ぷつぷつ 9
寺に着くと待ち構えていた面々がぞろぞろと出て来た。
住職と小僧に断り昨晩泊めて貰った部屋を借り7人は円座になって座った。弾心が小僧が用意してくれたお茶を皆の手元に配る。
「梢から話は聞いたか?」
弦蔵が桂と虎次郎に尋ねる。二人は頷いた。
「皆が聞いたように、御前会議で上がった呪詛事件も含め今回のことも鬼の残渣が関係している。三条家を視てきたが、どんなものかは分からないが鬼の遺物が呪詛に関係してると思って間違いはないだろう」
円座を組んで座った面々の顔は一様に引き締まった。
「鬼の残渣・・・」
武千代のつぶやきを聞き弾心と忠平押し黙った。
今現在の陰陽師のほとんどが大厄災の記憶がない。大厄災を生き延びた陰陽師の数は少なく、四家の当主を含め数名だ。本来なら大厄災の元凶である鬼を封印して次の大厄災に備えるというのが陰陽四家の掟なのだが、前回の大厄災で黎人は鬼を封印ではなく消滅させた。大厄災後、鬼に関する知識は当主となる者にだけ受け継がれることに決まった。
厄災を起こし古都を焼き払い、多くの陰陽師を道連れに消えた鬼。
恐ろしい存在だということはわかるが、その恐ろしさを計る目安が若者たちにはなかった。
「まあ、そんなに深刻になる必要はないよ」
顔色の変わった一同を見渡しながら黎人は微笑んだ。
「本当に残り滓のようなものだ。人の悪意や憎悪に反応して力を得ているんだろうけど、それだけの事。いつものように除霊すればいいんだよ。心配することはないさ」
ふわっと春風が吹いたかのような言葉の軽さに若者たちは毒気を抜かれて顔を見合わせた。
「まあ、でも油断は禁物だけどね」
その顔を見て、フフフと笑いながら黎人は付け足した。
「それで、三条家の方はどうだったんだ」
桂が聞く。
「結界を張って来たから今夜行って見よう。やはり夜じゃないと、分かるものも分からないからね」
「こんな大人数でぞろぞろ行くのか?」
弦蔵が聞く。
「虎がこの依頼の責任者だし、子供たちは見聞を広めた方がいいし、」
そこで黎人は言葉を切り、桂の方を向いた。
「桂だけ帰すのも・・・」
「当たり前だ。なんで俺だけ帰らなきゃいけないんだ」
黎人は憮然とする桂を「まあ、まあ」と目で慰め、
「ね、やっぱりみんなで行った方がいいね」と弦蔵に微笑んだ。




