表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/220

失敗勇者と決戦準備

「これであの女も終わりだろう。流石のシュレルでも、あの悪魔の支配の呪縛から解放することはできまい。」

 そう言うと、男は机に置いていた真っ赤な酒を一気に煽る。

「俺に立てついたクソ女には逃げられたが、俺をコケにしたクソ共はまだまだ嫌がるからそいつらにあの女の鬱憤もぶつけてやろう。」

 下品な笑みを浮かべる男は、見た目は既に老人と言っていい年齢だろうが、その眼力だけは衰えていない様だ。

 顔は醜く肥え太り、男が着ているガウンの様な物の上からでもわかる程お腹が醜く膨れ上がっている。

「おいさっさと注がないか! 」

 男が怒鳴り散らすと、側にいた男と不釣り合いな美女が空のグラスに酒注ぐ、微かに手が震えておりそのせいで少しではあるが男の手に酒がかかってしまう。

「くそが! ふざけてんじゃねぇぞ! 」

 女は男に酒がかかってしまったことを謝るが、男の怒りは収まらず脂ののった手で叩きつけた。

 女は抵抗する事も無く倒れ込み、下卑た笑みを浮かべた男は女性の腕を掴み引きずるように隣の部屋へ引きずり込みながら「下賤女には躾が必要だな」とおぞましい言葉を残していった。

  



 とりあえずベロニカさんが床に倒れないようには出来たけど、流石に急に倒れて来たので支えるのが難しく座り込んだ状態になってしまっているが……座り込んだ状態だと見えてはいけない部分が見えそうで、は目のやり場に困りかなりまずい状態になっている。

 ただでさえ女性と縁がなかった俺が今の状況を冷静に対処できるはずもなく、顔を赤くしながらベロニカさんの方を見ないように気を付けながら二人の方へ振り返ると……何故かこちらを見ながらニヤニヤコジーラさん。


 シュレルさんは後ろを向いてこちらを見ないようにして、恐らくベロニカさんが今の様な状態になることが分かっていたのだろう。

 そしてコジーラさんは何かよくわからないジェスチャーをしていることに気が付く。

 何か両手を握っては開くを繰り返し、何かをもんでいる様か仕草をしていることが分かり、首を傾げながらその仕草をまねをする……なんだかよくわからないけどすべすべしていて柔らかく気持ちのいい感触がする。



 あまり見てはいけないとは思っていたがその感触が何なのかが気になり視線をそこへ向けると……ベロニカさんを抱き留める際に両腕を交差させるように抱きしめ……掌にはベロニカさんの大きな二つの膨らみをもんでいた。


「え? 」


 自分が何をしているのかが理解できずに数十秒ほど思考が硬直する。


「うわ! っと、あ、あの、コジーラさん、シュレルさん。ど、どうしたら良いんですか! 」


 驚いて手を離してしまい、ベロニカさんが地面に落ちてしまいそうになってしまったため、今度はおなかの当たりに手を伸ばして支えながら二人に救援を求めた。

 ベロニカさんのおなかはすべすべぷにぷにで……ってそんなこと気にしてはダメだと思いつつも、今手を離すと石畳みに転がり落ちてしまうのでいろんなことを脳裏から追い出すのが大変だ。


「シクラ様落ち着いてください。そちらの隅にベットがございます。そこに寝かせてあげれば大丈夫です。」


 シュレルさんの言う方辺りを見回すと、実はすぐ横にベット様な物……少し床から高さがあり、一応布団が敷いてある事に気が付いた。

 抱き上げると色々見えてしまいそうなのだけど、このままでいる訳にも胃が無いからとりあえず背中と太ももの下あたりに手を当てて目を閉じてゆっくりとベットへベロニカさんを寝かせ布団をかける。


「……色々ごめんなさい。」

 

 不可抗力と言えでも、意識のない女性の色々な所に触ってしまったことに罪悪感に苛まれ、形上ではあるが謝ってしまった……まあ、意識がもどったらしっかりと謝らないといけないけどね。


 


 ま、とりあえず、ベロニカさんは悪魔から解放されて元に人間の状態に戻れたことだし、ここはシュレルさんとコジーラさんに任せよう。


「シュレルさん、コジーラさん。ベロニカさんの事をお任せしても良いですか? 」


「ええ、問題ありません。シクラ様、ここから出られるのであれば、私と一緒に来ていたシスターがしばらくしたら戻ってくると思いますので、その者にベロニカさんが着られる様な物を持ってきていただくようお伝え願えますか? まだ来ていない様であれば、入り口の騎士団員に伝言でもかまいませんので。」


「わかりました、伝えておきますね。……っで、コジーラさん。何か言いたそうですが何でしょうか? 」


 振り向いた時から気が付いてはいたが、コジーラさんものすごーくにやにやして嫌な感じだけど、流石に放置していい物かと思い声をかけたのだけど。


「い、いえ。シクラ様の行動が、いかにも女性経験がない男性そのものでしたので、ククク……し、失礼、流石にちょっと驚きまして……クフ。」


「とりあえず、ベロニカさんをお願いしますね! と言うかコジーラさんは今の状況でここに残って大丈夫なんですか? 」


「問題ありませんよ。指揮はヒューズがとっているでしょうし、私は今は回復の為の休憩中ですので。っぷ」


 何がそんなにツボに入ったのかわからないけど、最後の笑い顔が物凄く不快だったが、このマッドマジシャンを相手にするのもめんどくさいので放置でいいや。


 ため息を付いて、シュレルさんにだけあいさつをしてコジーラさんを無視して駆け足で廊下を駆け抜ける。




「コジーラ団長、流石にシクラ様をからかい過ぎでは? 」


「少しやり過ぎな感じはありましたが、あれで切り替えることが出来るでしょう。シクラ様が女性慣れしていない事は前々からわかっていましたから、今回ベロニカを色々触ってしまっていましたし、意識のないベロニカにすら謝っていましたのでこの後の事を考えて、今は私に呆れて色々切り替えてもらわないと危険ですからね。」


 シクラがもし女性慣れしているような人であれば今回のようにてんぱったりはせず、ラッキー! 役得だね! とか考えただろうが、日ごろのシクラの状況や先ほどの行動を鑑みると女性とそう言った行為をしたことが無いのが丸わかりである。

 これが平時であれば問題ないのだが、今は戦闘中である為わざと自分を呆れさせてベロニカに対しての意識を切り離させるための行動だった。


「それはわかりますが、流石にシクラ様に悪印象が残ってしまうと今後色々面倒なのではないでしょうか? 」


「恐らく大丈夫でしょう。前にお会いした際に私が変人であるように見せかけましたし、それに最悪嫌われてしまってもベロニカが復帰すれば問題は無くなるでしょう。」


「相変わらずですね。わざと騎士団長にならない為に道化を演じ続け、それを騎士団長になってからも続けているのですから。」


 シュレルはやれやれと言った感じだが、コジーラはまったく気にしていない。


「今の魔導騎士団に私の他に適任者がいないので仕方なくやってはいますが……騎士団長と言うガラではないですし器でもないですから。それに、ベロニカの様な優秀な者達も最近は多いですから、部下たちを育てて早く辞退したいものですね。」


「まあその辺りは聖職者である私が口出しするところではありませんが、当時と比べると色々変わりましたからね。」


「そうですな。ただ、そのおかげで優秀な部下たちを拾い上げることが出来るようになり、騎士団が強化され、副騎士団長まで助けて頂き……勇者様達には頭が上がりませんな。」


「そうですね。今回もシクラ様に頼りっぱなしですし、何かお返し出来ることがあればよいのですが。」


 シュレルとコジーラの本心を気兼ねなく話し合える二人の会話は、服を届けに来たシスターの足音が聞こえてくるまで続いていた。

 



 

 一方通路を駆け抜けていったシクラは、アイリス達と合流するために薄暗い通路を駆け抜け、騎士団員に事情を説明して扉を抜ける。


「トラオウさん、アルルさん、アイリス。急いでここから出るよ! 」


「シクラ様どうかされましたか? もしや、ベロニカに何か! 」


「ベロニカさんは元に戻ったんだけど……取り合えず時間が無いから行きながら話すよ。トラオウさん達もそれでいいですか? 」


「……構わないが、何処へ向かうんだ? 」


「それも行きながら話します……目的は悪魔退治です。急がないと追いきれなくなってしまうかもしれません。」


「っ! わかった急ごう。」


 俺達は急いで地下牢を飛び出し、衛兵本部玄関の騎士にシュレルさんの伝言を伝えてる。

 衛兵本部から少し離れ、少し裏道に入り周りに人が居ない事を確認してこれからの事を話をする。

 

「時間が無いので簡単に説明します。ベロニカさんを支配していた悪魔はこの街の外で潜伏しています。さっきベロニカさんの支配を解除した時に確認しましたが、恐らくまだそれほど遠くに入っていないでしょう。 」


「なるほどな、それでその悪魔を今から討伐に向かおうって事か。ボウズ、その悪魔ってさっき見たマフォルスとか言うネームドか? 」


「そうです。しかし、さっき俺が支配を解除した際に俺の魔力を送り込んで相手の位置の確認は出来たので、早くいけばこの混乱自体が解決できると思うんです。」

 

 俺が感知した悪魔の居場所は、王城から少し離れた東側の山の中。

 なぜそんな所に居たのかは不明だが、捜索来るには木々が生い茂っており早めに探さないと再び逃げられてしまう可能性がある。

 

「それはわかるんだが、ボウズお前獲物(武器)もなしにどうやって戦うんだ? 」


「……あ。ま、魔法で! 」


「魔法でも戦えるとは思うがさっき支配を解いたばかりだろう、魔力はどれくらい残っているんだ? 」


「……半分くらい」


「お前は……前回下級の悪魔討伐ですらかなりの魔力を使ったのを忘れたのか? まあ、今回は俺達も完全武装だが、それでもボウズが完全な状態じゃないとネームドを倒すのは難しいと思うぜ。」


「そうね。それに、どれだけ急いだとしてもあの悪魔の移動速度からすると、既にかなり移動しているんじゃないかしら? まあ、魔力の痕跡が分かれば追跡も楽でしょうけど、捜索でも魔力を使うのだからその辺りは万全にしておいた方が良いわよ。」


 ……ごもっともです……はい。

 白虎の二人から呆れた様な顔をされ少し落ち着いた。

 流石にベロニカさんがあんな酷い姿にされて少し頭に血が上っていたようだ。

 

「あの悪魔を討伐したら自体はある程度収まるだろけど、そもそも下級ですら等級的には金以上でフル装備必須団だから焦ったらダメ。」


「そうですね。そうなると、俺も代わりの武器がいりそうですが……何もないんですけど。」


「それでしたら、一度王城へ戻りませんか? 悪魔の居場所の事も問題ありますし、それを倒す武器等を手配して頂けないか確認だけでもした方がよろしいのではないでしょうか。それに、ネームド相手であれば私も装備を取りに行きたいと思いますし。」


「あー嬢ちゃんの装備か……見た目はあれだが、性能は抜群だからな。」


「そうね、見た目はあれだけど……あれば心強いわ。」


「? 良くわからないけど、とりあえず王城へ戻ってアイリスは装備を持ってきて、俺は何か貸してもらえないか確認してくるよ。」


 今の現状でネームドを相手にするには心許ない為、一旦装備を整えるために王城へ向かう事にした。

 二人の見た目が……と言われて少しアイリスがご機嫌斜のように見える……どんなものなのか少し気になるけど後で見れるからいいか。


 白虎の二人は流石に王城へは入れないから、スターさん達の様子を見に行くとの事だったので装備が整え教会で再び合流することになった。

 ついでに、戦闘が始まってからかなりの時間が経過しているのに殆ど食事をしていないので、軽く食事を済ませておくことにして二人と別れた。



 アイリスと二人で閑散としている道を再び走り、土煙を上げながら王城へ向かうと入り口の門番の人に不審者か魔物かと思ったとやんわりではあるが怒られてしまった。


 

「アイリスは自分の装備を取りに行くんだったよね。俺はその間に国王様か誰かに武器などが借りれないか確認してくるよ。」


「わかりました。国王様でも大丈夫かと思いますが、ヒエン様や他の大臣などでも話は通じるかと思いますので、アネモニやダイアンに指示しておけば問題ないかと思います。シクラ様はその間に何か食事をされた方がよろしいかと。」


「うーん、そうだね。じゃあ一旦部屋に戻って二人のどちらかに伝えておくよ。アイリスも準備が終わったら部屋に来て一緒に食事をとろうか。」


「はい! 急いで行ってまいります! 」


「そんなに急いで……もう行ったよ。」

 

 一緒に食事をしようかと言っただけなのに、物凄いスピードで廊下を走って行ってしまった。

 急いで準備しても食事をそんなに急いで準備出来ないだろうに……まあいっか。


 そのまま俺は部屋に向かったが、誰も居なかった。

 しかし、俺が部屋に入った物音に気が付いたのか、扉をノックしてアネモニが入って来た。


「失礼します。シクラ様お帰りなさいませ。」


「ただいまアネモニ。いきなりで申し訳ないんだけどちょっと頼みごとがあるんだけど……」


 俺はアネモニに経緯を説明すると、「手配してまいります。食事の準備はリリーにさせますので、シクラ様はゆっくりなさっていてください。」と言って部屋を出て行った。


「流石に疲れたな。」


 そう一人ごとを言いながらソファーに腰を掛けたのだが……疲労が蓄積していたのか、俺の瞼が下がり意識が遠のいて行った。

いつも読んで頂きありがとうございます。

もう少し、もう少しと考えているとなかなか終わりにたどり着けない転々です。

後数話でこの章が終われる……予定ですのでお付き合いよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ