こんなもんかな
「こんなもんかな?」
仕込みの終わった味噌を小さな入れ物に小分けして保存する事にした。
タイミングよく開けてアイテムボックスに入れてければ金山寺にも成るはずだと真一が言っていたが、いきなり全てが醤油になっていたら笑うしかない。
はたして、一晩で醤油に至る醸造を止める手だてはあるのか。
「…回転がたりな…だよ」
「だ…方ないだろ?」
こっちはこれでいいとして向こう側は賑やかだな…。
「味噌の仕込み終わったんだけど…」
“寝ていいかな”と続けようとして口をつむぐ。
「おぅ、ご苦労さん」
「もう少しで出来るからまってて」
「すぴー」
健と真一の足元には紙が散乱しているのだ、ろくろの設計図を作る事から始めていたようだ。
真一の“もう少しまってて”が“今夜は寝かさないぜ”と聞こえたのは多分気のせいだと思いたい。
「すぴー」
部屋の隅で寝息を立てている雅美ちゃんの寝付きの良さを恨めしく思いながらながめる。
「すぴー」
本当に赤の他人であるというのに無防備過ぎやしないかとは思うが時刻は深夜一時あたり、寝落ちも仕方ないと思いつつ雅美ちゃんに毛布をかけてやり、そこから離れた場所に座りこむ。距離を空けたのは多分抱きつき魔なので少し警戒したというだけ。
…………………。
「おい、気を抜いたら醤油になっちまうぞ」
「…あいあいさー」
ノソノソと身を起こす。
「…雅美ちゃんすげぇ。」
雅美ちゃんは壁の柱にしがみついていた。
「さっきはこっちに転がって来たから向き変えといた。」
健が背中を向けたまま教えてくれた、どうやら真一が糸を回してろくろを回す事になったようだ。
「味噌どうなったか見てきて。」
「うぃ」
深夜4時、二人の目が据わっているが気にしない。
…
「都合良過ぎて笑えないわぁ」
桶の中に味噌と、多分もろみ味噌のしっかり二種類。しかも、赤米使ったのに赤味のない白味噌が出来ている。
エイスケ酵素恐るべし、もしかして、鰹節を作ったら削り節が出来るんのではなかろうか?手元にカツオがないのは幸運なのだろう。
「影丞おそろしい子…」
いつのまにやら、健が後ろに来ていたが、うるさいわW
お盆の上にどんぶりを六個のせている。
本当に焼く気らしいがオレはもう知らん。
すぴー




