第6章 第5話
『一体いつの間に追いついたんだ?』
「ずっと居ましたよ。あなたの様子をずっと見せてもらっていました。」
おかしい。たまに振り返っていたが、間違いなくHoneySwordは居なかった。
『…スキルか。』
「ご想像にお任せします。」
第7エリアで見られていたのも、おそらくこれなんだろう。
スキルアイコンは金色だし、隠密行動あたりだろうか。
『なぜ姿を表したんだ?話しかけるだけならパーティーチャットでも良かっただろう?』
「パーティーチャットでは、みなさんに会話が聞こえてしまいますからね。
本当はあなたの戦いを観察して、色々と分析しようと思っていたんですよ。
ところがあなたが強すぎて、分析できたものではありませんでした。」
『だから、直接聞き出してやろう、という事か。』
「その通りです。あなたの強さの理由を教えてもらえると手間が省けて嬉しいのですが。」
『今までの流れで、俺が素直に教えると思ってるわけじゃないだろう?』
「先日の妨害終了宣言を受けて、心変わりでもしてくれていればと思いまして。」
食えないヤツだ。
『全部ネタ晴らししても構わない。だが、それは今じゃない。
この間も言った通り、俺がダンスを続けている目的は
エアスタさんに会って話しをするためだ。
彼に…じゃなかった、彼女に追いつくまで、さらけ出すわけにはいかないな。』
「我々が、最新エリアまで全力でサポートすると約束しても?」
『どうせニードも敵が多いだろ。逆に仲間と見られて敵が増える可能性だってある。』
「酷い言われようですね。ですが、敵が多いことは否定しません。」
食えないが、なぜか嫌いになりきれないヤツでもある。
自分に正直なんだろう。
「そうですか。では、あなたがエアスタ様に会えるまで同行させてもらいましょう。」
『妨害しないなら、好きにしてくれていいよ。』
「ありがとうございます。ちなみに、今のところ私の行動は
すべてエアスタ様のためだと思ってやっています。
しかし、あなた自身にも少しだけ興味を持っています。」
『…今までの会話の中で一番驚いた。
あんたに純粋な興味を持たれる方がよっぽど恐ろしそうだ。』
「それも否定しません。昔から良く猪突猛進だと言われてきましたから。」
そこで会話は終わり、横並びのまま通路を進む。
この若干の気まずさを感じているのは俺だけなんだろうか。
『そろそろ最後のスイッチに着くけど、2人はどんな様子?』
「私ももう着くわよ。」
「ボクはもう着いてる。それよりスピさん、ニードはどうすんのさ?」
しまった、すっかり忘れてた。
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「やっぱスピさんのとこだったか。どーせそんなことだろうと思った。」
最後のスイッチで開いた扉の先は、3本の別ルートが合流する部屋だった。
部屋の奥にはボス部屋の扉。どうやらギミックはここで終わりのようだ。
「安心して下さい。これからは堂々と同行しますから。
必要とあれば協力もしますよ。」
「気持ち悪いわね。どんな裏があるのやら。」
「別に裏はありませんよ。フィーアトさんがエアスタ様に早く会えるように
私も手伝おうというだけです。」
先の決闘前から、不正では無いと声高に叫んでいてくれただけに
疑い続けたHoneySwordが信用できないのだろう。
『セレ、心配してくれてありがとう。でも多分大丈夫だよ。』
「うーん…まぁ、スピが良いなら良いわ。」
『それにここをクリアすれば、次は第9エリア。終盤エリアにさしかかる。
協力者は1人でも多い方が助かる場面もあると思うし。』
Seregranceに目くばせを送り、HoneySwordをちらりと見る。
「仲良くしましょうとか、信用してくださいという言うつもりはありません。
同行や協力と言うから分かりづらいかもしれませんね。
エアスタ様の所までは共闘しましょう。
どのみち私もエリアを戻らなければいけないので、行先は同じですよ。」
「さっきと同じ目的を話してるだけじゃないの…なのに、この短時間での変わり様。」
Seregranceはまだ納得がいかないのかブツブツと呟いている。
「さーさー!もうボス部屋入るとこなんだからさ!
気持ちの整理は後からにして、さっさとボス倒しちゃおう!」
ドリッピーが空気を変えるかのように明るく声をあげる。
これもまたドリッピーなりの気遣いか。
『そうだな。行こうか!』
過激派ギルドのマスターをやっているのだ。
HoneySwordが強いだろうことは想像に難くない。
ただ、申し訳ないが出番がない。
第8エリアのボスは特に面倒な攻撃等は無かった。
巨大な体と巨大な両手剣から繰り出される、攻撃範囲の広い一撃。
高い攻撃力、高い防御力、高いHP。
しっかり守って、しっかり殴る。
ドリッピーが大剣を弾き、Seregranceと2人で駆け寄って攻撃。
一瞬HoneySwordが出遅れ、剣を振りかぶった頃にはボスが倒れていた。
「本当に…呆れた攻撃力ですね。
長年やってるプレイヤーが何度見てもあり得ないのです。
これでチートを疑うなという方が無理があります。」




