ー騎士(ナイト)ー
私はガバリと起き上がり、
目前に迫っていたバケモノから飛び退いて距離を取った
・・・・正直
もう逃げられはしないと思った
でも
それでも最後まで諦めたらいけない気がした
ーー・・・・あなた達の無念は私には計り知れない!!!!!!
どんなに悔しかったか!!!!どんなに恨んだか!!!!!
私には想像もつかない!!!!
私を殺したいんでしょうけど
・・・でも、私は生きてたいの!!!!!!
今死んだら
これまでの頑張りが全部無かった事になる!!!!
・・・・お母さんにも会えないままになる
顔も知らないまま死ぬなんてイヤだ!!!!
私は・・・・
あなた達の一部になんかなりたくない!!!!!!ーーーー
私が叫ぶのと
バケモノの手が伸びてきて
私の首を締めるのは殆んど同時だった。
ギシッ
ーーー・・・!!!!????ウグッ・・・・!!??ーーー
ジタバタと暴れても、
バケモノの腕はビクともしない
それどころか腕はボコボコと音を立てて膨らみ
私の首を締め付けてくる
ーー!!??・・・ガアッ・・・・ヤッ・・!!!!ーーーー
涙が
勝手に出てくる
これは
もう
誰か
ダレカ
ーーー!!ダ・・・・・・・・すけ・・・・テ・・・ーー
ギリッ
ギリッ
ーーーーーー・・・・レカ
・・・・・・ダレカ・・・・タスケテェエエ!!!!!!ーーーー
私の絶叫が木霊した
その時
キーーーーーーーーンッ
ザシュゥゥウウウウッ!!!!!!
ガギャイァァアアアアアアアアッ!!!!!!!!
「・・・・・はあ、なぁんだ。
禁忌の成れの果てなんて所詮この程度なんだぁ?
その程度の分際で俺のシオンちゃんの綺麗な首に傷つけるなんてぇ
いい度胸してんじゃん?
今から解剖してやるからさぁ
もうちょいマシな絶叫聞かしてよねぇ?」
ーー・・・・・ゲホッ
ゲホッ・・・!!!!!ーーーー
私は酸素を肺に入れるのに精一杯で
その声の主が誰なのかが一瞬分からなかったけど、
あの
ねっとりとした声色には
聞き覚えがあった。
ーー・・・・・ゴホッ
カ・・・・・・・・・・・カンヌイ・・・・さん?ーー
私が、
やっと顔を上げると、
目の前には、
いつもと変わらない出で立ちのカンヌイさんが立っていた。
「もぉ探したんだよぉシオンちゃん~?
ウツシヨんとこ行ったら、
北の端にさっさと3人で行っちゃったって言うしぃ、
んで、近くまで来たら
突然------の魔力の波動を感じて駆けつけてみれば
シオンちゃんいないしさぁ!
・・・困ってたんだけどさぁ、
シオンちゃんやるねぇ♪俺ちょっと驚いたよぉ」
ーー・・・・・・?・・・・ーーー
「・・・俺達〔眷属〕を(呼び出せる)って
どんだけの事か分かってるぅ?
魔力もないはずのシオンちゃんが俺をここに召喚したんだよぉ?」
ーー・・!?・わ・・・・・私は何も・・・・!!ーーー
カンヌイさんは、
そう言いながらバケモノに向かってニヤニヤと笑いながら
青紫色に光る針を向ける。
「・・まぁ?
シオンちゃんピンチみたいだったしぃ、
このバケモノの相手はぁ、
俺のような、シオンちゃんの騎士が相手をするべきだよねぇ?」
カンヌイさんはそう言ったか言わないかの間にバケモノ目掛けて飛び出した。
ザシュゥゥウウウウッ!!!!!!
イギャエイアァァァァアアウアアアイアア!!!!!!!
ーー・・・・・!!!!!!・・・・・ーーーー
切り刻まれるバケモノの絶叫に
私は思わず耳を塞いだ
・・・・・禁忌の存在だってことも
殺そうとしてきたバケモノだってことも分かってる
でも
でも
アレは元々はーアチラ側ーの生き物だったんだ
私は違う涙が溢れてくる
ごめんなさい
ごめんなさい
カンヌイさんはバケモノを切りつけながら四方を囲むように
針を突き刺していく
ーー・・・・・・・なさい・・・・・・ーーーー
「・・・・やっぱりバケモノ切ってもつまんないなぁ、
どうせ切り刻むんならぁやっぱり生きた人間だよねぇ♪
俺の魔力は半減してるけどぉ
お前を消滅させる位は出来るからさぁ
・・・・とっとと消えて貰うねぇ?」
カンヌイさんは、
何やらブツブツと言いながら
手を前に出す。
すると
バケモノの下から青紫の紋様が浮き出てきて
また絶叫が木霊する。
ーー・・・・・ごめんなさい・・・・・・ーーー
「???シオンちゃんが謝る事ないじゃん?
こんな醜いバケモノはとっとと消滅するのがぁ
一番じゃん?
まさか、可哀想とか思っちゃってるのぉ?」
私には、カンヌイさんの言葉は耳に入らなかった
ーー・・・・ごめんなさい
辛かったでしょう
憎かったでしょう
苦しかったでしょう
無念だったでしょう
さぞ人間を
・・・・恨んだでしょうね・・・ーーーーー
「・・・・・・????シオンちゃん・・・・?」
私の口は
まるで自分の物じゃないかのように動いていく
ーーー・・・・ごめんなさい
どうか泣かないで
どうか苦しまないで
どうか安らかに
ごめんなさい
ごめんなさい・・・・・・ーーーーー
私が涙で目の前が見えなくなっていると
バケモノは
その体を光に溶かしながら
消えかかっていた
消滅する瞬間
バケモノに張り付いていた顔の最後の一面の瞳に
涙が流れたのを
私は見た。
スゥッ
紋様が消えると、カンヌイさんは私を振り返って見つめる。
「・・・・シオンちゃんってさぁ
何者なのぉ?」
ーー・・・????え・・・・??ーーーー
「・・・俺は消滅の法をかけたのにぃ
あのバケモノ・・・
・・・あれは浄化されてたよぉ?」
ーー・・・・・浄化・・・・???ーーーー
「うん、俺も見たのは初めてだけどぉ
シオンちゃんて本当は巫女か神官か何かなんじゃないのぉ?」
カンヌイさんは、私をジロジロと、
前より見つめてくるので、私はすごく居心地が悪かった。
ーー・・・い、いえ、私は本当に何もしてません・・ーーー
私は、それだけを言うと、
何の痕跡も残っていないバケモノがいた場所を見つめた。
・・・・・
・・・・・・浄化・・・・って事は
・・・・安らかに
眠る事ができたのだろうか・・・・・
私は、あのバケモノになってしまった〔もの達〕に
しばらく思いを巡らせたけれど、
第三者の声によって現実に引き戻される事になった。
「ほぅ、アレを〔浄化〕してしまうとは
さすがに予想していませんでした。」




