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転生先の乙女ゲームの世界で何故か主人公してます。  作者:
サーファーとお姉さんと物語
33/33

31.野外活動3日目 朝



微妙な雰囲気の中、翠が口を開いた。

「つまり松本君は、もっと千智と話したいということ?」

超訳し過ぎだと思うよ、翠さん。私が松本君を見ると、みるみる内に顔が紅くなっていっていた。そんな状態でも松本君が口を開いた。

「あの、その、ごめん。」

・・・・・・・。え、この状況をどうしろと?翠を見ると頷いている。これは私が収めなければいけない感じなんですか?でも、取り合えずこれだけは言いたい。

「私、高嶺の花とかじゃないよ。」

私が突然口を開いたからか、皆がこちらを見た。

「さっきのことはあんまり気分がいいことじゃなかったけど、でも、ああいう風になったのは私にも翠にも責任があると思ってる。あと王様ゲームなんだからそれくらい許容だとも考えてる。それにそもそも私、皆が思っている程怒ってないです。」

最後が敬語になったのは許して欲しい。皆に無言で見られて居たたまれなくなったんです、はい。

「はい、確かに私も悪かったです。」

翠が手を挙げて宣言した。

「だからこのことはもう終わりということで。それよりも、松本君!」

私が突然名指ししたからか、松本君が驚いている。

「はい!?」

「さっきの話、詳しく聞きたい。」

もちろん、高嶺の花のこと。出来ればそんな風に思われたくないというか、自分が高嶺の花なんて本当の高嶺の花さんに悪い。いや、本物の高嶺の花さんに刺されるかもしれない。夜道は気を付けよう。

「え、あの、高嶺の花のやつ?」

「うん。私、それ初耳だったんだけど・・・。」

そう言って、女子の皆を見た。

「えっとぉー。」

「えへへ。」

「その、あの・・・。」

皆、口は開くけど目を合わそうとはしてくれない。

「その反応は知ってたんだ。」

少し悲しいのは気のせいかな。

「いや、だって千智がこのこと知ったら絶対不機嫌になると思って・・・。」

翠がそんなに私のことを考えていてくれたのは嬉しいかも。

「翠・・・。」

「もし不機嫌になったら、ただでさえ少ない千智笑顔バージョンコレクションがもっと少なく・・・」

「翠・・・。」

やっぱりそういうオチなのね。

「何で高嶺って思われてるかわからないけど、私はそのよくわからない建前で皆と仲良くなれないのは悲しいし寂しい。だから!」

私は皆を見た。

「私と普通の友達になってくれませんか。」

私は笑顔で言い切った。


男子部屋での集まりはお開きとなって、翠と部屋に戻ってきた。私、よくよく考えると恥ずかしいことを言っていた気がする。

「ねぇ、千智?」

「ん?何?」

翠はベットに座って私を見ていた。

「千智があぁいう風に思ってたなんて、私、知らなかった。ううん、気付こうとしなかった。千智の上部しか見てなくて、千智が皆のことをどう思ってるとか皆が千智をどう見てるとか、ちゃんとわかってなかった。・・・ごめんね。」

「翠・・・。」

「それでね、図々しいと思うんだけど・・・。」

翠の目がくるくる泳いでいる。

「私ともう一度友達になってくれないかな?」

「そんなこと言わないでよ。」

翠が驚いた顔をした。

「私達は、これまでもこれからも友達でしょ。これまで私は、翠のことを友達じゃないなんて思ったことはないよ。だから・・・。」

翠に抱きつかれた。

「わっ!ちょ、翠!」

「ありがと・・・、これからもよろしく。」

「・・・こちらこそ。」

私と翠は少しの間、笑いあった。


「ふぁー、眠たい。」

現在、朝の6時少し過ぎ。

昨日は遅くまで起きていたせいか、かなり眠たい。翠は未だに寝ていて、部屋はしんっとしている。私は着替えて、翠を起こさない様に部屋を出た。


ホテルのロビーに降りると、そこには意外な人がいた。

「・・・松本君?」

彼は驚いた様にこちらを向いた。

「あ、藍川さん!?」

「おはよう、早いね。」

私は、松本君の横に座った。

「おはよう、ございます。」

「どうして敬語?クラスメイトなのに。」

私は、おかしくてクスクス笑った。

「え、いや、その・・・。タメ口は緊張するというか、馴れないというか。」

松本君ってもしかして、人見知り?人見知りならそんなものなのかな。

「じゃあ、敬語は禁止で樹君に話すみたいに話してよ。」

「え!?それは無理!樹と同じ様に接するなんて、いくらなんでもそれは無理!」

「敬語なくなった。」

「あっ!」

「これからもそっちでお願いします。」

私は、笑顔でそう言った。

「・・・藍川。」

「何?」

「って、呼んでもいい?」

「もちろん。」

私にも彼にも大きな進歩な気がする。

「これからよろしく、藍川。あと、やっぱり昨日はごめん。」

「こちらこそよろしく。昨日のはもういいよ。」

そう言って私は、微笑んだ。


その後も二人で少し話していると、上のフロアから物音がした。

「皆、起きたかな?」

「どうだろう?」

顔を見合わせていると、大声で呼ばれた。

「千智さん!」

「あ、澪先輩、おはようござ、」

挨拶も言い終わらない内に、澪先輩に手をとられて駆け出していた。

「あ、藍川!?」

「え、あの、先輩!?」

松本君の驚いた声もそのまま、私と澪先輩は外に出るドアをくぐった。


海岸まで走って漸く先輩は止まってくれた。

「あの、澪先輩?」

「千智さん、先程の方はどなたですか?」

「・・・松本君ですか?クラスメイトですよ、ほんの10分前くらいにちゃんと友達になりました。」

「え・・・。」

え・・・と言われても。澪先輩が固まってしまった。

「あの、澪先輩・・・?」

「すみません、少しこちらを見ないで頂けますか?」

そう言って先輩は顔を伏せてしゃがんだ。

「え、あの、先輩!?」

私は、先輩に合わせてしゃがんだ。

「先輩、人間見ないでと言われたら見たくなるし知りたくなるんですよ?」

澪先輩は少し顔を上げて私を見た。

「先程の松本君という方とは親しいんですか?」

親しい、親しい?昨日初めて喋ったからどうなんだろう?

「昨日初めて喋ったので何とも言えません。少なくとも、今、澪先輩と接している距離感で話す程には親しくないです。」

私と澪先輩の距離は、どちらかが動けば肩が触れてしまう距離。うん、これは松本君とは無理かな。

「そう、ですか。」

「はい。」

・・・・・ところで、松本君とこの状況に接点はあるのだろうか?私が分かりかねていると澪先輩が動いた。

「はぁ。男の嫉妬は見苦しいですね。」

「え?」

「いえ、何でもないです。朝食を食べに行きましょうか。」

そう言って先輩は立ち上がった。

「え、あ、あの!」

先輩は私の手をひいて、来た道を引き返して行った。








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