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英雄達の消えた街・コラボ編  作者: 四神夏菊
外伝・シップスシナリオ
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安定と変化の違い 1

「ただいまー」

コンビニでの買い物を終えたシップスはそのままアパートへと帰宅し、扉を閉めた。

段々と冷えだす外気とは裏腹に、彼の入った部屋は暖かく、廊下は淡い橙色の蛍光灯に照らされていた。清潔感があり温かさのあるその場所は、まるで誰かが待っていてくれるような、そんな暖かさえも感じさせる住居だった。

「・・・ん? お帰りシップス、材料買えたか?」

靴を脱ぎ廊下を歩いていると、手前の部屋から同居人の出迎えの挨拶が飛んできた。部屋の扉そのものは開け放たれていたため、彼の姿が即座に目に入ったのだろう、彼は本を手にしたままシップスを見ていた。

「んーや、店は閉まってた。でも、晩飯はちゃんとしたの作れるから心配すんなっ」

『ちゃんとしたのって、何だ・・・?』

出迎えへ対する返事をした後、彼は手にしていたビニール袋を見せつつ奥へと向かって行った。しかし去り際に意味深な言葉を口にした事が気になったのだろう、アシュレーは首を傾げながら本を置き、彼に続いてキッチンへと向かって行った。

キッチンへと移動したアシュレーが見た光景、それはいたってシンプルな学生の行動だ。手にしていた手荷物をテーブルサイドに置かれた椅子に置き、そのまま羽織っていた上着も椅子へと掛ける。買い物をしてきたビニール袋はそのままテーブルの上へと置かれ、中身を物色する光景。

いたって普通である。



ガサガサガサ・・・


「で、結局何買って来たんだよ。」

「ん? 卵。」

「卵って・・・ ・・・おい、何だこれ。」

そんな中身を物色する彼の隣に立ち、アシュレーは袋の中身を視ようと横から覗き込んだ。するとシップスは買ってきたパック卵を取り出し、晩御飯の材料に使う様子を見せていた。だが卵だけでは腹に溜まらないだろうと思い、再びアシュレーは袋を覗き込み、見つけた物を手にした。

彼が手にした物、それは普段買い置きしてストックしてある駄菓子とは別のお菓子だった。緑色の袋菓子に描かれているのは、カエルと麦わら帽子を被ったオジサンであり、彼等の上にはデカデカとカタカナで『ロール』と書かれていた。

いわゆるポテトチップスとは違う、軽い触感が美味しい定番菓子だった。

「スナック『ロール』 それと卵で、オムレツが作れるんだってさ。前にどっかのサイトで書いてあって、丁度うす塩味だったし、調味料の節約にもなるだろ?」

「うすしお味のロール・・・な。まぁ、いいや。腹減ったから、早めにな。」

「あいよっ」

今夜の献立を大体聞かされたアシュレーは返答に困りつつも、自身の空腹もあったため早々に晩飯にして欲しいと催促した。するとシップスは笑顔で返事をし、近くに置かれていた青色のエプロンを着用し、キッチンに立った。


まずはじめに彼が行った行動、それは必要な分の材料を用意する事だった。今夜のメニューは『ロールのたっぷりオムレツ』であり、メインであり量増しとなるお菓子と共に卵が並んだ。加えて彼は冷蔵庫の冷凍室を開け、味気ないシンプルなオムレツに彩りをプラスしようと『ベジタブルミックス』を取り出した。今夜の食材は、以上である。

その後凍結されていたため解凍する時間を短縮させようと、彼は袋から出した野菜達をレンジ容器へと移し、数分間レンジの中で温めだした。レンジが独りでに仕事をし始めたのを見た後、彼はボールに卵達を次々と投入し、菜箸を使って溶き卵へと変えだした。リズミカルかつ慣れた作業を見せながら彼は鼻歌を唄い、後方で調理を終えたレンジの音を聞き、容器を取り出した。熱がこもり暑くなっていた野菜達を軽くクッキングペーパーで水気を切り、彼はそのまま溶き卵の中へと野菜を投入した。

次に登場したのは、先程から待機していたロールと名乗るお菓子。袋から出したお菓子を手で軽く粉砕しながら卵の中へと投入し、彼は軽く手にした調味料達をお好みの味付けにし、フライパンの置いたコンロに火を付けた。

温まったフライパンにバターを投入し油分を付けた後、彼は溶き卵を適量フライパンの中へと落とし、軽くスクランブルする様に菜箸で卵を焼き出した。しかし完全にスクランブルエッグになる前に彼は半熟の卵をフライパンで操作し、丁度良い表面と中身になる様気を配っていた。


しばらくの間フライパンの中で調理された卵たちは焼き色を付けだし、彼の見事な手さばきで綺麗なオムレツになるのだった。添え物として付けた、余りのロールを添えれば完成である。

「うっし、完璧っ アシュレー、飯だぞー」

その後火元の処理をした彼は、料理の乗った皿を手にしつつ別室へと移動したアシュレーを呼び、夕飯になった。



「あぁ、そうそう。シップス、学校から手紙来てっぞ。」

「手紙?」

少し大きめのオムレツを食べだしていたシップスは、不意にアシュレーの言葉を聞き顔を上げた。彼が取り出したのは学校名が書かれた水色の封筒であり、どうやら文書が彼の元に文書が届いていたらしい。

しかし、ゲーセンで時間を潰していた留守中かどうかは解らない。

「何か知らねえけど、学生へのアンケートだってさ。氏名と番号書いて、学校のポストに入れとけって。これで特別枠の単位のポイントなんだと。」

「へぇ、今年はそんなのやるのか・・・ 去年は無かったのに、今更か。」


「ん? 何か言ったか?」

「別にぃ。」

とはいえ、学校からのとある講義分のポイントとなるのであれば、彼も参加しなければならない。何の講義かはすでに察しがついている様子で、彼は封筒を開けずにオムレツを食べ、合掌し食事を終えた。今夜の洗い物はアシュレーが当番の為、彼は先に部屋へと戻って行った。

部屋へと入った彼は自身の机の前へと移動し、椅子に座り備え付けのパソコンを起動させた。しばらくの間立ち上げの準備をするパソコンを見守りつつ、彼はお気に入りの動画サイトへとアクセスし、音楽を流しつつ封入されていた用紙を視た。

そこには白い紙に黒字の文字か書かれており、いたって普通の案内書が入っていた。

「ぇーっと・・・ 『生徒諸君の学校生活がより良い物になる様、今年度より各学年へ向けてアンケートを記入してもらう。学校生活の不満、もしくは自身の理想とする生活スタイルを自由に書き込みたまえ。』・・・書き込みたまえって言われてもなぁ・・・」

文面に目を通しつつ彼は手にシャーペンを持つも、何を書いたら良いのだろうかと頭を悩ませ出した。


基本的にこういう文面に対する発言を求められても、大概の生徒達は決まってこういう反応をする。自主的に講義に参加する者達であれば多少の違いは見受けられるかもしれないが、こういった学校への改善の声と言うモノは、執着していなければ考え付きにくいものだ。ましてや四六時中学校に居るわけでは無いのだから、なおさらだ。

シップスは軽く悩む素振りを見せながら、鼻先にシャーペンを乗せ背もたれに体重をかけつつ、考え込んでいた。

「・・・ なぁ~ アシュレー」

「んー?」

「お前は何て書いた? このアンケ用紙。」

そんな彼の居る部屋へと戻って来たアシュレーを見て、シップスは用紙をチラつかせながらアイディアを求めた。こういう時に案を出しあえる仲間が居ると言うのは、やはり心強い事かもしれない。

だがしかし、あまり褒められる行為ではない事をあらかじめ付け加えておこう。

「適当に書いて済ませた。別に今の生活での不便な所って言われても、そこまで目に付かなかったしな。・・・しいて言えば、旧校舎の洗い場が汚ねぇってところかな。」

「洗い場なぁ・・・」

「更衣室は扉も無いただの箱型ロッカーだし、シャワー室とかは開放的で普通に湿気が飛んでくるしな。酷い時は苔まであったぞ。」

「苔はパネェな。」

アシュレーが書いた内容を聞いた彼は軽く苦笑しつつ、自身も似たような物にしようとペンを走らせた。体育関連の講義で使用する旧校舎は、体育館を使用する前の更衣室として現在は使用されている。そのため聊か老朽化が目立つところも多々あり、生徒によっては汚いトイレは衛生的ではないと、不服の申し立てもあるそうだ。

だが、その辺を気にする事は無い男性勢からすれば、その辺りよりも別の面が気になる事もあるのだろう。苔まで生えだしてしまうとなれば、コレはただのネタである。

『・・・まぁでも、学校の設備は対した不服はねぇかな。寮とか完備で備品代はほぼタダなんて、何処探してもねぇに等しいし。 ・・・ん。』

そんな軽いジョークなのかマジなのか解らない案を心の中で笑っていると、彼はある文面を眼にし手を止めた。そこにはこう書かれていた。

【なお、諸君を取り囲む問題に対しても取り組む姿勢を見せよう。自身が一番大切にしたいモノを、言ってみたまえ。】


「・・・」

少々意味深であり、学校側からすれば何かと気にしたい内容が、そこには書かれていた。その文字を視た彼は一瞬手を止め体制を変えずに考えた後、軽くペンを走らせながら考えていた。

『・・・ ・・・取り組む姿勢なんて、幾らでも見せられるだろうに。・・・どうせ改善何てしてくれねぇし、何時だって【時間】を味方にするような、あんな言いぐされ・・・ ・・・出来るわけねぇだろ、大人達になんか。』



カリカリカリカリ・・・


「・・・ ・・・何てな。 ただのアンケート用紙に何書いてんだか、俺は。」

その後思考と共に本音を書いたであろう用紙を彼は封筒の中へと戻し、明日も使用するであろうリュックサックの中へと入れた。こうすれば忘れモノも無いため、彼も真面目な所が見て取れる、可愛い光景であった。

「アシュレー 俺も何か読む物貸してくれよ。それ新刊だろ?」

「おう、もう読み終わったし良いぞ。俺風呂入るわ。」

「ん、ごゆっくりー」

夜の内に済ませておくべき課題を済ませた彼は、そのまま席を立ちベットで本を読んでいたアシュレーの元へと向かった。先程から彼が読んでいた新刊が気になった様子で、彼は小説を借り隣のベットへ寝転がり、本を読みだすのだった。


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