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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
一章

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50/220

失敗勇者と索敵

 ふむ、人形の支配権は取られてしまいましたか……まあ、問題は無いでしょう。あの豚との契約は支配して変質させる所まででしたから、これであの契約は終わりですね……後で報酬を取りに行かなければ。

 そして、やはりあの者が今代の勇者であることは今回の事で確定しましたね。パスを繋いだおかげで表層ではありますがあの者が考えていることがわかりましたし、あの約束もはたせそうですね。

 さてさて、こちらも急いで準備をしないと対応が間に合わなくなってしまいそうですが、最悪はこれを使えば問題ないでしょう。


 薄暗い森の中で悪魔は手にピンク色の四角い物体を持っていた。

 この世界の物が見ても何か全く分からない物なのだが、勇者に見せれば確実に興味を引き話を聞かせることが出来るものだ。


 あの者の未来予測通りであればこれを使う事になるでしょうが、はてさて説得はうまくいきますかね……まあ、説得する所までが契約であり出来なくても問題は無いのですが、どのような結論を出すか興味はありますね。

 さてそれではおもてなしの為の準備をしなければ。


 そう言って悪魔は森の中に消えて行った。






 床に落ちたのは鎧だけではなく、鎧を着せていたマネキンのような物までスパッと切れていた。

 そして剣先は石畳の床まで到達しており、数センチ程地面に刺さっていた。


 慌てて剣を戻して刃の状態を確認してみたが、全く刃毀れすらしていないどころか傷一つ付いていなかった。

 

「無駄に凄い切れ味だなこれ……大丈夫なのか? 」


「……ふむ。シクラ様、恐らくその剣にかけられているものは切断と頑強の二つかもしれません」


「二つも付いているんですか? 」


「恐らくは。切断はそのままの意味で切れ味を上げる効果があり、頑強はその物が破損しにくくなるというものです。見てください、鎧だけならまだしも床まで切断されておりますので恐らくは。頑強は、今の斬撃で剣自体が刃毀れ一つありません。それに、前勇者様が元の持ち主である悪魔と戦闘した際にも、際にも全くの無傷でした」


 ふむふむ、それならかなり有効な武器なのかな?

 でもこの切れ味が普通だと、戦闘で難儀する可能性もあるのかな? 一応確認しておこう。


「ヒエン卿、この特殊効果って切ったりすることって出来るんですか? 」


「可能のはずです。その特殊効果はオドを使用して発生しておりますので、シクラ様がオドの調整をすれば大丈夫なはずです。どちらに使用しているオドを減少させるかは、シクラ様が持つ魔剣にそのように意識を向ければ可能です」


 少し貯めしに切れ味を最低にし頑強は強めにかけ床に剣を振りかざすと、キィーンと甲高い音が響き渡った。

 念のため弱めに振るったけど、剣の刃はつぶれた様子は見えない。


「少し練習が必要ですが、使い勝手は良さそうですね。ヒエン卿、この剣にします」


「わかりました。それではそのように手配させていただきますので、そのままお持ちください」


 これで悪魔と相対する用の装備は入手することが出来た……本当は借りるだけでも良かったんだけど、くれるのであればありがたく貰っておこう。


 


 部屋から出る前に新しく手に入れた装備に着替えてヒエンさんと共に部屋から出ると、一瞬兵士に身構えられたがヒエンさんが押さえてくれたので問題なかったが、アネモニが俺の装備をなめまわすように見た後興奮しながら絶賛してくれた。

 

 ……まあ、その絶賛の内容を訳すと、「シクラ様良いな、そんな高価な装備貰って! 」みたいな内容だったので適当に相槌を打っておいた。


 装備色々物色していたから思ったより時間が経ってしまい急ぎ部屋に戻ると、既にアイリス達が食事の準備を整えて俺を待っていた。 

 部屋にはミュラー侯爵家で別れたカトレア達も戻って来ていたようで、俺の装備を見て一瞬驚いていたが直ぐに気を取り直してすまし顔をする。

 そして、何故か全員分の食事が用意されていた。

 

 アイリスに話を聞くと。


「流石に私だけシクラ様とお食事をするのはあれですので、他の皆も一緒にと思いまして……ダメでしょうか?」

 

 久しぶりに侍女としてのしおらしいアイリスに少し可愛いと思ったが、他の子もいるので表情には出さないように頑張り、「大丈夫だ」と何故か偉そうに許可を出してしまった。


 アイリス達俺の身の回りの世話をしてくれている子達は、今まで少し距離があったような気がしていたが、今回のように和気あいあいと食事が出来て……少しうれしかった。




 楽しい食事の時間はあっという間に過ぎ、侍女達皆に見送られてアイリスと共に白虎の人達と合流する事にした。

 リリーが「またアイリスと! 」とおかんむりだったので、後で何か手を打っておかないといけないな。


 教会へ着くころには、既に日は落ち、街灯の光がほとんど誰も歩いていない道を寂しく照らしていた。

 遠くに城郭が赤い光に照らされて浮かび上がり、時折攻撃魔法だろうか明るく光っている。

 皆が戦っている時にほっこりしていたことを少し反省しつつ、教会へと急ぎ向かった。


 流石に前回フル装備で教会を歩いて衛兵の人達に注意されたので、二人とも街人風の服装で装備はアイリスのアイテムボックスに収納してもらっている。


 入り口の衛兵の人に白虎の人達がどこに居るか教えてもらい、白虎の人達と合流すべくそこに向かって行く。


 白虎の人達は、俺が初めて教会に来た時に向かった裏口の方から入った部屋に居るとの事だった。


「シクラさん、アイリス、皆はこっちで待っています」


 裏口に回るとそこにはスターが立っていて、俺達を見つけると白虎の所まで案内してくれた。

 そして、目的の部屋にたどり着くとノックしてから扉を開ける。


「シクラさんとアイリスと連れてきました 」


「おう! スターご苦労さん。ボウズ装備の方は何とかなったのか? 」 

 

「はい。なんか結構凄い装備を貰ってきました。これで悪魔との戦いは何とかなると思います」


 中に入ると白虎の皆は既に完全武装の状態でそれぞれ休憩していた。

 そしてソファーには、衛兵本部で別れたシュレルさんが一人浮いた感じで座っている。


 全員完全武装でその装備もそこらの冒険者とは一味違う雰囲気を漂わせいるので、流石最上位の白金クラスの冒険者だと思わせる威圧感と言うか、迫力が漂ってきている……シュレルさんはこの状況下で平然としているがかなり浮いている。


「ほう……それは楽しみだな。それはさておき、この後はどうするんだ? 」

 

「一応あの悪魔の魔力は覚えましたので、俺のソナーの範囲に入ればわかると思います。ただ、あれから時間もたっているので最後に居た所から距離を取られてしまっていると追跡が難しいと思うんですけど、何かいい手立てはありませんかね? 」

 

 ベロニカさんを助ける際にあの悪魔の反応は覚えたのだが、流石に数時間経過してしまっているから流石にあの近辺には既に居ないだろう。

 それに、俺のソナーであれば数キロ程度なら探知は出来るが、あの魔法は相手にも察知されるので逃走される恐れも高い。


「それならうってつけの子がいるわよ。ね、スターちゃん。あなたなら悪魔が居た場所が分かれば見つけることができるんじゃない? 」


「……出来ない事は無いと思うけど、僕は今冒険者白虎の一員じゃなくて衛兵なんだけど 」


「じゃあ許可さえもらえば良いわけよね? ハルあれをスターちゃんに渡して 」


「はいよ。これだぜスター 」


 トラオウさんの隣でくつろいでいたミモザさんがスターに声をかける。

 当のスターは可愛らしい手で耳の後ろの当たりをぽりぽり掻きながら答えるが、ハルさんが渡してきたものを見てため息を付いた。

 


「……はぁ。どれだけ手回しが良いんですか 」


 ハルさんが渡したものは、騎士団長のヒューズさんと衛兵団長が書いた一枚の書類だった。

 内容は以下の通り。


 スター=シクラは、教会警備の任を解き、悪魔討伐に支援の為白金冒険者白虎と共に索敵の任務を与える。

 作戦任務中は、同白虎及びトウマ=シクラの指示に従う。

 戦時特例として、スター=シクラは衛士部長に昇進させる。

 装備や必要な資材は衛兵本部及び騎士団からの調達を許可する。

 任期は当該悪魔の討伐及び撃退までとする。



 いつの間に貰って来ていたのか、スターに対しての命令書がそこにはあった。


「これでまた一緒に行けるわね! 」

「ま、これも俺達と一緒に居た弊害だな。諦めてがんばれ」

「今回は前回の様な失態は起こさないように万全の準備をしてあるから、スターは索敵にだけ集中して居れば大丈夫よ。もしもの場合はハルを盾にしなさい 」

「ちょ、アルル! ……まあいいけどさ 」

「久々に白虎が全員揃うんだから心配することないだろうが、一応この装備だけはしっかりしておけよ」


 白虎の皆はスターと再び冒険が出来ることを喜んでいるようで、歓迎の言葉を述べている。

 スターも慣れた様子であきらめ顔でトラオウさんから装備を受け取っていた……あれ?


「トラオウさん、それだと装備のサイズが合わないんじゃないですか? 」


 トラオウさんが渡した装備は、スターにはどうやってもサイズが合わないような成人男性が付ける様な装備だ。

 今のままでは、胸当ては何とかはまりそうだけどずんぐりむっくりとした体系では他の部位の装備ができないと思う。


「そうか、ボウズは知らなかったんだな。スターみせてやれよ 」


「相変わらずいきなりですよ。流石に少し待ってください 」


 そう言うと今着ている衛兵用の装備を取り外し、下に着ていた服だけになった。

 そして「いきます」というと、小さく丸みを帯びていた体が急激に変化していった。


 元々全身をふわふわの毛でおおわれていたものが少しずつ薄くなっていき、ずんぐりむっくりした体系も細身になり身長も俺と同じくらいまで大きくなっていた。

 なんとなく、昔に見た狼男の映画の逆再生を見ている気分だった。


「こんな感じです 」


「……完全に別人だねこれは 」


 今俺の目の前に居るのは、年齢は十七、八歳位に見える普通の……いや、けっこうなイケメンの青年だ。

 身長は最終的には俺よりも高く、全体的に細身だがそこそこ筋肉は付いていそうな体系をしている。

 全身にあった体毛は腕や足などの一部は残っていて、トラオウさん達の人型の形態にそっくりだ。

 尻尾はトラオウさん達みたいに長くないので、普通に服を着て体毛を隠せば人種と全く見わけが付かない。


「な、びっくすりすだろ? こいつ元が元だけにここまで変わるから誰も同一人物とはわからないんだぜ」


「あら、また大きくなったわね! 体もしっかり鍛えている様子みたいね。あんまり女の子をたぶらかしてはダメよ 」


「今の状態でくっつくなって。と言うか、たぶらかしたりなんてしないよ。っく、離れてくれよ 」


 スターが変身すると、気配を消しながら近づいていたミモザさんがスターに引っ付いたり、腕を突っついたりしている。

 それを周の人達が眺めているさまは、傍から見ると思春期の息子を持つ仲良し家族の様に見える。



「そろそろいいですか? 」


「そうですよ、ミモザはいいかげん離れてください。トラオウ達も仕事の話があるんじゃないんですか! 」


 しばらくその様子を眺めていたが、いつまでたっても終わりそうになかったので話しかけると、これ幸いとスターが身をよじりミモザさんから抜け出し、トラオウさんに話を進めるように促した。


「ま、そうだな。そそそろ仕事の話をしようか。ボウズは悪魔が最後に居た地点はわかっているんだよな? 」


「わかりますよ。ただ、既に移動してしまっている可能性が高いですが」


「その場所さえわかれば恐らく大丈夫だ。悪魔達の性格を考えたらそれ程移動してはいないだろうし、移動していたとしてもよっぽど離れた場所でなければスターが探すことが出来る 」


「スターの索敵範囲は俺達の比じゃないし、下手したら魔法よりも索敵範囲は広いかもな 」


 そこまで索敵範囲が広いのであれば、ここからでもわかるのではないかと思っていたが、それについては理由があった。


「ただし、広範囲の索敵には対象の魔力反応がしっかりと分からないといけないらしい 」


 なるほど、匂いとかでの追跡じゃなくて魔力の反応を探すのか……ラノベとかで良くある索敵魔法って感じで便利だな。


「でもそうなると、悪魔なんて特殊な魔力なんて直接その場所に行かなくてもわかりそうなもんですけど 」


「それはですね。ある程度の索敵なら感覚でわかるのですけど、距離が離れていると特徴を確認しないと広範囲ではわからないんですよ。植物とかですら魔力はありますから、特徴が分からないと探せないんですよ 」


 そう言えばどこかで土や植物ですら魔力がると言う事を聞いた気がするな。

 でも、特徴が分かるだけで魔法よりも広範囲の索敵が出来るとは、なかなか稀有な才能があるようだ。


「ま、そうゆうこった。悪魔の索敵にはスターが必ず必要だし、スターさえ居れば多少時間が経ったって悪魔の捜索何て簡単なんだよ 」


「そうみたいですね。白虎の皆さんは準備は……万端の様なので自分達も準備出来たら出発しましょう 」


 白虎の人達はこの部屋に入った時点でフル装備で待機していたので、後は俺とアイリス、そしてスターが準備を整えたら出発と言うところで声を掛けてくる人が居た。


「シクラ様これをお持ちください。中にはポーションなど使えそうなものが入れてあります 」


「ありがとうございます。大切に使わせていただきますね 」


「その道具袋はシクラ様の旅が終わるまでお貸ししたしますので、ご活用して頂ければと思います 」


「いいんですか? これって結構高価なものだと思いますけど 」


「ええ、問題ありません。勇者様を支援するのは教会として当然の事ですので 」


「わかりました。あずからせていただきますね 」


 俺の返答にシュレルさんは満足そうに頷き、俺達は準備を整え悪魔の捜索へ向かうのだった。






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