彼が目指した光 7
【ゥワァアアアアアアーーー!!!】
撃ち出さた流星石の一撃を受け、豪炎を纏った怪物は叫ぶように声を発した。地響きの如く大地を揺らす雄叫びは気絶していたアシュレー達にも伝わり、朝日が昇りかけていた空を駆け、静かに空間の中へと溶け込んで行った。
軽くボロボロになっていたシップスは足元が軽くふら付くも、しっかりと相手が消滅した事を確認し、その場に崩れた。その後壁にもたれる様に左肩を預けながら空を見上げると、戦いの時まで広がっていた曇天は無く、すっかりと晴れ渡った快晴の空が広がっていた。
「シップス。」
「ん。おう、アシュレー・・・もう良いのか。」
「俺とした事が、お前を助けて気絶何て笑い話にもならねえよ。・・・ってか、お前マジで大丈夫か・・・? ボロボロじゃねえか。」
「ヘヘッ 怪物を撃退するのに、無傷何て無理でしたって訳だよ・・・ ちと疲れたけど、もうちょいすれば立てるから心配するな。」
「お、おう。」
そんな彼の元へと近づいたアシュレーは心配そうに声をかけるも、見た目以上に疲れはあれど、疲労回復には時間が掛からないと告げられていた。
自分が軽く気絶していた間に何があり、どんな死闘を繰り広げていたのかは理解出来ない。だが彼の身に纏っていた服装がボロボロな事も含め、壁に身体を預けないと座っていられない程に疲労している彼を視るのは、初めてだったのだろう。顔は頑張って笑顔を作っている所を視ると、やはり無茶をした事が理解できた。
「おーいっ」
「ぉっ、ソニルス達も無事だったか。お前等は平気か?」
「なんとかね。シップスの頑張りを遠くから視てたけど、それ以上は何も出来なくてさ・・・ ゴメン、マサ。」
「良いって、んな事。全員助かったんだし、それで良し。だろ?」
「う、うんっ」
軽く疲労回復に努めていたシップスの様子を見ていると、アシュレー達の元にソニルスとライトが駆け寄って来た。彼等も同様に怪物相手に戦闘を行っていたものの、途中から離脱していたため、シップスに加担する事が出来なかった。しかし彼の勇士だけはしっかりと見届けており、彼の顔を視てホッとした様子を見せていた。
そんな時だ。
「ニャーッ、ニャッニャッニャッ 無事ではありませんが、怪物を倒してしまいましたニャね。お主等。」
「ぁっ、ネコ!」
彼等の居た場に軽く耳障りな声色が響きだし、壁際に集まっていた彼等の前にネコSがトコトコとやって来た。相手の姿を見たソニルス達は慌てて流星石を出すも、ネコは微動だにせずに彼等の事を視ていた。
「怪物は、もう出てこねえんだろうな。もう一匹とか抜かしたらタダじゃ済まさねえぞ。」
「んーニャ、アレが最初で最後ですニャよ。お主等は時間を止めていた怪物を倒したのニャ。いやー、凄い凄い。」
しかしネコはネコで仕事を済ませた様子を見せており、本当に戦っていたのかどうかさえ解らない、微妙な空気が彼等を包んでいた。
敵対していた怪物は確かに消滅し、街に平和を取り戻す事に成功した。彼等の言う『改革』が無事に行えた証拠であり、身体はボロボロでもしっかりと役目を果たせたのだ。
「ぁっ、そうだ。・・・ネコ! 怪物を倒したんだから、アンケート用紙を白紙にしろ!」
「んー? 何のことですかニャ?」
「はぁあ!?」
そんなネコに対し、シップスはある案件を思いだし、取り消すように抗議しだした。だが相手はその約束を覚えていないのか首を傾げだし、シップスは驚き声を上げ、疲労などお構いなしでその場に立ち上がった。無論近くに立っていたアシュレー達も穏やかな様子は無く、次々とネコへ視線が向けられた。
その時だ。
「おまっ・・・! 騙したのか!?」
「ニャーは元から、時間を奪ったとは言ってないのニャ~ モンスターが勝手に、春になる分の熱を溜め込んでただけなのニャ。倒せば必然的に、いきなり春がやってくるわけであって・・・」
「ぇっ」
ジュゥーー・・・
「あぁああっじぃいいいい!!! アチアチアチアチ!!!」
「焼ける! 焼ける!! いろいろ焼ける!!」
彼等の居た大地の空気が突如変化しだし、真冬の寒さから一変、突如蒸し暑い気候が彼等を襲ったのだ。冬の井出達だった彼等へ対し、真夏の様な視線が降り注ぎ、まるで熱湯の中に叩き込まれたかのような暑さに悶えだした。
身に着けていた衣服を脱ぎ捨てる様に彼等は服を捨てだし、徐々に肌着姿へと変わりだした時だ。
「ニャッニャッニャッ とまぁご冗談は無しにして。」
パチンッ
「あち・・・ ・・・あれ。」
「嘘にゃ。」
「嘘かよっ!? ・・・ヘグジッ!!」
ネコが一度指を鳴らした瞬間、元の気候へと早変わりし彼等にありえないマジックを披露した事を告げだした。どうやら彼等の居た地面周辺を鉄板の様な材質へと変えたらしく、降り注ぎだした朝日の光を収束させ、あたかも昼間の日差しの様に演出していた様だ。
軽く騙されたと言わんばかりに彼等は叫んだ後、脱ぎ捨てた衣服をいそいそと着だし、汗をかいた身体にやってくる真冬の風に、一同はクシャミをしていた。
「ま、おミャー等の願いは確かに聞き届けたのニャ。でニャ、1つ聞きたいのニャ。そこの狐っ」
「ぇっ、俺?」
「おミャーじゃないニャ。そこの長身の方にゃ。」
「ぇっ?」
軽く風邪を引きかねない温度差に身体がやられそうになる中、ネコは軽く指さし質問を投げかけた。だが相手側は認識を怠っていた様子で間違いが起こるも、ネコは質問先をシップスだと告げ直し、彼にある質問をしだした。
「な、何だよ。」
「お主、目の前に知り合いが倒れてたら。助けるかニャ?」
「そんなの当たり前じゃん。何言ってんだよ。」
「じゃ。もしそれが『悪の知人』だったら、どうするかニャ?」
「は? 何それ。」
「もしの過程ニャ。ほら、答えるニャ。」
「ぅぅん・・・?」
彼の言う質問、それは『目の前で誰かが倒れていたとしたら、それを見過ごす事無く助けようと思うかどうか』だ。普通に考えれば誰でも助けに向かいそうになる質問ではあるが、時と場合、ましてやシチュエーションによってその行動にいろいろな差が出て来るであろう。
彼は質問に対しある付加価値を与えると、シップスは軽く頭を悩ませるも、しばらく考えた後こう言い放った。
「・・・ ぁーわっかんねー!! もう良いよ! 助けるでいい!! 知ってる奴なら全員助ける! それでいいだろ!?」
「投げやりだな・・・」
「ニャニャッ、それなら合格だニャ。ホレッ」
「ぁっ!」
誰であろうと助ける、知っている相手であればなおさら助けると言うと、ネコは満足そうに笑った後、ズボンのポケットから一本の鍵を取り出し、彼に向けて放り投げた。宙を舞う鍵を見かねた彼は慌てて鍵を手にし、投げ渡されたモノが何なのかを確認した。
宙を舞ったのは金色の小さな鍵であり、先端には紅色の流星石と思われる鉱石がはめられていた。どうやら地区を仕切る大扉を開ける、管理課を打ち負かした証の様だ。
「それがあれば、おミャーの親友に会えるニャ。さっさと行くニャよ。」
「ぇっ、タカにか!?」
「ほれほれ、いけいけ~ 桜が散ったらおしまいだニャよ。」
ネコに告げられた鍵の使い道を聞き、シップスは眼の色を変え嬉しそうに鍵を握りしめた。今まで遠くに居た相手に再び会えるチャンスを目前に控え、ましてやその場へと向かうための行動を自らがした事実。それは紛れもない自信へと繋がる力強さであり、彼は再開をするであろう友人への話の種が出来たと、心から喜んでいた。
そんな彼の近くに立つアシュレー達は軽く顔を見合わせた後、彼が嬉しそうな顔をしていたためか、つられて彼等も嬉しそうに笑っていた。
『俺も、皆の所に行ける。 タカにも、会える・・・』
「ぉーい、何黄昏てるんだシップス。 柄にもねぇーんだから、キモイし止めとけって。」
「なっ! 別に良いだろンな事!!」
嬉しさのあまりぼんやりとしていた彼に対し、アシュレーは現実に引き戻す様に声をかけだした。彼等の手にした鍵があれば地区をおさらばする事も可能であり、自信を付けた彼がこの場に居座る理由も無く、周囲に咲き乱れだした桜の花弁を視る限り、自分達は『卒業』したのだろうと理解していた。
学業に置き換えられた『自分達の歩む道』を、卒業と言う名の『成長と切り替え』を自分達は経験した。
ゆえに、もうこの場に居る必要はないと、彼等は考えたのだ。
「ほら、早く行こうぜ! こんなバカおいてさ!」
「うっせー! 俺が先導切るんだから、前歩くんじゃねぇーよ!」
「ぁっ、マサが怒ったー!」
軽く小馬鹿にされながらも彼等は走りだし、先導を切らんと走るアシュレーを追いかける。徐々に彼を追い越したシップスが彼等の前を走りだし、手にした鍵を高らかに空へと掲げ、こう思ったのだった。
『俺も、卒業だ・・・! こんな環境、俺が変えたんだ!』
自分の力で変えられた、自分の努力が実を結んだ。何も意味が無いと思っていた自分の人生が、変わった瞬間を彼は何度もかみしめるのだった。
-EPISOD END-
『外伝・シップスシナリオ』はこれにて終了です。引続き、更新後のシナリオをお楽しみください。




