みかん
真一は、困った性癖あるけどまだ健全なほうだからねー。
「…クラスの皆もこうなら苦労しなかったんですけどね」
雅美ちゃんがコタツに頭を乗っけたまま呟いた。
雅美ちゃんの苦労は徒労に終わってしまったみたいだからねぇ。
秋前に縦穴ダンジョンから帰ってきた冒険者から聞いた話なんだけど、新興国の一団は本当にタチが悪かったそうだ。
通常の五人パーティーくらいで狩りをしていると、後からゾロゾロやってきて、人数に物をいわせ獲物を横取りしてする連中もいれば、勇者の力でカツアゲや恐喝して歩く者。毎日のダンジョンのどこかで揉め事を起こし、日々素行の悪さがエスカレートしていく集団に対するお隣さんの評価は非常に悪かった。
ダンジョン関係者が皆同じような評価をしていたらしいけどね。
「オレらみたいのばっかでも困るけどね」
まぁ、向こうは国がバックに付いちゃってるから気が大きくなってるってのもあるんだろうけどさ、もう少し自重出来ないもんかな。
雅美ちゃんの苦労していた姿が目に浮かぶようだよ。
「ただいま」
「きゅっ!」
健のただいまと同時にルカちゃんみかんの皮を投げたっ!
「(」゜□゜)」へびゅっ!?」
そして、ルカちゃんが投げた姿のままみかんの皮を顔に貼り付ける結果に終わった。
うん、ルカちゃんが反応する間もなく健が打ち返したんだわ。
「うきゅ~」
「はいはい、人に物を投げたらダメですよ~。」
泣きついたルカちゃんの背中を雅美ちゃんがポンポンと叩いてあやしている。
平和だのぅ。
どんどんドンっ!
ほのぼのしていたら『素材屋さんっ!』と言う叫び声と共に入口の扉が猛烈に叩かれた。
「…太鼓の達人やりてぇなぁ」
健が惚けた事を言っているが誰か来たんだけど誰も動こうとしない。
どんどん
「「「「………」」」」
寒いからかね。急に皆無言で茶をすすり始めたよ。
ああ、お茶が美味い。
ドンどんどんドンっ!
「素材屋さ―んっ!いるんでしょう!?ウチを助けてくださいぃぃっ!!」
どうやら、お隣さんみたいだねぇ…。
◇
「ううっ、無視しないでくださいぃぃ」
「あ~、寒いから開けたくなかったんだ」
入口で泣き崩れる青い髪の女の子に、健がのほほんと言い訳をする。
「コタツ入ります?」
雅美ちゃんが空いている一角を指差しおこたを勧める
「え、今そんな…おじゃまします。」
ほんの少しばかり躊躇したが、誘惑に負けておこたに潜り込む。
「って…それどころじゃなくて!エミリちゃんが、素材屋さんに分けて貰ったお醤油が盗られちゃったんですっ!」
そして、彼女は語り始め…。
「縦穴ダンジョ…「醤油なんざオレがなんぼでもくれたるわ」
話を聞くより先にオレは醤油の入った瓶を彼女の谷間に押し付ける。
「うん、此で全て解決した。」
彼女の名前は前園晴香さん、エミリさんの所属する“クラン”の一員で、醤油の為だけにこの街に取り残されたメッセンジャーだ。
同じ宿に泊まる者として、しばらく付き合いがあったんよ。
「ちがうんです!これだけじゃ足りなくて、もっと沢山必要なんでぶふすぅっ!なんで、みかんの皮を投げべっ!?」
「きゅいっ!」
足りないと言った晴香さんにルカちゃんがみかんの皮を連続投げ。
―いや、気持ちは分かるが投げたらあかんて。




