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35歳会社員、ダイエットアプリだと思ってDLしたら謎の超人育成プログラムだった件  作者: 須藤 蓮司


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24.『六道輪廻・栄螺堂』攻略③

 観音達との連戦が続き、ちょっと疲れたので休憩中。

 DDTのアイテムストレージにはいつの間にやら奴等のドロップ品がたんまり…。

 流石にこんだけあると、ありがた味が無ぇな!


「【吹雪の宝珠】…ああ、このスライム型の水晶か。」


 俺がストレージから取り出して眺めていたら、山里さんが隣で注釈を入れてくれた。


「如意宝珠って言われる物だね。仏教では願いを叶える力があるとされているよ。サンスクリット語ではチンターマニ。」


「チンターマニ。」


「ちんたーまに。」


 俺と大島の馬鹿みたいなオウム返しに、引き気味の山里さん。

 …いや、これは仕方が無いでしょう!

 だってチンターマニだぞ、チンターマニ!!


「…ちなみに『チンタ』が『思考』、『マニ』が『宝珠』って意味らしいよ。」


「チベット仏教には『マニ車』って仏具があるんだけど、知ってる?経典が入った回転式の仏具で、回した数だけお経を読んだのと同じ功徳が得られるとされている。その『マニ』も同じ『宝珠』って意味なんだ。」


「…妙に詳しいですね。」


「祖母が熱心な仏教徒だったんでね。…だから正直、このダンジョンは恐れ多いよ。」


 おばあちゃんっ子だったらしい。

 うん、実に山里さんっぽいな。

 …だから仏像ぶん殴る度に微妙な顔してたのか。


「…マニ車…マニシャ…ああっ!そうか!」


 何やらブツブツ言っていた大島が突然大声を上げた。


「何だよ急に、どうしたんだ?」


「…ああいえ、長年の疑問が今解けたんでつい…。」


 大島は「本当にどうでもいい事なんですけど」と前置きして語りだした。


「…昔やってたゲームに『ぎんのマニシャ』っていうアイテムがありまして…当時小学生だった俺は、この『マニシャ』が何なのか分からなかったんですよ。残念ながらアイテム画像も無かったもんで。…で、名前の響きから『マニキュア』とか『アイシャドウ』みたいな化粧品の類だと勝手に思い込んでいまして…いやぁ、まさか『マニ車』だったとは…長年の勘違いが解消されました。」


 …何だこの話。

 山里さんのためになるウンチクと真逆の、何のためにもならん個人的な勘違いの話…。


「ああ、あるよねそういう勘違い。僕も『ブロードソード』って『銅の剣』の事だと思ってたもん。正しくは『幅広の剣』って意味だったんだけどね。」

 

 …乗っかるのかよ、優しいな山里さん!




 へ_\○ へ_\○ へ_\○ へ_\○ へ_\○




 休憩を終えた俺達は攻略を再開した…のだが。


「…おかしい。敵が全然出なくなったぞ…?」


「…あ!夢野先輩、アレ見て下さい!」


 そう言って大島の指差す先には──


「…あれ?あれって…天井か?」


 塔の最上部と思われる部分は広々とした空間で、まるで屋根裏部屋といった様相だ。

 六角形の天井には不気味な文字が書かれた札がビッシリと貼られている以外、特に変わった所は──


「…って、いやいや!この天井が怪しすぎるだろ!」


「あからさまにヤバそうだよね…まるで何かを封印したような…。」


 山里さんも訝しげな表情で天井を見つめている。

 封印…封印か。

 …まぁ、ここのダンジョンなら十中八九──



 …ガコン。



「…何スか、今の音…?」


 …あ、大島も聞こえた?

 …そうか、じゃあ俺の空耳じゃあ無いんだなぁ…。



 …ゴゴゴゴゴ…。



「…ゆ、揺れてる…っていうか、天井っ!開いてきてるよっ!?」


 うわっマジだっ!?

 六角形の天井が、まるでカメラのシャッターみたいに回転しながら開いていくっ!?

 封印は!?ねぇ封印はどうしたのよ!?


 

 …ズルッ…ズルズルッ…。


 

 …お、蕎麦かい?粋だねぇ…

 …んなワケ無ぇか。


 ポッカリと開いた天井の大穴から、何かが這い出てくる…!


 …長い黒髪が、穴から垂れ下がる。

 その髪を伝うように這い出た白い腕が、穴の縁を掴んだ。


 …大穴から姿を現したのは、逆さ吊りの様な体勢の…巨大な女だった。



『Dungeon Boss【サザエオニ】と接敵しました。戦闘を開始します。』



「…あれっ!?観音はっ!?」


 予想してたボスと全然違うっ!

 てっきり千手観音とかがボスだと思ってたのに!


「…まさか、ここが栄螺堂だからってサザエオニ!?え、今までの観音様達は何だったの!?」


 山里さんもそう思いますよね!?

 良かった…俺がおかしいのかと思ったぜ。


「よく分かんないんですけど…あの地雷系の馬鹿デカい女がボスってコトでいいんですか?」


 大島に言われて改めて良く見れば…うん、確かに馬鹿デカい。

 それに…地雷系?かは知らんけど、なんとも妖艶な表情…って、逆さで気付かなかったけど全裸じゃね?


 巨大痴女じゃねぇか。


「栄螺鬼…確か美女に化けて人間を襲うんだっけ?…和歌山の方では、男性の睾丸を食いちぎる伝承があったような…。」


「「!?」」


 な…なんだよソレ…恐ろしすぎるだろ…!!

 大島も相当ショックだったらしく、顔を青くして小声で「俺のチンターマニ…」とか呟いている。


 【サザエオニ】Lv.108


 レベルも桁違いに高い…!

 …こりゃあ真面目にやらないと不味いかもしれんな。


『…あな口惜しや…。』


 …喋った!

 …いや、今までのモンスター達も何か喋ってはいたけど…意味がある言葉は初だな。


『…いと長き時ゐ閉ぢられたるは恨めしき事なりけり…。』


 …え~、「長い時間封じられたのは恨めしい事だ。」…的な感じかな?


『…この借りは、いまさらお前たちが宝を喰ひて晴らさむとぞ思ふ…。』


 …。


 …「この借りは、お前たちの()を喰らって晴らすとしよう。」…。




 …男の尊厳をかけた戦いが、今始まろうとしている…!!

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