宮城 月乃(1)
47の少女たち
第3話「とりしまり」
「ヤバい! 一学期初日から遅刻とかマズイ!!」
始業のチャイムが学園中で響き渡る朝の8時40分。
俺と千葉ちゃんとケヤキは全力で、校内の廊下を走っていた。
「ったく、2人がいつまでも昇降口で口ケンカしてるから!!」
多少の怒りも入った俺の言葉に一瞬ドキっとした表情を見せるケヤキと千葉ちゃん。
そう、今まさに遅刻しそうな理由としては、昇降口での、あの口ケンカが思いの他長引いて…
「あれは埼玉が悪いのよ!! いつになっても自分のセンスが悪いのを認めないから…」
「違う! 悪いのは千葉だ! 千葉は長ネギの良さを知らなすぎる!」
おっと待て何故ここで第2ラウンド始めようとしてんだよコイツら。
「ふん! 何が長ネギ可愛いよ!? 長ネギなんかより落花生の方が断然可愛いわよ!!」
「え、なんで落花生? ってかどこから落花生なんて出てきたのよ?」
「少なくとも長ネギの1000倍は落花生の方が可愛いわ!」
「千葉、やっぱりセンスおかしいよ…」
「アンタが言うなダ埼玉っ!」
「うるさい千葉カ!(おバカみたいなイントネーションで)」
「…お前らいつまでやってんだよ…本気で走らないと間に合わないぞ」
目的の教室までまだまだ。
この学園はとにかく広い。
広いのだ、とにかく。
そして、教室の前。
「だぁぁ! もう遅刻確定じゃん!!」
もう既に、チャイムは鳴り終えていた。
頭を抱え、去り行くチャイムの余韻を鼓膜で感じ、ひたすらに絶望。
教室の中からは、出席をとっている声が聞こえてるし…
今更のこのこ入れる雰囲気では…ないな。
「間に合わなかった…」
もうがっくり。
「まったく、埼玉がもっと早く自分のセンス無しを認めていたら、こんなことには…」
「…千葉こそ、センスがずれてる。おかしいよ」
「なにぃ!?」
「…ふんっ」
もう腹くくるしかないか、と遅刻に対する弁明を考えてる俺の横では、埼玉VS千葉のセンス貶しバトル第3ラウンドが既に始まっており。
「お前ら…こんな時でも…」
もう、なんだかなぁ…
その時
「…おいそこ、なにやってんだ!?」
ふと廊下に木霊する、凛と通った少女の声。
声のした方へ…廊下の奥、そちらに顔を向けると一人の女子生徒の姿があった。
「……ん?」
「誰?」
彼女の声に、振り返ったケヤキと千葉ちゃん。
だが、2人共声の主である彼女には見覚えがないらしい。
きょとん…とした顔で少女を見るケヤキと千葉。
…だが。
「もう授業はとっくに始まっている時間だぞ! 早く自分の教室へ行け!」
こちらへと歩み寄ってくる女子生徒。
「…あっいや、ここがその教室なんだけど」
「その…入る…タイミングが…」
で、焦る2人。
「なんだ? ここが教室ならさっさと入れば…ん?」
そして女子生徒、俺に気付く。
「…お前は」
「あっ、いやー…お、お久しぶりです…先輩」
女子生徒の鋭い眼光が俺の両眼を射抜く感覚。
この女子生徒と俺には、面識があった。
彼女の名前は宮城月乃、俺らよりもいっこ上の3年生だ。
「…本太郎か。なんだ? お前、今年も始業式から遅刻か?」
「いえ…その…ってか、去年は始業式ではなくて、入学式…」
「そんな事はどうでもいい」
「え…あっはい、すみません…」
すみません、次回も宮城ちゃん回なのでキャラプロフィールは次回に持ち越しという事で・・・