ぷつぷつ 5
「まあ、このような感じです」
主殿に通され北家当主忌寸公満を交えて弾心がざっと除霊の依頼のあらましを四人に聞かせた。
「どう思われますか義兄上」
弾心に問われ黎人は自分の顎をつまんだ。
「私たちがここへ来た目的と根が同じかもしれないね」
優しい声音だが黎人の声は良く通る。
「まだ当主と一席しか知らない事だが、南家と北家に出された新しい依頼があってね」
弦蔵からそう切り出されて、若者三人は姿勢を正した。公満が話しを引き継ぐ。
「ここ数年奇妙な呪殺が何件か起こっているんだ。しかも今まではそれらの死に関連があるとも思っていなかったから、誰かに呪詛されたようだというぐらいの認識だったんだ。今年になっていくつか事件が続いた事で、それでもしや何か繋がりがあるのではないかという話になったのだ。天子様とも話し合い、この前の御前会議で北家が率先してこの事件に当たることになった」
「亡くなっているのは貴族なのですか?」
武千代が聞く。
「いや、貴族はいなかった」
「何で呪殺だと分かったのですか?死に様が普通ではなかったのですか?」
忠平の疑問は最もだった。事故と思える死に方なら誰も疑問に思わないだろう。
「まあ、そうだな。これも後から気付いた共通点になるのだが、皆自死だったんだ、普通ではない死に方での」
「普通ではない、自死・・・」
公満の言葉に忠平は唾をのみ込んだ。除霊に行き遺体を目にすることはめったにない。忠平は人の死を目にするのが嫌いだった。もちろん遺体を見るのが好きな人間はめったにいないと思う、だが陰陽師たちは好きではないが淡々と受け入れる者がほとんどだ。忠平のように遺体があると聞けばぎゃーぎゃー叫んで同行を拒否するものはいない。
遺体という言葉だけで気分が下がった忠平の背中を虎次郎はポンと優しく叩いた。
「それで黎人さまたちはどうしてここに?」
北家と南家の合同の仕事なら東家の弦蔵と黎人がここにいるのはおかしい。
「私たちは公満に呼ばれてやってきた」
「そう、梢がね、黎人が起きたなら相談したいことがあるから呼んでくれって」
「梢様が」
虎次郎の納得の声を聴いても若い三人には何のことか分からない。
「梢というのは北家の正妻だ」
弦蔵が説明する。
「北家の正妻?」
その言葉に忠平の眉は寄り、黒目は上へと上がった。弾心もちょっと目を泳がす。武千代だけが「そうなんですね」と頷いている。
桂の瞳が二人の若者を静かに刺す。もうこれ以上このことに関して話すことはないという言葉無き忠告だ。
「ではまず梢に会おうか。梢から話を聞かないと始まらないからな」
黎人が立ち上がった。
「公、梢は禁書庫から出てくるのかい?私が行った方がいいのかい?」
「これだけ人がいる、黎、悪いが行ってくれ」
うん、と頷くと黎人は主殿から出ていく、その後を当たり前のように弦蔵が付いて行った。
二人の背中を見つめながら若者たちはちょっと複雑そうな顔つきになった。




