【閑話⑩】魔王と剣聖の、日よけ傘バトル
本編の合間の閑話をお届けします!
東の乾燥荒野をあとにし、南の湿地帯へ向けて進むタクミたち。
まだまだ残暑と日差しの厳しい道中、日よけ対策をめぐってガルドとバアルが謎のこだわりバトルを繰り広げます!
東の荒野を抜け、一行を乗せた馬車は南へと街道を進んでいた。
日差しは依然として強く、青空から容赦ない熱気が降り注いでいる。
「う〜、日差しが眩しいですし、肌がジリジリ痛みますね……」
窓から外を眺めていたフィオナが、手で日かげを作りながら呟く。
「ふむ……タクミ殿が作ってくれた馬車の断熱カーテンは快適だが、外に出た時の日よけ対策も重要だな」
作業着姿の魔王バアルが腕を組み、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「ガルドよ! 我が主たる者に相応しい、威厳と機能を兼ね備えた『最高の日よけ傘』を仕立ててやろうではないか!」
「なにを言うかバアル殿! 日よけに必要なのは威厳ではなく、いかなる突風にも耐えうる『絶対的な構造強度』だ! 武人たるもの、武骨で頑丈な日傘こそ至高!」
またしても謎の対抗心に火がついた二人は、休憩の合間にタクミの端材箱へ突撃した。
そして数時間後――。
「ふはは! 見よ、我の最高傑作『魔王傘(漆黒UVカット仕様)』だ!」
バアルが掲げたのは、黒塗りの波板と漆黒の布地をあしらい、開くとフリルと鋭いスパイクが飛び出す、無駄に重厚で禍々しい巨大日傘だった。
「ふっ、甘いなバアル殿! 我が作ったのは『鉄壁の重装甲日よけアンブレラ』だ!」
ガルドが胸を張って取り出したのは、厚手の鋼管とスチール板で組み上げられた、総重量十キロを超える超重量級の日傘であった。肩に担ぐだけでガルドの首筋に筋が浮かんでいる。
「……あの、お二人とも。重すぎますし、周りの人にスパイクが刺さりそうで危険ですよ……」
タクミが呆れたように苦笑いしながら、手元から二本のかさ(・・)を取り出した。
「はい、これ使ってください。高密度ポリエチレン布地にアルミ遮熱コーティングを施した『超軽量・晴雨兼用折りたたみ日傘』です!」
パッと開かれた傘は、羽のように軽く、差した瞬間に直射日光と紫外線を100%カット。傘の下だけがまるで樹齢数千年の大樹の木陰に入ったかのように涼しくなった。
「「「な、なにぃぃぃぃっ!?」」」
「か、軽っ!? 指一本で持てるぞ……! しかも頭の上の熱気が一瞬で消え去った……!」
ガルドがスチール日傘を地面に落とし、目を丸くする。
「う、ぬぬぬ……この軽やかさと涼しさ、我が重装甲デザインが完敗だと……!?」
バアルもショックで漆黒のスパイク傘を落とし、膝をついた。
「過剰な装飾や強度は、日常生活においてただの『重荷』にしかならない……DIYの真髄は機能美と使いやすさにあり、という好例ですな」
アルヴィスが冷静に筆を走らせる横で、フィオナがタクミの作った日傘を手に「軽くてとっても涼しいです!」と嬉しそうに微笑むのだった。
【閑話⑩】をお読みいただきありがとうございました!
重装甲と過剰デザインに走ったガルドとバアルが、タクミの超軽量遮熱日傘に完敗するコミカルな日常回でした。




