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英雄達の消えた街・コラボ編  作者: 四神夏菊
本編・アルダートシナリオ 対プリンセス編
67/155

気遣いの授受 1

仮住まいでの夜を過ごし、夜が明けだした頃の事。暗い夜の闇が包み込んでいた地区は、徐々に太陽の光によって色を取り戻しつつあった。彼等の住まう東屋に等しい家にも、所々にある隙間から日の光が注ぎだした。





「……んっ……… ……朝………か。」

家の四隅を支える支柱に背を預け寝ていたストレンジャーは、不意に優しく降り注いだ日の光に目を覚ました。丁度彼の寝ていた位置と太陽の位置に壁の隙間が会った様子で、不意ではあったが少しずつ増えていく光に彼はゆっくりと立ち上がった。

その後家の入口に近かったこともあり、静かに外へと出て行った。



チュンチュンチュン………



「………」

彼が一人外へと出て行くと、何処からともなく雀と思われる鳥の鳴き声が朝日と共に聞こえてきた。住まいの外は造形された街並みが広がっているが、今は薄い靄がかかっており何処か幻想的な空間が広がっていた。外の風景を見終えると、彼はその場で深呼吸をし辺りの空気を自身の体内へと送り込んだ。

ゆっくりと彼の肺に冷たい空気が満たされると、彼はそのままゆっくりと吐き出し少しぼやける意識を覚まそうとしていた。自然と両手が動作につられて動くが、左程気にしない様子で彼は行っていた。

『……やっぱり、どの地区でも朝は静かだな。朝焼けの時間が、一番この街で平和な時なのかもしれない……』

その後深呼吸を終えた彼は、争いの絶えない街で唯一静かな時間が今なのだろうと悟った。どの地区でも流星石を使った戦いが絶えず行われており、そのたびに傷つく者達も少なくは無かった。場合によっては命を落とす物もおり、彼はアルダートと共に今の集団に出会う前にたくさんの人達の姿を見ていた。そのたびに立ち止まるアルダートと共に相手を気遣い、何も出来ないが常に優しい心を持っていよう。彼等はそう心に決め、今までずっと行動を共にしてきていた。

改めてその行動を取る事に不思議に思う彼であったが、その行動を行うようになったのは隣に常に居た狐の存在である事は解っていた。何かを感じ自身を頼ってくるアルダートに、最初は彼自身も与える事だけしか出来ないと思っていた。だが実際には違い、アルダートの意志と優しさに彼も助けられているのだ。

静かな空間で思った事に、ストレンジャーは軽く笑みを浮かべていた。

『……アルダートが俺を頼る様に、俺もアルダートを頼ってるのかもな。不思議だな……前にも、そんな事をしていたような気がする。』

我ながら少し可笑しいと思いながらも、彼はゆっくりと翼を広げ空へと飛び出した。

朝靄は地区の低い位置にしか存在せず、彼が空へと飛び出すと晴れ渡った空間が広がっていた。朝日がすでに靄を消したのか、それとも風が靄を運んで行ってしまったのか。どちらにせよ視界が晴れている事を知り、彼は空での散歩を行っていた。

「風が気持ち良いな……… ……でも、この地区には生きている存在が居ない。この地区の管理課は、どんな気持ちでここを管理してるんだろうな………」

その後飛ぶたびにやってくる風を身体に感じつつ、彼はこの地区で行動する存在を探していた。だが彼等の居るこの地区には生きている存在は誰もおらず、静まり返った空間と造り上げられた人工物しかなかった。植物さえも造られた物と言う事と、その地区を管理する者の心境を彼は知ろうとしていた。

今まで彼が行動してきた地区には、必ず管理課の存在が誰か一人その場所を監視していた。アルダートと初めて出会った地区にはネコがおり、次に出かけた場所にはクラウが居た。そしてそのたびに不思議と感じる雰囲気があり、どの地区にも管理課の想いがある事を彼は知っていた。

その切欠を得たのは以前クラウが管理していた宮殿内の書庫であり、その地区に対する思いが管理課にはあった。だからこそこの地区にも何か存在すると思い、彼は何故造形された街がこの場所にあるのかを考えていたのだ。

『……でも、おそらく根本的な所は彼等の言う『プリンセス』にあるんだろうな。造形を好むと言う事は、自然を好まないと言う事……… ……好まない?』

考えながら辺りを見渡していたストレンジャーは、不意に自分の中に浮かんだ考えに疑問を抱いた。改めて良く考えてみようと思い近くに立っていた電柱に降り立つと、彼は改めて考え出した。

『好まない理由は………何だ? 俺がもし、自然を好まないとしたら……自然を嫌う何かがあるから、かもしれない。』

あやふやな考えを正そうとするも、彼には少し難しい事なのかもしれない。それはミークの心配していた『記憶』の事であり、記憶が内分その年数分の知識が失われていると言う事だ。即座に手に入れた知識をフルに活用出来たとしても、何かを得るために払う年数分の知識が、彼には無い。

だからこそ、はっきりとした答えが中々導き出せないのだ。

『……いや、あまり考えても仕方ないな。俺は彼等の言うプリンセスではない。……直接知る機会があったのなら、その時に知れば良いか。』

とにかく考えを続けるわけにもいかなくなり、彼は一旦考える事を止めた。正確な答は当事者にしか解らないため、無駄に理解しようとしても会った事のない相手では理解の使用が無い。そう思い、ストレンジャーは再び辺りを見渡した。

すると、


「……?」

彼の視界に一つの影が映り、彼は良く見ようとその方角へと向いた。彼の見た先には一つの塔が映っており、塔の根本は蜃気楼の様な不確かな幻影が見え隠れしていた。何だろうと思った彼は再び翼を広げ、塔に近づけるだけ近づいてみようと飛んで行った。




不意に見つけた塔の近くへと向かって行くと、彼は一旦羽ばたくを止めた。彼の見た先には確かに塔があったが、その塔の周りには大地が存在しなかったのだ。先ほど幻影に見えていた影は、どうやら日の光と崖の様な場所が影響していた者の様だ。その証拠に、崖の下からは熱の様な冷気の様な不気味な風を吹き出していた。

一旦何処かに降りようと思った彼は、塔から一番近くに位置するそびえ立った岡の上に降り立った。正確に言えば瓦礫の山の上であるが、その頂上は苔むした大地が広がっていた。

『……こんなに、管理課の塔が近くに見えるなんてな。アルダートと会った時は、もっと遠くて細い外見だったのに。……ってことは、管理課の塔のある地区なのか。ここは。』

大地に生えた苔で滑らない様降り立つと、彼は目の前に立っている塔が何か覚えていた。それは初めてアルダートと出会った時に知った街の仕組みに関係していた『管理課の塔』であり、敵の本拠地でもある場所であった。どの地区からも見えるこの塔はとても遠く、こんなに近くで見えるとは彼も思っていなかった様だ。

白みの強い外見に薄い紅色の模様が描かれた塔は、不規則に日の光を入れるための窓と思われる穴が開いていた。彼の居る位置から大分高い場所に入口と思われる大き目のアーチがあり、元々ここには橋があったのだろうかと彼は思った。

飛んでその中に踏み入る事も可能だと彼は思うも、彼はその行動には移ろうとはしなかった。その理由が、彼の居た崖の上にある一つの看板が意味していた。書かれていた文章は、こうだ。



【立ち入りを禁じし者達よ

 街を変えし者達と共に 踏み入る事無く幻想と共に舞台に立て

 

 幻影と天候を退けし者 機械兵の鮮血の裁きを

 その身を鎖に囚われし者 永遠の奴隷に成り堕ちて

 命の灯火を 星に捧げよ】



看板に書かれていた文字は所々書き直された跡があり、看板の裏にはラクガキと思われる暴言の数々が書き記されていた。

「……不思議な詩だな。あえて忠告意外にいろいろ書くのは、この塔の中の事か……… 裏はおそらく、挑んだ存在達の経歴か……… ……?」

警告文と思われる看板に他の言葉が書かれているのを見て、ストレンジャーは不思議な詩だと思い何度か復唱した。その後看板の裏に書かれているラクガキを目にし誰が書いたのかを考え、塔の中に何があるのだろうかと再び思った。綺麗な場所に不思議な詩の意味は、何があるのだろうと。

一通りの散策を終え引き返そうとすると、彼は後ろに居た存在に驚き足を止めた。そこに居たのは、管理課の『茶色い猫』であるネコSだった。

「朝早くにご苦労さんだニャ。もうここにたどり着いたのかニャ。」

「ネコS……… ……何時からそこに。」

「お前さんが降り立って看板を読みだした、ちょっと前くらいだニャ。……でも驚いたニャ、こんなに早く来るとは思わなかったのニャ。」

不意に現れた敵に驚くストレンジャーであったが、相手が戦う気が無い事をアピールしたのを見て身構えるのを止めた。すでに一度打ち負かした相手ではあるが、彼も特殊な管理課の存在である事はストレンジャーも解っていた。何時から居たのかを説明しつつ、ネコはそのまま看板の元へと向かって行った。

手にはバケツに入った液体が入っており、筆を手にし文字をなぞっていた。どうやら彼のお仕事らしい。

「どうニャ。平和の象徴は見つかったかニャ。」

「……いや。お前もクラウも似たような事を言っていたが、俺はここへ来る前にその相手には巡り会えなかった。……この詩には、塔の中での出来事を意味してるのか。」

「そうニャよ。自らの足を使わずに塔へと立ち、力を見せろ。困難に勝てるだけの力を見せても、囚われ敗北したら奴隷となれ。簡単な意味なのニャ。この塔で敗北した存在は、もう地区の中にすら戻れないのニャ。」

少しずつ薄れた文字に色が付けたされる中、ネコは彼に質問をした。出会い別れる前に話した事を覚えているかの確認と、この出来事を終わらせるための切欠となるであろう不思議な話。しかしその相手には出会えなかった事をストレンジャーは話すも、彼が再度なぞっている詩の意味が気になっていた事を告げた。

するとネコはすらすらと意味を告げだし、勝てなければ外へは出られない。それだけの覚悟を持って、この場所に足を踏み入れなければならないと言う事だと説明した。

「戻る事すら、認められないのか………」

「愚かな事だからニャ。プリンセスに楯突く事は、この場所では制裁事ニャ。愚かな輩には、生涯を注いでまで弄ばれるのニャ。……おミャーは、プリンセスに弄ばれるかニャ?」

一歩立ち入れば出られない事を聞き、ストレンジャーは少し不機嫌そうな顔をした。だが事実それで立ち入った者達は何人もおり、そのたびに奴隷に堕ちた事をネコは話した。その後ネコは、君自身は姫に弄ばれる事を望むのかと質問した。

好んで弄ばれる事は望まないのが普通であり、彼はどんな答えをするのかと気になっている様だった。「弄ばれる事は、望まないな……… ……でも、互いに考えを共有出来る相手なのであれば。俺はその場に残っても良い。」

「おや、面白い事を言うのニャな~龍よ。何で残りたいと思うのかニャ?」

「クラウが言っていたからな。姫はずっと寂しい思いをしていて、クラウ自身も一緒に居る事を望んで一緒に居ると。それだけ優しい人なのであれば、俺は一緒に居ても構わない。……もちろん、アルダート達とも一緒に居たいけどな。」

「ん~ 欲張りは行かんニャね。……まぁでもー 龍の考えは確かに聞いたニャ。せっかくだし、プリンセスにお知らせしておいてやるのニャ。」

その後不思議な回答を聞き再度質問し、ネコは彼の考えを聞き届けた。彼の考えが行きついた理由も誰からかを知り、なおかつ自分で決めた事。自由にされるのは嫌だけど、互いに一緒に望んでいるのであれば構わない。条件もその時その時で増えるだろうけれど、居る事自体はどうでも良いと思っている。

ネコはそれを聞き終えると、筆をバケツに入れその場を後にしようとした。すると、


「ぁ、一個だけ老婆心で言ってやるのニャ。」

「?」

不意にネコは振り返り、彼に必要以上の親切心をやると言い出した。たびたび来る不意な事に驚くも、彼はその場で彼の話に耳を傾けた。

「その詩に書かれている『機械兵』とは、ニャーの流星石【機械兵(マシリーン)】の事ニャ。クラウの知り合いなのニャら、おそらく文中の『幻想』も知ってるのニャろ?」

「幻想……クラウ……… ……まさか、クラウが乗っていた【幻想車(ファンタジア)】か……?」

「当たりなのニャッ そこに書かれているのはほとんどが流星石の事。軽く対策を練っておくと、戦いが楽になるのかもしれないのニャよ。大勢だと、こっちも面倒だからニャー」

言いたい事を遠回しに言い終えると、ネコは再び前を向きその場を後にして行った。再びその場から居なくなってしまうと、ストレンジャーは再び看板を目にしその場を後にして行った。


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