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ユメモノガタリ~2~  作者: 久川 りつき
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ー始の鐘は鳴るー





ーー・・・ありがとう






・・・・・・・・ございます。ーーー






シオンは、溢れる涙を必死に手で拭おうとしている。



アカズサがその手を優しく下ろすと、



イオリがハンカチを突き出す。





「・・・フンッ


女ならハンカチ位持ってなよ。


・・・これ僕のお気に入りのハンカチなんだから


ちゃんと返してよね。」




イオリがそう言ってぶっきらぼうに差し出した



そのハンカチを、



シオンはにこりと笑って受け取った。




ーーありがとう、イオリくんーーー




「イオリ、お前はしっかりしてるよな、


俺にはとても真似できないよ。」





そこには束の間









いつもの3人の姿があった。






「おい、いい加減にしろ見てて吐き気すんだよ。


家族ゴッコの続きがしたいなら(親父)を


消し炭にしてから勝手にやれ、




・・・・ったく、物があるわりには


妖刀の類いはからっきしかよ、使えねえガラクタばっか。」





クロサギは、どうやら武器になりそうな物を物色していたようだった。




「・・・申し訳ありませんが、武器庫はございません。


私は争いは趣味ではございませんので。」





クロノが謝罪すると、クロサギは眉間に皺を寄せる





「〈管理者〉の分際でよく言うぜ。


仕方ねぇな、


適当にここにある刃物はあらかた持ってくぞ。」





「・・・はい、それでは皆々様、


策を決行致しましょう。



クロサギ様はお察しと思いますが、


この空間を出ましたら、


アカズサ様とクロサギ様にはこれより山の一角を



短時間で切り開いていただきます。


そこへ、



シオン様には巫女のお姿になっていただき、


イオリ様と崖近くの死角に隠れていていただきます。


よろしいでしょうか?」







ーー・・・・・はい、分かりました。ーーー





「・・・・え、俺はクロサギと行くのか!?」




詳しい内容は聞いていなかったアカズサは、


ギクリと肩を上げてクロサギを見る。





「俺だってテメェなんかと行動を共になんかしたくねぇよ


モヤシ猫は枝だって切れそうにねぇ



ガキはそもそも囮に使うんだろうが


だとしたらもうテメェしかいねぇだろ。



つべこべ言ってねぇで行くぞ」




「・・ウグッ!!!!よ、よせバカッ!!!」



クロサギはそう言うと、


アカズサの首に、室内にあったと思われる鎖がまの鎖を絡ませ、


半ば強引に引きずって、


さっさと結界の外に行ってしまった。




「おやおや、気の早いお方だ。」



ーー・・・・・アカズサさん・・・ーーー



「あーあ、


あれは完全にクロサギに主導権握られてるね。


主張の強い弟で、この先苦労するんだろうなぁ


可哀想なアカズサ。」




ーー・・・・イオリくん、全然可哀想と思っていませんよねーー





少し片眉を上げながらイオリはシオンと目を合わせると、



途端2人はクスクスと笑った。






(・・・・・あ









・・・・・イオリくんの笑った顔








久しぶりに見た気がするな・・・・・)







「さ、それでは我々も支度を致しましょう。


どうもオワリ様はこちらの居場所を探し回っているようです。


木々が焼き払われ


叫び声もしておりますので、少し急いだ方が良いでしょう。」






クロノの言葉にイオリはシオンを見ると、



シオンは少しうつ向いていたが、直ぐに顔を上げると


イオリを見つめて小さく頷いた。




「では、シオン様はこの服をお召しになって下さい、


以前ーアチラーに出向いた際に手に入れた巫女装束でございます。


ですが、小さなシオン様には少し大きいかもしれませんね


私が着付けを致しましッ

「着付けなら僕がやる。


貴方は他の〈番人〉と合流して、


時期を待って下さい。」




クロノの話を遮ってイオリが名乗りをあげた。



クロノはイオリのその様子に一瞬キョトンとした顔をしたが、


直ぐに何かを察して深くお辞儀をした。





「・・・ああ、私としたことが大変失礼致しました。


ではシオン様、イオリ様


私は他の〈管理者〉と話をつけて参ります、


・・・・御健闘をお祈り致しております。」






ーー・・・ありがとうございます、


クロノさんも、他の皆さんもお気をつけて・・ーーーー





シオンがお辞儀をすると、クロノはほんの一瞬目を細めたが、


直ぐに背中を向けた



モノクルを外し、室内のテーブルにそっと置くと



壁の向こうへと消えていってしまった。






ーー・・・・・・・ーーーー





シオンは、巫女装束を手に取って見ている。




(・・・・・どうやって着るんだろうか・・・)





「さあ、シオン


僕が着付けをしてやるから、まずはその服を脱がないと。」




ーー!!!!????ちょちょちょちょっと待って下さい!!ーーー





「耳元でうるさいなぁ、何だよ。」





ーーほ、本当にイオリくんがやるつもりなんですか!?


いえいえ、教えてもらえれば私だけで着替えますから!!!ーー





「生憎、のんきに教えてる時間は無いよ。


ほら、早く向こうの方で脱いできなよ、そしたらこの


肌着と襦袢を着てきな。


これくらいは分かるでしょ。」



そう言って渡された二枚の服を手に、


私は目隠しの向こう側へと押しやられた。




ーー・・・・・・・・・・分かりました・・ーーー



シオンは恥ずかしがってもいられないと腹をくくり、


ワンピースのファスナーに手をかける。





(・・・そう言えば、ケケちゃんは元気なのかな・・)





「シオン」




ーー・・・・・はい、何ですか?ーーー





「そう言えば聞きそびれたんだけど、


何でクロサギの真上で気絶していたのさ?


それに、カンヌイのやつ、


ひどく疲労していたみたいだったし。」





ーー・・・・?????すみません、私覚えてなくて・・・ーーー





〈あれはヨミとか言う女のせいだよぉ〉




すると突然、シオンの影の中から子供のカンヌイがすがたを見せた。


以前に外に出た時よりは力は戻っているようだったが、


それでも青年の姿を保てる程の魔力は無いらしかった。





「なんだ、いたのか。」




イオリの素っ気ない態度にも、カンヌイは素知らぬふりで


話を続ける。





〈あの女、急にシオンの肉体を乗っ取ったかと思えばさぁ、


シオンの肉体を通じて、この俺の魔力ごと


巻き添えに解放しやがったんだ。


おかげで散々な目にあったよぉ。〉







「・・・・・・そうだったのか・・・・・」





カンヌイが不満気に話す間、


イオリはヨミの姿を思い出していた。




ーー・・・・そんな事が・・・・・ーー






シオンも、その時の記憶は無かったが、


肉体にかすかに残る、誰かの優しい温もりに


やっと合点がいった気がした。





(・・・そうか、この温もりは・・・ヨミさんだったんだ、



・・・・・母親の切なる思い・・・・




きっと





きっとマナさんや、オワリさんにも届くはず、




逃げたらいけない、私は






一人じゃないんだから・・・・・)






〈へえ、


シオンちゃんって思ってた通り綺麗な肌してるねぇ♪〉





ーー・・・・・・え?・・・・・キャアアアアア!!!!!!ーーーー








ガンッ!!!







着替えをしながら考え事をしていたシオンは


自分の影から現れたカンヌイがいる目の前で


着替えていたという事を、今更自覚して叫んだ。




ニヤニヤと見ていたカンヌイだったが、


次の瞬間カンヌイの頭に猛烈な一撃が振り下ろされる




〈イッッッッッッッたいなぁ!!!何すんだよイオリ!!〉




「・・・この畜生が・・・・!!!」



この一撃が止めだったのか、


カンヌイは魔力の消耗が激しいらしく、


またすぐに影の中に消えていってしまった。




「ったく、カンヌイのヤツが出てくると


ろくなこと無いな。


シオン、着替えたらコッチに来てくれ。」




ーー・・・・は、・・・・はい・・・ーーー




(・・・・確かにカンヌイさんはトラブルメーカーだけど、



少し





気分が晴れた気がした。)


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