第52話:熱帯夜の宿場町と、冷涼リフォームの魔法
第52話をお読みいただきありがとうございます!
無事に大赤砂漠を越え、オアシス都市アル・シャハルに到着したタクミたち。
大理石の蓄熱で蒸し風呂状態だった宿屋の客室を、遮熱サンシェードや気化熱ミストシステム、冷感シーツで「劇的冷涼ビフォーアフター」する爽快なリフォーム回をお届けします!
大オアシス都市『アル・シャハル』の門を通り抜けたタクミたちは、市場の熱気を抜け、大通りから一本入った通りにある古びた石造りの宿屋へと足を踏み入れていた。
「いらっしゃい……と言いたいところだが、見ての通り部屋の中は酷い熱気だよ。それでもいいなら泊まっていきな」
宿の主人が、手拭いで額の汗を拭いながら力なく声をかけてくる。
案内された二階の客室に入ると、むっとする湿熱が部屋中に立ち込めていた。厚い大理石の壁が日中の殺人的な太陽熱をそのまま蓄え、日が落ちかけた今になっても室内に熱を放射し続けているのだ。窓を開けても外からは生暖かい砂風が入ってくるだけで、汗がひかない。
「うへぇ……お外も暑いけど、お部屋の中は蒸し風呂みたいだよー!」
セナがベッドに倒れ込みそうになりながら、首元の服をパタパタとあおぐ。
「石造りの建物特有の『蓄熱現象』ですね。それに直射日光がそのまま窓から差し込んで、室内の空気を逃げ場のない温室にしてしまっています」
タクミは部屋を見回すと、ニッコリと頼もしく微笑んだ。
「よし! ここを今夜の拠点にするために、さっそく僕のDIYで『特製冷涼リフォーム』をしちゃおう!」
「おおおっ! 小僧のDIYの時間が来たな!」
バランドが背負い袋をドンと床に置く。
タクミはさっそく【万能資材目録】と【極限加工】を起動させた。
まず取り出したのは、窓の外側に取り付ける『アルミ遮熱すだれサンシェード』。強烈な直射日光を外側で80%以上カットし、大理石壁の加熱を根本から防ぐ。
続いて、窓枠には微細な水滴を吹き出す『超微細ミストノズル(冷却ミストシステム)』を設置。
「気化熱を利用するんだ。水が蒸発するときに周囲の熱を奪うから、窓から入ってくる風が一瞬でエアコンみたいに冷たくなるんだよ」
さらに、部屋の隅には『多孔質セラミック蓄冷ブロック』と、風力スラスターの技術を応用した『静音サーキュレーター』を設置!
スイッチを入れると——
シュアー……ッと涼やかなミストが広がり、サーキュレーターが心地よい冷風を部屋全体に循環させ始めた。
「「「あ……あああぁぁぁ……ッ!?」」」
わずか十数分前まで熱帯夜の蒸し風呂だった客室が、まるで標高数千メートルの爽やかな高原のような涼しさと清涼感に包み込まれた!
「す、涼しい……! お部屋の中が、氷の洞窟に入ったみたいに冷たくて気持ちいいよーっ!」
セナがベッドの上でゴロゴロと転がりながら、大歓声をあげる。
「直射日光の遮断と気化熱冷却、そして気流の循環……! 魔法の冷気魔法陣すら使わずに、構造だけでここまでの冷涼空間を作り出すとは……!」
バランドが目を丸くして、冷たいミストが吹き出す窓辺に歩み寄る。
「仕上げに、みんなのベッドには『冷感接触シーツ』を敷いておいたよ。これで今夜はぐっすり眠れるはずさ!」
タクミが胸を張ると、宿の主人が「な、なんだこの部屋の冷気はぁぁっ!?」と廊下から飛んできて目玉を飛び出させるのだった。
第52話をお読みいただきありがとうございました!
タクミの冷涼DIYによって、過酷な熱帯夜の客室が至高の極楽空間へと生まれ変わりました。
次回第53話は、涼しい部屋で迎えるオアシス都市の静かな夜。
月光の下で明かされる、フィオナがかつて背負っていた「聖女」としての絶望とタクミに救われた記憶、そして遠く離れた戦地でふとタクミの温もりを思い出すガルドの思いを描く、エモーショナルな過去ドラマ回をお届けします! 引き続き応援よろしくお願いいたします!




