薬味とおやくそく
ワサビそれは日本最強の薬味。
鼻に抜ける刺激と香りのワサビは醤油と出会う事で、刺身を強烈に引き立てる。
…山と海の出会い、それは単純でありながら極上至上の料理を生み出した。
◇
「川が赤いです…」
二人の帰りを待つ間、沢の近くでありそうな山菜を探す事にしました。
でも、探し始めるより早く目についた対岸に生えていたフキを採ることに専念していた雅美ちゃん。川が赤く染まって来たの確認するとあわてて川を渡ってきた。
「ああ、上でなんか食われてんだね」
「…やっぱり、自然の中なんですね」
薄いピンク色に染まった川をながめているが、あんまり気持ちの良いもんではない。
オレもう今日は川の中入りたくない。
長靴なんてないから直に肌にふれるんだもん、血液を塗りつけて肌が綺麗だなんて言い張ったような美人が世界中に居たと話残ってたりするけどさ、冗談じゃないよな。
解体されたナマモノから流れ出たもんなんか気持ち悪いだけだわ。
意外とそうゆう気持ち悪い美人って奴は血液を採取する過程を知らねえんだ、バカだバカ。
雅美ちゃんも「…うわぁ」なんてヤダそうに言いながら川を見ているよ。
だが、川に血が流れればそれは藻や魚を育てる栄養になるから、自然界的にはありなんだろうね。
しかし、こうなるとこの水ではないにしても、同じ川の水を使って米を研ぐことになるのか?
…帰ってもいいような気がしてきた。
上にいったら捕食者に会えるんだろうけどさ。
「…上に魔物がいるんだね」
「上どころか、あたり一面魔物だらけでもおかしくないんですけど?
言いたい事は分かるんですけど、事後の解体はどうするんですか」
…いや、雅美ちゃんそれ倒せる事が前提条件で話してるよね?
でも、とりあえずやりたくないわ。
「…こうゆう異変に気付いた時に素人が見にいったりすると第一の被害者になるのが定番だよね」
「ありがちですね、それでお腹に卵を植え付けられるんですね、わかります。」
雅美ちゃんも不吉な言葉を追加して同意する。
いわずもがな、件の素人とはオレの事だ。
「…オレは絶対に行かない」
「それは間違いなく正しい判断だと思います。けど、冒険者としては失格じゃないんですか?」
確かに、赤く染まった川だとかみたいな、こうゆう明らかな魔物や獣の痕跡を見つけたら、原因である元の場所まで様子を見に行くのが本職の冒険者なんだけど。
「…川の中歩かなきゃいけないじゃん」
いまだ赤いままの沢のせせらぎに耳を傾ければ、なんだかサラサラと清らかな音ではなく、少し粘着質な水音が混ざっているような気がする。
「普段なら問答無用で突撃しそうなのに、本当に意外な所でメンタル弱いですね」
仕方なかろ。
本職になるつもりなら、そのくらいしなければならない。しかし、その事を承知の上で行きたくないんだ。
行ってみたいより、言ってみたいだけ。
―妄想はプライスです。
それに、男らしい奴ほどいざという時にヘタレだったりするんだからいいじゃないか。
「影丞さん、自分が男らしい(・・・・)と?」
それほどでも…いや、フラグを折り曲げて逃げるから男らしくはないからダメだな。
「あ、内臓…」
川を眺めていた雅美ちゃんがそんな事いうから…
「ひょっ!?!!」
オレ余所見してたから変な声でちまったよ。
「…違いました。真っ赤になった木の枝でした」
雅美ちゃん平気な顔してるけど赤くなってる時点で十分気持ち悪いわぁぁぁっ!
結論、雅美ちゃんの方が異世界耐性高い。
「…あれ見てください、あそこに生えてるのワサビみたいですね!」
川の隅っこに生えてる山葵らしき草を指差しながら雅美ちゃんが笑っている。
女の子って強いな、二三日したらその山葵取りに行こうか。




