夏の海は暑いんだ
この海に魔物が少ないのであれば海賊の生き残りがいてもおかしくない、ならばどうするべきか?
―オレは陸に残る
魚捕りを二人に任せ一人砂浜周辺の監視をする、泳げない旨を伝えたら雅美さんに残念そうにされたが、後は若いお二人で頑張って下さい。
◇
影ちゃんの見送りを受けながら厄介な事に巻き込まれたなと思う。
「雅美ちゃん、それ食べれるから取って帰ろう」
「これですか?」
足元に転がっていたグニョグニョした生き物を指差して雅美ちゃんに教えると彼女はためらいなく持ち上げてみせた。
「そのナマコみたいのは生でも食べれるけど、生より天日でカラカラに乾燥させてから塩と砂糖で煮た方がトロトロでおいしいくなるんだけどね」
「それじゃ、今日は食べれないじゃないですか」
なんにしてもナマコのような生き物を平気でつかめるのはありがたい。
「昔はダメだったんですけど、そんな事言ってられないですから」
なるほど慣れたと言うことか、向こうにいれば慣れる事はなかっただろうが勇者召喚となれば一般人的な冒険者などよりよほど多くの魔物を倒す日々となる。
解体を経験してたくさんの内臓にふれてしまえばナマコ程度となんて事ないか。
「そうゆうものかな」
「そんなものです」
初めて解体した魔物の肉が凄く美味しかったから解体が平気になったらしいけど、なんちゃって女子の影丞と違い本物の女の子の雅美ちゃんは下手したら影丞より肝が据わってるんじゃないだろうか。
「影ちゃんなんか、いまだに内臓触る時に顔青くしてるんだけどなぁ」
「それくらいウチのクラスにも結構居ましたし、それでいいんじゃないですか?」
彼女のクラスメイトの中には全く触れない子も中にはいたそうだ。
この先行動するのに、その辺りを指摘しないでくれるのは助かるんだけど、岩場に行けばウニもいるけど、ウニはそんなに美味しくないからいらないそうだ。
普通なら取り放題食べ放題だと喜びそうなんだけど、向こうならまだしも、こちらの生食はすきじゃないそうだ。
「やっぱりお刺身とかは醤油じゃないと…」
「やっぱり、そっちにも醤油はなかったか。作り方がわからないとどうにもならないからなぁ」
もしかしたら勇者達の方には醤油があるんじゃないかと期待していたがナイようだ。
「…うろ覚えでならわかりますけど。」
「…マジでか!?」
「小学校の社会見学で作り方は聞いた事があるんですけど、私達のいた所は大豆がなかったから…」
なるほど、社会見学なんか場所によってまるで違うからな。
後で教えて貰う約束を取り付ける。その際小躍りしてたくらいの事は許される思う。
漬け物とか試すのがすきな影ちゃんに任せれば、何ヶ月かしたら味噌と醤油の両方いけるかもしれない。
「因みに俺らはお茶工場だったんだ」
「お茶、緑茶の?」
「うん、お茶の木がなかなかないけど椿とか他の葉っぱでつくったのは飲んでるけど、もう少し別な工場がよかったな。」
味噌工場とかパン工場とならなぁ。
「羨ましいですよ。私紅茶が苦手だから誘われて何度かお茶会とか行ったけどそれでも美味しくおもえなかったんです」
お茶会のお誘い合わせとかもあったのか流石は上の世界。
お茶請けは邪道だとかで、出してくれるのも紅茶しかないらしいけど何が楽しいんだとおもうが、バッチリ貴族の奥さんの集まりだからありがちながら情報交換の場なんだそうで楽しい訳ではないんだそうだ。
「所でさ、なんでそんなにたくさんの勇者が必要だったんだ?」
この世界に魔王がいたなんて記録なんかない。
宗教変わればという話もないわけではないが、ギルドの情報をみると魔法王国の王家こそがそれではないかと思わないでもないが世界一の大国であるし、亜人や魔族と呼ばれる種族はなく部族毎に名前がある。
魔王を倒す希望が勇者というのならば、勇者がいらない世界の筈なんだけど。
「…あ」
「話にくい事なら別にいいよ?」
「いえ、長い話しでもありませんし」
―私達はその魔王を探すために呼び出されたんです―
彼女は疲れたような笑みを浮かべて話し出した。
彼女達は神聖王国として名乗りを上げたばかりの小さな国に召喚された。
召喚した勇者に魔王を倒させたいその国は古くからあるダンジョンや魔の森の地図と資金を与え監視係の騎士を始めとした部隊のもと勇者を送り出したのだと。
騎士の監視の中来る日も来る日も魔物と戦い続け、その中で友人が死んでいったという。
年下の彼女がこのような表情をする旅とはいったいどのようなものだったのか。
―だが、ここで一つ。
「そんなの関係ねぇっ!〇っパピッ!」
「ふるっ!?」
いま半裸だからやっただけだけど引かれた。
いないもん探してもなんにもならないのに暇な国だなー。
「それより今日はシチューにでもしようかと思ったから貝を集めようか」
「真一さん結構薄情な人なんだ…」
「悩んでるならまだしも本人が割り切って乗り越えてることなんか聞いてもしかたないじゃん?」
「…そうゆう人なんですね。」
「いやいや、影ちゃんのシチュー食えば何も感もアホらしくなるぜ?」
「美味しいんですか?」
「美味い」
彼女の問いにはっきり答える。影ちゃんのお母さん直伝レシピは店を出させたい位美味い。
ただ、試作品をいくつも食べたりもしたし、完成するまでに香辛料になる草や素材を探すのが大変だったけどな。
「いくら料理人がうまくても監視されてたんじゃ豚箱のくさい飯と変わんないさ。とりあえず記念に三人であったかい飯でも食べようか。」
「でも、夏なのに…」
…気にしないように。




