26.脱出
「……は?」
目に飛び込んで来た景色は、夕日の様に赤く照らされたビル群。
…外だ。
…え、外っ!?
なんでっ!?
確かサザエオニを倒して…って、ボス倒したら強制的にダンジョンから排出されるのかよ!
…この辺はVer.2とは仕様が違うんだな…。
いや…これが現実、だからだろうか。
「…オイ!塔が消えたぞっ!?」
「何だ突然…何が起こったんだ!?」
「…なんだコレ…幻でも見てたのか…?」
…そうだった、塔の外は自衛官や警察官に囲まれてたんだったな。
…ってか、消えたのかよ塔。
みんな大パニックじゃねぇか。
「…どうしよう夢野君、このままだと少し不味いかも…。」
「あの塔が消えて、見知らぬ一般人が突然立ってたら…そりゃあ怪しすぎますよね…。」
…確かに。
幸い今、俺達は消えた塔のあった場所…そこに建つ、小さな祠の影に隠れている。
…つーか何コレ?
ダンジョンが消えたのは理解できるけど…なんで祠が現れるんだ?
「…うっ!?…夢野君…それ見て。」
山里さんが促す先には、小さな石碑…?
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『討伐碑』 六道輪廻・栄螺堂
人に仇なす古き支配者が一柱
妖魔:栄螺鬼を討伐せしめた事をここに記す。
称えられし三名の討伐者は
夢野新作 山里良平 大島愁
彼等の成した偉業を記し、未来永劫称え続ける。
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…うぇぇぇぇ何コレ…!?
なんかバッチリ俺達三人の名前が刻まれてるし!
何だコレどうすんだよ、誤魔化し様が無いじゃねぇか!
「…み、見つかる前にぶっ壊しちまうか…?」
「いや…もしかすると…僕達が過去にクリアしてきたダンジョンにも、同様の物が現れている可能性が…。」
「…詰んでますやん。」
あの上位存在め…ちゃんと細かい仕様を説明しておけよぉぉぉ!!
…まぁ別に、隠してるワケじゃあ無いけど…面倒だなぁ…。
「…ちなみに祠の中を覗いてみたんですけど…馬鹿デカい栄螺の殻が祀ってありました。」
大島に言われて覗いてみると…確かに、祭壇には一抱え程もある栄螺の殻が鎮座していた。
正にお化け栄螺…サザエオニの本体とかだったりするんだろうか?
あの巨女と比べれば大分小さい…可愛いとさえ感じてしまうのは、あのグロい下半身を見たからだろうか?
…さて、ゆっくりしている時間は無い。
今の問題は…どうやってこの状況から抜け出すかだな。
そんな事を考えていると、何やらにわかに騒がしくなってきた。
何だ何だ?と聞き耳を立てていると──
「──だから!何度も言っているだろ!?D11の異常建造物が突然消失したんだよ!」
『こっちはそれどころじゃ無い!各地の異常建造物から…怪物が現れて、市民に被害が出ている!』
「か…怪物っ!?なんだそりゃ!?」
『…その様子だと、D11の異常建造物が消えたという話…どうやら本当の様だな。』
「…悪い冗談…ってワケじゃ無いんだな…?」
『…残念ながらな。…だが丁度良い。そっちの異常建造物が消えたのなら、余剰人員を他所に回してくれ!正直、今は一人でも多くの戦力が欲しい!』
「…D11も完全に鎮静化したのか調査出来ていない。…こちらにも最低限の人員は残すぞ?」
『それで良い、助かる!現状対応が追い付いていないのは──』
…モンスターがダンジョンから出たのか!?
マジかよ…くそっ、Ver.2の頃にはこんな事は起こらなかったのに…!
「…さっきの話が本当なら…会社に残してきた皆が心配だね。」
「ってか自分…実家の両親が心配なんすけど…。」
…二人の言う事ももっともだ。
今は一刻も早くここから脱出して…まずは会社の安全を確認しに戻らなければ。
…そのまましばらく隠れていると、二名の警察官を残して自衛隊員達が居なくなった。
他所のダンジョンから溢れたモンスターの対処に向かったのだろう。
これで監視は二名、モンスターを恐れたのか野次馬も居なくなっている。
…俺達は隙を見て、祠から建物の影までステータス任せの全力疾走で移動した。
…はぁ、やっと抜け出せたぜ。
「一息つきたい所だけど…今は一旦、会社に急ごう。」
無言で頷く二人を連れて、先を急ぐように走り出した。
へ_\○ へ_\○ へ_\○ へ_\○ へ_\○
会社のすぐ近所まで戻った所で、見慣れた通勤路に異変があった。
崩れた塀、ひび割れたアスファルト…明らかな戦闘の爪痕。
…なんてこった、ここにもモンスターが!?
マジで皆が危険かもしれない!
俺達は大慌てで会社正門前へと駆け付けた。
…すると、そこには──
「「「「わーっしょい!わーっしょい!わーっしょい!」」」」
「あぅ!ちょ!…み、皆さんそろそろ…下ろして…私…酔ってきました…。」
…会社の皆が、何故か制作部の若手女子社員、乾さんを胴上げしていた。
…マジで何だこの状況?




