第三話 カフェ部の忙しいところ……?
「___と、カフェ部の仕事はこんな感じ、覚えれた?」
一通りカフェ部の仕事を見学し終わって、時間も日が暮れはじめている
入部届を書き終えて紅茶に手をつけ始めたところで話しかけられた
私はホールの仕事に割り当ててもらった
話を聞く限り、今いる3人以外にも所属してる人はいるらしいが、「また来てた時に説明するね〜」とふら姉にははぐらかされてしまった
「まあ、正直心配です……」
「大丈夫だ、私も最初は失敗だらけだった。今でもパンケーキを少し焦がすしな」
「レイっちはもうコーヒーをずっと入れといて……前に火事になりかけたじゃん」
「む、そうなのか?」
何やらちょっと物騒な言葉もあったが、あえて聞かないことにした
絶対それ少しじゃないじゃんってツッコミは喉で止めておく
ふら姉はケラケラ笑っていた
そして笑うのがひと段落したところで、思い出したかのようにふら姉が口を開く
「あ、そーだ、今更衣室にリネちゃんの分の制服用意してあるんだった。見てきなよ〜」
「あ、ありがとうございます……?」
確かに、そういえば、三人とも同じ制服だ。
見慣れた学校のものより、少し柔らかい色合いで――なんだろ、ちょっとカフェっぽいなと思っていた
「あと、リネちゃん硬すぎだよ?敬語禁止ね〜?」
「あ、はい!わかりm」
「敬語ー?」
「わかったよ……?」
「よろしい、じゃあ制服取りに行ってきて〜」
そう言われて、更衣室に向かうのであった
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更衣室自体はちょっとした休憩所の一角に設置されていた
ドアの前に立って一応誰もいないか確認のためにノックをしておく
コンコンコン、と立て続けに音を鳴らしたが、反応はなかったためそのまま入っていく
「えっとぉ?これかなぁ」
私はドアの鍵を掛けて、電気のスイッチを探すため、一目見渡す
電気をつけて、机の上にポツンと置いてある紙袋を確認する
そこには服らしき布、「藤宮離音」と書かれた名札がその布の上に乗っていた
それを持ってみんなのところに戻ろうとした
ーーその時だった
カチャリ、と鍵が音を立てて開いた
その上、何を話してるかはわからないが、知らない男の人の声もした
(まずい)ーーそう直感的に感じた私は何故か、ロッカーに急いで隠れてしまった
「……おめぇさん久しいな、前やり合ったのいつだったか?」
「そうですね、確か、2年前かと、あの頃はまだ体が軽かったのであんな動きはもうできませんけどね」
「嘘つけ、おめぇまだ学校卒業してねえじゃねえか。まだ先はあるさ。なんせ、お前天使だしな」
「そのいじり方はやめてくださいって何度言えば……」
ロッカーに入って、間髪入れずに2人による聞き馴染みのない声で話されるそういう会話が聞こえ始める
1人は男の人で、それなりに大人っぽい雰囲気がある、けれど、少し口も悪いように感じる
もう1人は女の人の声で、大人しい、そういう雰囲気が感じられた
一体誰なんだろう、鍵持ってたってことはきっとカフェ部の関係者ゃなんだろうけど、と思っていると、また話の内容が聞こえてくる
「で、あんたんとこの部は今回の交流戦、出るのか?」
「ええ、もちろんですよ。あなたの部も今回は出るんですよね?」
「ああ、今年は人数も揃ったしな、出るしかないだろ」
「……なるほど」
交流戦とか、カフェ部では聞くことがなさそうな言葉が出てきて少し混乱していると
カツン、と背中に背負っていた傘がロッカーにぶつかってしまった
本当に些細な音だった、が、当然見逃されるはずもなく、勢いよく開けられてしまう
前に重心が傾いてたからか、勢いよくロッカーから飛び出してしまい、顔を地面にぶつける
それを見て、女の人が一言
「……貴方、誰?」
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「本当にごめんなさい」
「いや、リネちゃんが謝ることじゃないよ、私がしっかりしてればよかった……」
「いや、んなもんはどーでもいい、問題はこいつに話聞かれたこと、顧問として⬜︎⬜︎⬜︎しとくべきだろ」
「せんせー、口が悪すぎますよ?」
あの騒動から5分後、カフェ部のみんなを呼んで話し合うことにした
「……まず、こちらから自己紹介しましょうか。私はアスタリスク=ノクターン、アスクと呼んでください」
「俺はラリバルトだ。カフェ部の顧問をしている」
アスク、と名乗った女子は、緩く巻かれた腰まである灰色の髪がふわりと揺れる、その頭の上では幾何学模様のヘイローが回っている
対してラリバルトと名乗った男性はボサボサとした髪。こちらも灰色の髪だが、アスクと対して少し黒が強いような気がする。その髪が掛かっている額から、小さな角がちょこんと生えていた
「えっと、本当にすみませんでした聞いちゃいけないことでしたよねあれ絶対」
「そんな早口にならなくても大丈夫ですよ、まあ、聞かれてはいけないことなのには変わりないですけど」
「アスクさーん?うちの新人ちゃんを脅さないでくれるー?」
「……でも、符等、貴女も彼女を引き込むつもりで勧誘したのでしょう?」
「そうだけど!まだ話してなかったのに!」
「ったく、符等、次からは気をつけろよ?次こんなミスあったらお前は部長クビだぞ」
「ラリバルトさん、貴方もそうやって脅さないでください」
「はぁ?アスク、お前が言うのか?」
何やら喧嘩になりそうな勢いだが、誰も止めない
そんな喧騒を眺めているとあの輪の中にいたはずのアスクが、リネの真正面にいつの間にか座っていた
「……驚かせてしまいました?」
「驚きましたよ、なんですか今の……」
「まあ、それは後々。貴女、名前は?」
「藤宮離音、ですけど」
「藤宮……ありがとうございます」
「い、いえ?別に名乗ってもらってたんで、それくらいは……」
そう言って2人とも少し笑う
が、アスクの目は笑うことはなかった




