第23話 【ネットの反応】論文の外側に何がある
[Apr 2, 09:15] @Student_K : 配送室からパッケージを受け取りました。例の東都マテリアルからの評価用サンプルです。耐衝撃ケースに厳重に梱包されていて、中身は直径50mm、厚さ2mm程度の白色セラミック円板が2枚。外見上はごく一般的なアルミナやシリカの焼結体に見えます。
[Apr 2, 09:18] @PostDoc_M : よし、すぐクロスフローの評価ベンチにセットしてくれ。まずは超純水でフラッシングして、初期の透水流束(Flux)を測る。プレプリントのデータが本当なら、この細孔径にしては異常に水が抜けるはずだ。
[Apr 2, 09:20] @Student_K : 了解しました。Oリングのシール確認後、0.5 MPaで加圧を開始します。
[Apr 2, 14:02] @PostDoc_M : Holy shit.
[Apr 2, 14:03] @PostDoc_M : ラボにいる全員、今すぐチャンネルの添付画像を見てくれ。
[Apr 2, 14:03] @PostDoc_M : [image_01_permeability_test_run1.png]
[Apr 2, 14:05] @Student_L : Unbelievable. 論文のグラフと完全に一致してます。むしろエラーバーを考慮すると、プレプリントの数字より綺麗なカーブを描いている。
[Apr 2, 14:06] @Student_K : ナトリウムとリチウムの分離係数、おかしくないですか? 透水流束がこのレベルで維持されているのに、どうしてここまで綺麗に特定のイオンだけが弾かれるんですか?
[Apr 2, 14:08] @PostDoc_M : ああ。ウチの測定系のコンタミか、あるいは東都の連中が意図的なチェリーピッキング(都合の良いデータの切り抜き)をやってるんだと疑って悪かった。東京の方角へ向かって土下座したい気分だ。
[Apr 2, 14:10] @Student_L : これ本当に無機多孔体の単一膜のデータですか? 最新の高分子複合膜でもこんな数字見たことないです。ゼオライト膜の限界をあっさり超えてる。
[Apr 2, 14:12] @PostDoc_M : マジだ。この無機膜は本物だ。特定の金属イオンに対する選択透過性が異常すぎる。圧力損失も信じられないくらい低い。既存の分離膜が全部ただのコーヒーフィルターに見えるレベルだぞこれ。
[Apr 2, 14:15] @PI_Smith : 素晴らしい。実に素晴らしいデータだ。今すぐウチの管状炉とマッフル炉を全部空けろ。東都の論文のSupplementary Information(補足資料)にあるレシピ通りに、この花崗岩由来のアルミノシリケート骨格を焼くぞ。
[Apr 2, 14:17] @PI_Smith : いいか、このプレプリントが出た以上、世界中のラボが追試に走っている。この製法特許の周辺技術(ドーピングや前処理の最適化条件)を他所に独占されたら、ウチの次のDOE(エネルギー省)の大型グラントが死ぬ。総力戦だ。東都より先に、この膜の大量合成プロセスと応用特許の網を張る。
[Apr 2, 14:20] @Student_L : 了解しました。論文記載のAl/Si比率に合わせてゾルゲル液を調製します。
[Apr 2, 14:22] @PostDoc_M : 焼成プロファイルと前処理条件はSIの記述をそのままトレースしろ。明日の朝には我々の第一ロットが焼き上がる。
[Apr 3, 04:12] @Student_K : すみません、夜勤組からの報告です。第一ロットのテストが終わりましたが……選択性がゼロです。ただのザルです。
[Apr 3, 04:14] @Student_K : [image_02_permeability_test_copy1.png]
[Apr 3, 04:15] @Student_K : 透水性自体は非常に高いんですが、論文にあったような異常なイオン分離挙動がまったく見られません。昇温レートのログを確認します。どこかでミスがあったのかもしれません。
[Apr 3, 04:18] @PostDoc_M : 何やってるんだ。コンタミだろ。洗浄溶媒のpHは論文と合わせたか? アルゴン置換が甘くて焼成中に酸化したんじゃないか?
[Apr 3, 04:22] @Student_L : いえ、完全にプロトコル通りに合成しました。純水でのフラッシングも規定回数やりました。超純水ラインのフィルターも昨日交換したばかりです。
[Apr 3, 05:30] @PostDoc_M : 企業論文特有の「隠し味」か。東都の論文、意図的に前処理の酸洗浄の濃度をボカしてないか? 『適切な酸処理により細孔表面を活性化』としか書いてない。
[Apr 3, 05:32] @PostDoc_M : 表面のヒドロキシル基(-OH)の密度が選択性に直結しているはずだ。もっと酸の濃度を上げて、表面の親水基を強制的に叩き起こしてもう一回焼くぞ。0.1Mから1.0Mまで5パターン振れ。
[Apr 3, 09:45] @Student_K : 駄目です。親水性は明らかに上がりましたが、選択透過性は発現しません。相変わらずただの水を通す綺麗なセラミックフィルターです。
[Apr 3, 09:50] @Student_L : 私の合成手順にミスはありません。ゼータ電位も測定しましたが、論文の記述と完全に一致しています。表面電荷の問題じゃないです。
[Apr 3, 10:10] @PostDoc_J : 横から失礼。プレプリントにある『花崗岩由来』って部分がネックじゃないか?
[Apr 3, 10:12] @PostDoc_J : 単なるアルミノシリケートなら、わざわざ天然鉱物を指定する意味がない。不純物(Fe、Mg、あるいは微量な希土類元素)が細孔内で触媒的、あるいは構造支持的に効いてる可能性は? ICP-MS(高周波誘導結合プラズマ質量分析)で組成を完全に東都のオリジナルサンプルと合わせろ。不純物のppm単位まで合わせるんだ。
[Apr 3, 11:05] @Student_L : やってます。高純度の試薬グレードじゃなくて、わざわざ地質学ラボから天然の花崗岩サンプルを取り寄せて粉砕して混ぜてます。泥臭いことこの上ないですが、これで出なきゃおかしい。
[Apr 3, 14:30] @Student_K : ロット3(不純物調整版)、全滅です。
[Apr 3, 14:35] @PostDoc_M : Fk. なぜだ。
[Apr 3, 15:00] @PostDoc_J : 焼成の冷却プロセスで微細クラックが入ってるんじゃないか? 顕微鏡レベルのクラックがあれば、そこを水がバイパスして選択性が落ちる。冷却レートを今の半分の速度まで落とせ。
[Apr 3, 16:45] @Student_L : ロット4。クラックは一切ありませんが、選択性は出ません。
[Apr 3, 18:10] @PI_Smith : 君たちは一日中何をやっているんだ? まともなグラフ一つ出せないのか。
[Apr 3, 18:12] @PI_Smith : 相手は未知のポリマーでも何でもない。ただの無機多孔体だぞ。お前たちは無機膜合成のプロだろう。
[Apr 3, 18:15] @PI_Smith : 言い訳はいい。何か決定的なパラメーターを見落としているはずだ。論文の行間を読め。条件を当てろ!
[Apr 3, 18:25] @Corp_R&D_Guy : ボス、少し頭を冷やした方がいい。
[Apr 3, 18:27] @Corp_R&D_Guy : (※企業からのスポンサー出向研究員)横から口を挟むが、量産性の観点から見て、そんなシビアな不純物コントロールや、ミリ単位の前処理パラメーターは、工業的プロセスとしてあり得ない。
[Apr 3, 18:30] @Corp_R&D_Guy : いいか? もしpHの0.1のズレや、昇温時の1度のブレ、あるいは大気中のわずかな湿度の差で機能が全損するようなデリケートな素材なら、東都マテリアルはあんなに安定した評価用サンプルをわざわざ海外に何枚も配れない。
[Apr 3, 18:32] @Corp_R&D_Guy : あのサンプルは、箱から出してベンチにポン付けしただけで完璧に動いたんだぞ。君たちアカデミアの人間は木を見て森を見ていない。東都はもっと単純で、かつ強固なブレイクスルーを隠しているはずだ。我々は何か根本的な「マクロな工程」を見落としている。
[Apr 3, 18:35] @PostDoc_M : ならその「マクロな工程」とやらを教えてくれよ! こっちはもう論文が出てから一睡もしてないんだぞ!
[Apr 3, 18:40] @PostDoc_M : 我々の合成アプローチに欠陥はない。オートサンプラーを使って、焼結温度、保持時間、冷却レート、すべて論文の±10%の範囲でマトリックスを組んで40パターンの膜を今から全部焼く。どれか一つくらい当たるはずだ。
[Apr 3, 21:00] @Student_K : 40パターン、全滅です。
[Apr 3, 21:05] @Student_K : 東都のオリジナルサンプルは、相変わらず隣のベンチで完璧な透過データを弾き出し続けています。測定器のモニターを見ていると気が狂いそうです。どうしてあの石だけが、イオンの大きさを識別できるんですか?
[Apr 3, 21:10] @PostDoc_M : クソッ、なんだこれは。どうなってる。
[Apr 3, 23:45] @PostDoc_M : ……全部潰した。
[Apr 3, 23:46] @PostDoc_M : 外部環境も、洗浄条件も、封入ガスも関係ない。
[Apr 3, 23:48] @PostDoc_M : [SEM_comparison_final.pdf] [XRD_data_overlay.zip] [Pore_size_distribution.csv]
[Apr 3, 23:50] @PostDoc_M : ラボの全員、添付のデータを見てくれ。東都が送ってきたオリジナルサンプルと、我々が今焼き上げたコピー膜の比較データだ。
[Apr 3, 23:51] @PostDoc_M : 構造的な違いは『一切』ない。
[Apr 3, 23:52] @PostDoc_M : 結晶構造も、細孔分布も、表面電荷の分布すらも、完全に同一の物質だ。我々の合成は完璧だった。論文に書かれている通りの物質を、我々は寸分の狂いもなく再現した。
[Apr 3, 23:54] @PostDoc_M : だが、我々の膜は何も選択しない。ただの水を通す石板だ。
[Apr 3, 23:58] @PostDoc_M : We made a perfect corpse based on the paper, but it has no soul.
(我々は論文通りの完璧な死体を作った。だが、それには魂が入っていない)
【海外学術系裏Discord サーバー「Membrane_Underground」流出スクショ】
参加者:各国の水処理・無機分離膜を専門とするPI、ポスドク、博士課程学生など
翻訳元:英語・一部多言語混じり(日本の材料科学掲示板有志による意訳版)
[Day 3]
German_Nerd : 聞いてくれ。東都マテのあのプレプリントの膜、ウチのラボ全滅した。72時間、思いつく限りのパラメーターを弄り回しても、あの異常な選択性を引き出す『ゴースト変数』が見つからない。誰か自前でコピー作製に成功した奴いるか?
WaterTech_SG : 予想通りだ。お前のところも死んだか。
German_Nerd : ああ。完全に泥沼だ。論文通りに焼いても透過性がただの素焼きの皿レベル。酸処理の濃度を変えても、アルゴンパージの時間を倍にしても何も変わらない。お前らシンガポール組はどうだった?
WaterTech_SG : 安心しろ、ウチもだ。この3日間で材料費と残業代を1万ドル溶かした。測定ミスじゃないし、お前らの腕が悪いわけでもない。あれは「そういう風に出来ている」んだ。
JP_Univ_Asst : 日本から失礼。ウチの教授も昨日から無言でロッカーを蹴ってる。構造は完全に同じなのに性能が出ないって、今朝のミーティングで学生が泣きそうになってた。企業論文特有の「材料隠し(ノウハウの秘匿)」の次元じゃないぞこれ。
US_Postdoc_Chem : 待てよ。つまり、東都マテの論文はフェイク(捏造)ってことか? それならPubPeerで叩き潰せば終わる話だろ。
WaterTech_SG : フェイクならどんなに良かったか! アイツらが送ってきた現物のサンプルは、完璧に、恐ろしい精度で論文通りの挙動を示すんだよ。今もウチのベンチで元気にナトリウムイオンだけを弾き出し続けてる。現物は100%リアルだ。俺たちが作るコピーだけが100%死ぬ。
[Day 4]
German_Nerd : ちょっと頭を整理しよう。企業が特許出願前や優位性確保のために、配合比率や特殊なドーパント(添加物)を隠すのはよくある。だが、それなら自作コピーでも性能が70%や50%に落ちる程度で済むはずだ。
German_Nerd : 選択性が「完全にゼロ」になるのはおかしい。しかも、XRD(X線回折)もSEM(電子顕微鏡)の画像も、東都のサンプルとウチのコピーで完全に一致しているんだぞ。物理的にも化学的にも、どこからどう見ても「同じ石」なんだ。
WaterTech_SG : つまり東都は、焼き上がった後の物質に対して、今の俺たちの分析機器じゃ絶対に見えない「何か」をしてるってことだろ。
US_Postdoc_Chem : 分析機器で見えない処理? 表面電荷も親水性も一致してるんだろ? そんな魔法みたいな後処理があるか?
JP_Univ_Asst : 後処理ねえ……。Phantom anneal(幻の焼鈍し)か? それとも未記載の特殊なプラズマ照射とかか?
German_Nerd : Post-bake voodoo(焼成後のおまじない)だろ。ふざけやがって。俺たちは科学者だぞ。魔女の真似事は専門外だ。
WaterTech_SG : もはや Blackbox curing(黒箱処理)だな。中身が見えない箱に入れて、何か呪文を唱えたら超性能の分離膜になって出てくる。
US_Postdoc_Chem : Cursed membrane(呪われた膜)と呼ぶべきか。ウチのラボも今夜から評価ラインを動かすが、話を聞く限り絶望しか見えない。
German_Nerd : 何度やっても同じだ。同じ物質なのに、アイツらの膜だけが「何を通すか」を知っている。材料科学の完全な敗北だな。俺たちは石ころの焼き方は知っていても、それに魔法をかける方法は知らないらしい。
JP_Univ_Asst : ああ。材料の組成や構造の問題じゃない。たぶん、そのGhost Process(幽霊工程)こそが、この技術の本体なんだ。
◇
【PubPeer(査読前・査読後論文議論サイト)への投稿ログ】
対象論文:High-selective permeation behavior of specially treated inorganic porous media
DOI: 10.xxxx/toutomaterial.20XX.xxxx
#1 Anonymous Reviewer (April 5, 20XX 08:12 UTC)
著者らに評価用試料の迅速な提供を感謝する。
当研究室における独立した透過テストの結果、論文に記載されたイオン選択性と透水流束は、極めて高い精度で再現された。データは真実であった。
しかしながら、Supplementary Informationに記載された手順に基づき我々が合成したアルミノシリケート多孔体は、XRD、SEM、およびゼータ電位測定による構造・表面評価において提供試料と完全に一致するにもかかわらず、選択透過性を一切示さなかった。
本論文は、材料の物理的・化学的構造と巨視的な透過挙動との間の乖離が著しく、機能発現のトリガーとなる『未記載工程(undisclosed process)』または『未知の活性化条件(unknown activation step)』の存在を強く示唆している。
科学的再現性の観点から、最終的な活性化工程の完全な開示を強く要求する。
#2 Anonymous Researcher (April 5, 20XX 09:45 UTC)
#1に完全に同意する。
当機関(EU圏の国立研究所)においても全く同一の現象を確認した。我々は意図的なパラメータの秘匿を疑い、過去72時間にわたり焼成プロファイルと洗浄条件の最適化を試みたが、全て徒労に終わった。
これは材料科学の論文ではない。結果のみを提示し、プロセスをブラックボックス化した工業製品のカタログだ。
#3 Author (Touto Material Science) (April 5, 20XX 11:30 UTC)
我々の論文に関心をお寄せいただき感謝する。
提供試料における性能の再現をご確認いただけたことを喜ばしく思う。
材料の作製条件については、現在開示可能な基礎的プロトコルをすべてSupplementary Informationに記載している。実用環境下における安定化処理等の一部詳細については、特許戦略ならびに社内規定により開示を制限している部分がある点、ご理解いただきたい。
◇
【X(旧Twitter)の反応:学術クラスタの延焼】
@NanoStructure_Lab
PubPeerが完全に炎上してる。東都マテの回答「書いてある通りです(意訳:お前らには一生作れないよ)」って、これ完全に煽りだろ。
@Material_JP_Prof
「安定化処理等の一部詳細」ね。
構造が100%同じなのに機能が0%になる「安定化処理」なんて、現代の材料科学には存在しない。界隈の裏Discordじゃ、もうアレは材料の組成じゃなくて「Ghost Process(幽霊工程)」が本体だって言われてるぞ。
@Chem_Eng_Bot
構造隠さずに機能だけ隠すの、性格悪すぎ。
レシピ通りに作ると完璧な見た目の食品サンプルができる論文。
@Water_Tech_SG
東都マテの研究者は、今頃ウチらの絶望した問い合わせメールを見ながらシャンパンでも開けてるんじゃないか?
@US_Postdoc_Chem
Ghost Process、Phantom anneal、Cursed membrane。
無機膜界隈の研究者が、揃いも揃ってオカルトみたいな単語で東都の論文を語り始めてる。世紀末かよ。
@Science_Observer
東都マテの件、だんだん空気が「論文の不備への怒り」から「東都マテという企業の底知れなさへの畏怖」に変わりつつある。
彼らは新しい材料を開発したのではなく、既存の材料に機能を後乗せする「未知のプロセス」を開発したのではないか?
@Chem_Eng_Bot
てか、東都マテのIR(投資家向け広報)にこの膜の未記載工程について質問投げた海外の研究者がいたらしいんだけど、「論文記載の通りです」っていうテンプレ回答が1分で返ってきて草生えたらしい。
@Material_JP_Prof
公式Xアカウント、世界中の学者がPubPeerで発狂してるのに、普通に「秋のインターンシップのお知らせ」とか「花壇の花が咲きました」とかポストしてて逆にホラーなんだけど。誰も中の人に今の状況伝えてないのか?
@Membrane_Dynamics
I'll say it again. This is not a paper, it's a flex.
(もう一度言う。これは論文じゃない。お前らには真似できないぞっていう圧倒的優位性の誇示だ)
@NanoStructure_Lab
【悲報】ウチのボス、東都の膜の再現を諦めて、東都マテの問い合わせフォームから「共同研究(という名のプロセス開示のお願い)」のメールを書き始める。
プライドよりグラントだそうです。アーメン。
@Material_JP_Prof
>@NanoStructure_Lab
ウチもです。完全に白旗。
勝てないなら仲間に入れてもらうしかない。材料屋の負けだよ。
【技術解説ブログ:マテリアル・インサイト】
記事タイトル:東都マテリアルの「魔法のオーブン」問題——学術の敗北が意味するもの
投稿日:20XX年4月6日 18:30
タグ:#材料科学 #分離膜 #東都グループ #ビジネスモデル
(本文抜粋)
現在、世界の分離膜・無機材料の研究者たちが、東都マテリアルサイエンスの一本のプレプリントを巡って阿鼻叫喚に陥っている。
非専門家向けに、何が起きているのかを雑に解説しよう。
東都マテは「世界一美味いケーキのレシピ」を公開し、同時に「試食用のケーキ」を世界中のトップシェフに配った。
シェフたちが試食すると、確かに世界一美味かった(=提供試料は論文通りの異常な性能を出した)。
そこでシェフたちは、公開されたレシピ通りに、同じ材料、同じ温度で自分たちのキッチンでケーキを焼いた。見た目も匂いも全く同じケーキが完成した(=構造解析ではオリジナルと自作コピーに差異がない)。
だが、自分たちで焼いたケーキを食べると、なぜか「段ボールの味」しかしなかった(=選択透過性がゼロだった)。
なぜか?
東都マテが、レシピには絶対に書かない「魔法のオーブン(解析不能な未記載工程)」を自社の地下に隠し持っているからだ。
研究者たちは今、「材料の配合」ではなく、その「魔法のオーブンの正体」が分からず発狂している。
彼らはそれを「Ghost Process(幽霊工程)」と呼び、特許出願すらされていないその工程をリバースエンジニアリング(分解・解析による模倣)しようと躍起になっているが、完成品からオーブンの仕組みを逆算できる人間はいない。
これは単なる学術界のゴシップではない。
ビジネスの視点から見れば、極めて恐ろしい事態だ。
「世界中のトップ研究機関がリバースエンジニアリングに失敗した」という事実は、東都マテリアルが『絶対に他社に真似されない、圧倒的なブラックボックス』を完成させたことを意味する。
特許を出せば仕組みの一部を開示しなければならない。だから彼らは出さない。
学術の敗北は、そのまま市場における絶対的な参入障壁になるのだ。
◇
【5ちゃんねる:市況1板 - 東都グループ総合スレ 43スレ目】
スレタイ:【Ghost Process】東都マテリアルの膜、ガチでヤバいらしいぞ
312 :山師さん:20XX/04/07(火) 10:05:12.34
なんかXで研究者が東都マテにキレてるけど、新素材でも出したの? 買い?
318 :山師さん:20XX/04/07(火) 10:12:45.89
ただの無機分離膜の論文だろ
ニッチすぎ。どうせすぐ中国か韓国に特許回避されてパクられて終わるわ
325 :山師さん:20XX/04/07(火) 10:20:11.12
318
お前上のブログ読め。特許回避もクソも、そもそも特許出してないんだよ。
世界のトップラボが構造丸パクりしても「性能が出ない」から発狂してるんだ。東都しか作れないブラックボックス工程(Ghost Process)が入ってるらしい。
340 :山師さん:20XX/04/07(火) 10:28:55.67
は? 構造同じなのに性能出ないってどういうこと?
錬金術かよ
352 :山師さん:20XX/04/07(火) 10:35:10.45
錬金術みたいなもんだろ。海外の学者が「幽霊工程(Ghost Process)」って名前つけて恐れてるわ。
368 :山師さん:20XX/04/07(火) 10:41:33.20
待て待て、落ち着け。
分離膜って水処理とかで使うやつだろ? そんなに市場でかいか?
所詮はフィルターだろ?
375 :山師さん:20XX/04/07(火) 10:48:05.77
368
水処理だけじゃねえよ。超純水、半導体製造プロセスの廃液回収、電池材料の精製。
もし東都マテの膜が「特定の金属イオンを異常精度で弾く」なら、海水淡水化のコスト構造がぶっ壊れる。
388 :山師さん:20XX/04/07(火) 10:55:12.19
おい……これ、もしかして南鳥島のレアアース泥にも使えるんじゃねえか?
401 :山師さん:20XX/04/07(火) 11:01:44.82
388
あ……(察し)
415 :山師さん:20XX/04/07(火) 11:08:22.55
泥から欲しいレアメタルだけをピンポイントで抜ける膜……。
それ、東都が独占したら完全に国策案件じゃん。
世界中の資源メジャーが東都に頭下げるレベルだぞ。
430 :山師さん:20XX/04/07(火) 11:15:40.11
ヤバいヤバいヤバいヤバい
ただのフィルターだと思ってたら、資源覇権握る魔法の石板だったわ。
445 :山師さん:20XX/04/07(火) 11:22:55.90
特許出さない理由が分かったわ。
仕組みバラしたら国に接収されるか、海外にパクられるからだ。
ブラックボックスにしたまま「膜そのもの」じゃなくて「浄化プロセス」で市場を支配する気だろ。
462 :山師さん:20XX/04/07(火) 11:30:10.84
おい、お前ら。ちょっと待て。
俺、なんかすごい嫌なことに気づいたんだけど。
470 :山師さん:20XX/04/07(火) 11:35:44.22
なんだよ
488 :山師さん:20XX/04/07(火) 11:42:15.67
この『解析不能な工程を経た、性能が異常な石(無機膜)』って、最近どっかで似たようなの見てないか?
495 :山師さん:20XX/04/07(火) 11:48:30.14
は?
512 :山師さん:20XX/04/07(火) 11:55:05.88
東都E&Lだよ。
あそこの「EEL-RX/HC(超圧縮バッテリー)」。
あれも現場の連中が『高密度なのに全く怖くない(熱暴走の気配がない)異常な電源』って騒いでただろ?
で、一緒に出たのが「EEL-TC(特殊加工花崗岩の熱安定化材)」。あれも『冷える石』だった。
528 :山師さん:20XX/04/07(火) 12:02:40.55
…………あっ。
540 :山師さん:20XX/04/07(火) 12:09:12.30
おい嘘だろ。
冷える花崗岩(TC)。
異常に安全な電源(HC)。
そして今回の、謎の工程で選択性を持った花崗岩由来の膜(東都マテ)。
555 :山師さん:20XX/04/07(火) 12:15:55.77
全部「石」絡みじゃねえか。
570 :山師さん:20XX/04/07(火) 12:22:10.45
E&Lとマテは別会社だろ! 資本が同じなだけだ! 一緒にすんな!
585 :山師さん:20XX/04/07(火) 12:28:44.12
バカ、財閥のトップで技術の根っこが繋がってたらどうするんだよ。
電源。熱管理。そして今回の分離・精製プロセス。
これ全部、現代インフラの根幹だぞ。
601 :山師さん:20XX/04/07(火) 12:35:20.88
おい……東都は素材を開発してるんじゃない。
グループ全体で、何か『未知の技術体系(Ghost Process)』を小出しにして、世界中のインフラを裏から押さえに来てるぞ。
620 :山師さん:20XX/04/07(火) 12:42:05.33
鳥肌立った。
東都が売ってるのは、バッテリーでも保冷材でも膜でもない。
635 :山師さん:20XX/04/07(火) 12:48:55.90
要するにこれ、絶対に他社が外せない『インフラの首輪』ってことか。
650 :山師さん:20XX/04/07(火) 12:55:10.14
誰かこのスレ消せ。マジで消されるぞ。
◇
【X(旧Twitter)/業界リーク・ウォッチャー界隈】
(公開から8日目:4月8日)
@Industry_Leak
Just heard. 巨大水処理メジャーのR&Dトップが、来週のスケジュールを全キャンして東京行きのフライトを押さえた模様。行き先は霞が関か、それとも東都マテの本社か。
@Semicon_Watcher
某外資系半導体メーカーの中堅エンジニアの匿名愚痴。
「上層部から『東都の膜の再現検証は直ちに中止しろ。無駄だ。代わりに資本提携のスキーム案を今日中に上げろ』という指示が下りてきた。狂ってる」
@Gov_Tech_Observer
経産省の資源エネルギー庁周辺と、内閣官房の一部(特異な過去事例を扱う部署らしいが詳細不明)で、ここ数日東都マテリアルと東都E&Lの過去の特許出願履歴を異常な回数スクレイピングしているアクセスログがある。政府も「Ghost Process」の正体を探り始めたか?
@Univ_PI_Tired
(某国立大の主任研究員)
ウチの産学連携本部がしゃしゃり出てきて、東都マテへの問い合わせメールの文面を勝手に書き換えられた。
「再現条件の質問(科学的ディスカッション)」から、「非開示プロセスに関する秘密保持前提の面談希望(ビジネス交渉)」に。
もう純粋な科学じゃない。
@Water_Eng_Anon
水処理メジャーの連中、膜の仕組みを理解するのは諦めて「実証プラントの共同建設」の枠だけ先に押さえようと動き始めたぞ。えげつな。科学を捨てて札束で殴りに来てる。
@Market_Insider_JP
東都マテリアルの受信トレイ、今はどうなっているんだろうな。
試料要求のフェーズはもう終わった。今届いているのは「降伏文書」と「白紙の小切手」、そして「探りを入れるための丁寧な脅迫状」だ。
Ghost Processの正体を暴こうとする無邪気な科学の時間は、たった一週間で終わった。
科学の時間は終わった。政治が始まったな。
最後までお付き合いいただき感謝します。
もし「続きが読みたい」と思われた方は、ページ下部よりブックマークと評価をお願いします。




