういう思いを作中に込めています。

私自身、この総文祭がきっかけで知らない先生や周りの人たちからたくさんの祝福の言葉をいただきました。当時は競技かるたはとてもマイナーな競技で47都道府県もそろっていない時代でしたが、それでも自分なりに達成感があり、満足度の高い高校生活を送れたと思っています。当時の経験をモデルにしてるので、その時に関わってくださった皆様方には改めて感謝を申し上げたいと思っています。

そして、もちろん、この後書きまで読んでいただいた読者の皆様にも感謝を申し上げます。

次章はクイーン位西日本予選の話になります。需要あるかわかりませんが、ヒロインである結姫をメインに掘り下げた話になる予定です。

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