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どうしてこうなった?修正版

「ッア!」


気合いを込めて振るった剣。音もなく魔狼と呼ばれる魔物の頭を唐竹割にした。


少し離れた場所にはおびただしい量の血だまりがあり、その発生源で解体をしているのは真一。


真一が、俺の倒した魔物を解体してくれていると、血の匂いに誘われて魔物が次々とやってくる。


それを片っ端から仕留めて解体していくという単純作業だ。


「真一コッチも頼むわ。」


「OKコレが終わったらいく。」


俺は、解体を真一に任せて再び周囲の警戒に戻る。


見上げればおいしげる枝葉の向こうに青空が見える。


今はむせかえるような血の臭いしかしないが、この世界の空気は澄んでいて、とても他の奴らが語る危険な瘴気が大気中に混じっているようには感じられなかった。

おれだけじゃなくて、おれ達は三人とも瘴気とやらがまったく理解できていない。


森に入る奴らは体調崩したりする奴も中にはいるんだが、どうにもこの世界の住人とおれ達が感じている世界は同じ世界なのに違う世界みたいな感じだ。


こう言ってはなんだけど、なにをしていてもだしな。


森の中を深く足を踏み入れば魔物だらけのこの世界、今の魔狼ような魔物は動きこそ速く一般人にとっては十分に脅威となるが、ある程度経験を積んだ冒険者が飲み代稼ぎに選ぶような場所にたくさんいる魔物だってのも原因なんだけどな。


討伐証明部位は尻尾で肉は食えず毛皮位しか売る部位もない。先日倒した巨狼をたおしたために群れの大半がバラバラになり、今はそのはぐれた魔狼達の後始末をしているだけだ。魔狼はリーダー格を中心に数十頭の群れを作る習性があるらしいのだが、森の奥地に入るほど巨大な群れがあるんだと。


奥地には魔狼より強い他の魔物がいるからそれから、身を守る為に選ばれたらしき個体がボス級と呼ばれている。実際にボス級やそれに準ずる個体は一目でわかるほど体が巨大化しているためわかりやすいらしい。

おれが崖下に蹴り飛ばした魔狼なんか大したサイズじゃなかったんだが、発見された時には大騒ぎだったな。


でも、森の奥地に行くとクマよりデカい“普通の狼”が闊歩していたりする。


それを見つけた影丞が、餌付けをしようと執拗に追い回したんだが結局逃げられた。

多分凄く触りたかったんだろうけど、影丞が追い回したお陰で、それ以降影丞は(・)アレに会えていない。


魔狼なんて精々ハスキー犬くらいだしデカいのでも地球の土佐犬のがまだデカいくらいだから乱戦になると明確な見分けなんかわからんよ。


崖に蹴り飛ばした時も、気にならない程度しか違いがなかったからなぁ。


本来のように森の奥にいるのであれば討伐する事はないらしいのだが、今回は人の足で街道からそう歩かない場所という、街道に極めて近い場所に集まっているのが確認されたため、国の騎士団を中心にした討伐部隊が組織された。


おれ達は、部隊の野営地に向いた場所で活動していたがために、特例として参加している冒険者と言うことになる。


いや、ホントは強制依頼っておれたちはランクで除外される立場だから何度も断ったんだよ。

でも、強面相手に鍛えられた接客マンに勝てるハズもなくいつの間にやら同意させられていた。


大人って汚い


なにしろ薬草採取系の仕事しかしていないから知り合いからは薬草屋とか素材屋と呼ばれるし、戦闘そのものは経験がないから下手くそだ。合流時にギルド責任者に、戦闘には向かないと主張したのだが国が主体の討伐クエストは初級冒険者以外の参加は義務付けられているので仕方がなく参加しているんだ。


それに、参加しただけだとギルドからは雀の涙ほどの金しかでないから赤字になりかねないが、ギルドの責任者が野営地で素材の買い取りをしているのでやり方によっては荒稼ぎが出来るのだけどな。


「どーだ、真ちゃんそろそろ戻れそうかな。」


「まぁ、俺たちは二人だし魔物を四匹も(・)狩えば充分なんじゃない?」


「わかった、残り部分を埋める穴だけほっちまうか?



「そうだね、後は川の近くまで降りて薬草でも探しながら帰ろう。」


「了解。」剣からスコップに持ち替え地面の土を掘る。体力的にはまだまだ余裕があるが初心者として狩る量としてはこれで充分だろう。


それに、連日いくつものグループが別れて狩りをしているのだから、対象になる魔物の数は激減しているから、おれ達なら“会えなかった”と言って手ぶらでかえってもいいではなかろうかと思うのだが、真ちゃん=真一がそれを良しとしない。


昔から、変わらず真面目な真ちゃんが手を抜けない気質なのは知っているがここに至っては“ナメられる訳には行かなくなった”とは如何なものか。


真面目で融通の利かない真ちゃん、フラフラと落ち着きのない影ちゃん、この二人を引率してリーダー役をしているのが不真面目でだらしのないおれ。


正直無双したくない訳じゃないのだが、後ろ盾もないから無双したその後の責任なんかとれないんだぜ?

過去無双した英雄の何人かは人々の手によって追い詰められているだなんて最初に訪れた村で聞いて知った時に、絶対に突出もしないと誓ったもんだ。


ただ、今まで気は抜いて来てはいないが本気を出したことがないんだよな…。

どうせ剣を握るのだから、一度くらい自分の本気を調べてみたいとも思うんだ。



「ああ、また増えてる。」


俺は健の足元に転がった魔狼を見てウンザリと言う表現がピッタリな気持ちになった。


健は、悩んだり考え事をしていると異様なほどタゲを集めやすく魔物が引き寄せられる。


限りなく無防備なのだが、無意識の内に反撃する自動切り裂きマシンと化した健は手加減をしない。

本気を出したことがないなんて言う健だが、思案したり集中力が散漫になってる時の健ほど恐ろしいモノはない。


この世界に来て初めて魔物を倒したのはコイツだし、後ろから襲いかかってきた魚人型の魔物を意識せずに倒してしまいその後魚人の報復に合ったけどね。

街中ではスリとおぼしき者がすれ違いざまに腕を砕かれたりもした。

ただ、まともに敵対すると急にヘタレになる健にホッと安堵を覚えるよ。


影丞は、今は女の子だけど中身は相変わらず人を驚かせる、いや俺たちを笑わせ楽しませようと一生懸命に何かを考えてる。まじでやめさせなきゃならない。

悪くはないが、垣間見える《捨て身》がすごく危険だ、せめて《奉仕》に留めてほしいな。

今日は人に預けてきたが、仮面さえつけていれば中身を誤魔化せると思っているようだけど、仮面の下から聞こえる声がまぎれもなく若い女の声だ。


いつだったか影丞と健の二人で、語尾に「のじゃ」をつければロリババァになるから大丈夫だなんていっていたけども、良くも悪くも影丞のアバ体は背のサイズ違いのボンキュッポンだからロリババァを語るにはトウがたちすぎている。


冒険者の中にはいないみたいだが、たまに若い騎士がさりげなく中を探ろうと近づいてきたりフードへの接触を図ろうとする者がたまにいると言っていた。

健は、騎士団で賭けでもしてんじゃないかって話してたけど、容姿だけなら群を抜いて綺麗だし、影丞には筋力ないし貞操的な意味でも周りに気をつけてほしいよ。


早い段階で部隊が解散しないと影丞がやりすぎないとは限らない。


討伐部隊なんかとっとと抜けて帰りたいところだけど、目立たずに生きるにはダラダラ時間がたつのを待つに限る。でも、健と二人で環境破壊を辞さなければこの森の魔物を根こそぎ食い散らせるんだけどな…。


無双してみたいな。



そんな事を考えながら解体していたが、遠くから笛の音が聞こえた。


どうやら今日の討伐は打ち止めのようだ。

解体も終わり視線を健にやると先ほどまでと違い視線が遠くの一点に集中していた。


「どうしたんだ健。」


「いや、あれって鳥じゃないよな」


健はそう言って空のかなたを指差した。


「…よくあんなのに気づいたな。」


黒い何かが雲のはるか上を飛んでいた。


「ドラゴン?」


「なのかな…。」


健が呟きと言うにはなんとも熱の籠もった声を出し。それに相槌をうつが豆粒みたいでよくわからない。


鳥ではないのだろうし、大きさがジャンボ機くらいありそうだ。健が剣を握りしめているのは戦いたいからではなく警戒しているためだと思いたい。あんな者に出会いたくはないと思いながら見えなくなるまで眺めていた。


P・S

テントに帰った俺たち二人が出迎えてくれた影ちゃんに剣を抜きかけたのは内緒だ。


新手の魔物かと思ったわ。

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