WW草WW
柄の短い薙刀でザックザックと草をなぎ倒しながら進むのだがオレの背丈ほどが草木が茂る。真一と雅美ちゃんは前が見えてるのかな。延々とススキ続く大草原が、オレには密林に居るのとほとんど気がする。
ススキ大密林とでも呼ぼうか、フフフ。
「影ちゃんどこいった?」
「目の前にいんだろが(怒)」
「ちっちゃくて見えn…」
「うるさい黙れ」
時折こうした小ネタを挟まれながら開けた場所を探し歩く。
基本的に人が居ない場所だから自然がすごいのよ。
オレ・真一・雅美ちゃんの順番で歩いているんだけど、オレは先頭でひたすらヒュンヒュンと薙刀を振り回す手動式草刈り機になっている。
普通に人力だよ。
しかも薙刀っても、武器屋にあるようなしっかりした作りではなく雑貨屋にある薪割りに使う無骨な鉈に長めの柄を付けただけの物だから武器としては…まぁ見た目ほど役に立たない訳ではないから何も言うまい。
けど、あんまり草が深いと草を探すにも一苦労なんだよね。
ザックザックと切り倒しているのはススキの系統の草だ。“上手く燃やして処理が出来ればガラスの素材にならない事はない”との事で真一が後ろで束ねてはイベントリに放り込んでいる。…が、実際どうやってガラスに成るのかは言い出しっぺの本人すら知らないんださ。
本人がやる気になっているなら構わないだろうけど、どんぶりからなんか変なスイッチはいっとらんか?
とにかく、いま肝心なのは地面に生えた背の低い雑草なんだけど…。
「移動した方がよくないですか、この辺りはホントにススキだけしかなさそうですし。」
「しらみつぶしとか、手当たり次第に探してかないとああゆうのは見つからないんだよ」
雅美ちゃんが足元の草を見ながら提案してきたのだけど、真一やオレの経験則からそんな場所でもないと見つからないというのが野菜探し、真一の言うとおり根気よく探さないとね。
―例え今日がだめでも諦めるな、諦めたら其れまでだ。
「でも、ススキ刈ってるだけみたいな気分になってくるんです」
「「ススキも素材だから大丈夫。」」
真一とハモったわ。
「…仲いいですね…」
雅美ちゃんが冒険者としてそれはどうなの?と悩ましげにしているけど、ススキ刈りでもアリだと思います。
役に立つかわからない物もその内どこかで、敷き詰め肥料とか焚き火の燃料くらいには使えるからね。
「薬草発見、雅美ちゃんこれ向こうにもあった?」
真一が生えていたオオバコみたいな薬草を綺麗に引き抜いて雅美ちゃんに渡す。
「これは、私達がいた所では集めてませんね。なんに使うんですか」
「下級ポーションの材料の一つで、しっかり探せば結構生えてる物なんだけど、薬草は土地の力に左右されるから覚えておいて?」
「はい」
こうやって向こうとコッチの薬草知識の違い調べながら歩いて居るわけだから全くの無駄という訳ではない。
それに、運良く人参や大根が見つかったとしても食べれるのはだいぶ後の話になる。
健の家が農家だったんだけど時間をかけて品種改良していくから、かなり早くて三年とかいってたか?気の遠くなるような話だけど、この世界でなくても一株見つかれば群生している事がある。沢山生えてる場所が見つかる事を期待しよう。
んで、過去に一株だけしか見つからなかったような野菜は鉢植えにして健のイベントリに保管している。
あらかた野菜が見つかったら土地を買うか荒野を開墾して畑を作るつもりだって。
―気の長い話や…。この世界には手付かずの土地がたくさんあるから開墾しにいくんだろうな。
往くとしてもジャポニカ米を発見してからになるのかな?しばらく前から水辺にいってジャポニカ米の稲を探してみたりするんだけど健がいないと見分けもつかないから“これだ”なんて感じで見つかるもんじゃないよ。
稲科の植物は見分けなんかつかないもん。
「お?真一これ食べられそうじゃない」
足元に生えてた草を指差し真一に見てもらう。
「見た目、春菊臭いけどどうかな。」
そそくさとスコップで土ごと確保していく真一、その後ろで雅美ちゃんが「…私には雑草にしか」と呟くのが聞こえた。
「とりあえず、この辺りを重点的に探してみようか?雅美ちゃん同じ物ないか探してみて。
たくさん見つかったら試食もできるから。」
真一が試食をネタに雅美ちゃんに指示をだす。試食と言ってもとりあえず生で食べて様子をみるだけなんだけどね、オレ達じゃないんだから引き合いにするネタが間違ってるぞW
「…チャレンジ精神が過酷過ぎるぅ」
雅美ちゃんも真一から鎌を貰って草刈りを始めるが…過酷って(汗)




