事情はわかったが…
「暑いしかも熱い」
鍋底を焦がさないようにかきまぜながらオレは呟いた。
事情はわかったが、それでも季節が夏である事を理解してもらいたい。
いくつかの海産物を入れたシチューを延々とかき混ぜる苦行を思いついた真一は再び漁へと向かった。
オレはムカッてる。 かつてないほど真一にムカッてきている。シチューなんか夏場は傷みやすいし温かくないと旨くないから離れる事も出来ないのに作れときた。
暑い中、食べたいとねだられて頑張って作ってるオレは十分優しいよね。
しかも、夕飯の後で大事な話があるとか一体なんなんだ。
◇
夕飯はシーフードシチューとパンと赤米の麦飯に焼き魚とウニに、ドクダミ炒め。我ながらカオスなメニューだ。
「…凄く美味しい」
「ん、ありがとう」
けど、毒消しも兼ねてるからドクダミももっと食べてほしい。
「これもどうぞ」
「ドクダミも…オイシイ」
流石にちょっと反応が悪いね、まぁ苦味と独特の風味かあるから苦手だとしてもしかたないか。
炭が毒消しだかなんかになると聞いた事があるから、素人知識でお茶の中に炭もすこーーーしだけ混ぜたりもしてたりする。 下手な鉄砲百打ちゃあたる、その逆も然り、異世界なにがあるかわからんからね。
それはさておき。
「実際、健が戻れるまで何日くらいかかると思う?」
「それは二三日で済めばいいけど実際どうだかね。捜索はともかく、現状で海賊の討伐隊がこないって事は船が港町に拠ってない可能性もあるんだよね」
実際二日目の夜だ、仲間が心配な奴がいれば通りがかるくらいしてもおかしくはないが、一向にその気配はない。
「どうせ海賊連中を奴隷商人に売りつけるのに必死でそれどころじゃないわよ」
雅美ちゃんがプリプリしながらそう口にする。盗賊やらを売りつける機会が多かったとか意外すぎる。
「海賊の姿が何もないのはそれでか…」
真一がガックリとうなだれる。17さい二人と16のオレたちより年下となると高校一年のハズだ。
それが、盗賊や犯罪とはいえ日常的に奴隷商に出入りしてるとは世も末だ。
しかも、その金は遊びや奴隷を買っうために使われているんだそうだ。
ダンジョンで盗賊のように横取りにくる険者もいたそうだ。それらを殺すにも今となると躊躇いもないらしい、ほうって置いても良いことはないのは確かだが勇者という建て前があるとはいえあまりに順応性がたかすぎないか?
察するに、彼女の言う常識が通用しなくなるだけの理由もまたあるけどな。
「それじゃ、戻りたがらないわけだわ…」
「やっぱり、そう思いますか」
しかも、船で移動していた事から解るように、そんな連中がこれからは国外での活動をするだなんて、ハッキリ言って賛同できないし、勇者のレッテルで調子に乗った連中と同郷だなんて思われたくない。
話を聞くに荒くれ者の集団と変わらない想定でいて間違いない。
特に筆頭勇者が酷い。
魅力が高いらしいが、とっかえひっかえのハーレムまで建国しているらしい。
幸いそいつらはゲーマーだったらしくダンジョンヒャッハーらしいから、顔を合わせる可能性はないのが助かるが。
連中は、サンデック領で一番大きくて有名なダンジョン”パベルの縦穴”を目指しているらしいけど、ウチの街の冒険者もベテランが結構向かってるし、中には”勇者”ともめて帰ってくる人居るんじゃなかろうか。
秋口にはいろいろ聞いて回ろうかと思ったけど、やぶ蛇って諺もあるんだから基本耳に入る情報だけでも充分か。




