第6章 第1話
「見違えたものねぇ。」
Serengranceが、しみじみとした顔でつぶやく。
あれから10日間。
最初の3日はカカシ相手に黙々と練習を続け、攻撃判定が発生するタイミングを体に叩き込んだ。
今までは、状況から攻撃のヒットが確信できれば次の行動を仕込んでおけたのだが、
スキルが強化されてからは、ヒットが確認できてからでなければキャンセルはご法度なのだ。
とは言え、全ての攻撃を見てからキャンセルするには負担が大きすぎる。
見てから、ヒット音を聞いてから、腕の角度、腰の角度、足の踏み込み具合。
ヒットを確認するために使える要素を意識しながら、ひたすら反復する。
ある程度タイミングが体に馴染んだところで、
次はSeregrance、ドリッピーを相手に対人戦を繰り返した。
やはり相手が止まっているのと動いているのでは、全然違う。
それでも4日も続けると、対人戦でもキャンセルを駆使した戦い方がサマになってくる。
最後の仕上げは2対1での戦闘だ。
これも4日、みっちりと対戦し続けた。まさに修行だ。
スキル強化直後には手も足も出なかったのだが、今日は4戦4勝。
やっと戦えるようになってきた。
「あっという間に勝てなくなっちゃったなー。」
『これも2人がみっちり練習に付き合ってくれたおかげだよ。
ただ、セレとリッピーが相手だから勝ててるっていうのもあるだろうからね。』
「ふーんだっ!どうせボクはそんなに強くないですよー。」
ドリッピーが拗ねる。
『ちがうちがう。リッピーが弱いって言ってるんじゃないんだって。
人読みで成立してる攻撃があるってこと。』
「人読み?」
『セレとリッピーでずっと組んでるからさ、かなり連携が仕上がってきてるでしょ。
その分、次の行動が読みやすくなってる部分があるんだよね。』
「そういうことね。」
納得してくれたらしい。
そこにSeregranceが続ける。
「パターン化しちゃってる攻撃があるってこと?」
『簡単に言えばそうだね。でもそれが良いのか悪いのか、その辺の判断は難しいなぁ。
1対1の対人戦じゃないなら、パターン化してる攻撃でも
練り上げられた連携っていう評価で良いとも思うんだけどね。
分かってても防げない攻撃っていうのもあるし、相手が防御でいっぱいいっぱいになるような状況なら、押し付けるように仕掛けていくことで有利になれる場面も多いはず。』
「でもスピさんに通用してなかったしなぁ…」
『俺はほら、いったん間合いを取って仕切りなおすだけなら、今やどうとでもなるからね。』
「頼もしいセリフね。」
この10日間で得られたものは大きかった。
自分の攻撃の練習もさることながら、Seregranceとドリッピーの2人が想像以上に噛み合った。
対戦が終わると2人で反省会を開いて、作戦を練って次の対戦というローテーションを繰り返していたこともあり、始めたころとは見違えるほどのコンビネーションだ。
そして俺は俺で、強化後のこのスキルの真髄は攻撃ではなく、一方的に状況をリセット出来ることが強みだということが理解できた。
もちろん、相手が同数程度であれば、途切れずに攻撃し続けることで圧倒出来るだろう。
だが、先日の公開闘技のように相手が遥かに多いという場面では、連続で攻撃していたとしても、周りから見れば隙だらけのはずだ。
いかに隙を少なく、後のフォローを考えた攻撃を繰り出すか。
強化前の神速では、攻撃が当たった時と防御された時では、とれる行動が違ったのだが、
今では全てキャンセルができるのだ。
状況に応じた強い選択肢を選んで、攻撃と仕切り直しを繰り返せる。
例え無茶をしても、Seregranceさえ無事であれば蘇生がある。
『2人ともおまたせ!これで先に進む準備は整った。そろそろ先に進もうか!』




