第5章 第1話
その存在を知ったのは、もう1年以上前の事だった。
初心者エリアに奇特なプレーヤーがいるらしい。
ViertenSpielerという名前で、
初心者の対人クエストのクリアを手伝って
延々と負け続けているプレーヤーがいると。
名前からピンときた。
ErsterSpieler、エアスタ様の名前はおそらくドイツ語だ。
Ersterは"第1の"、Spielerは"プレイヤー"という意味だ。
すばらしい。正に名が体を表している。
一方、ViertenSpielerは"第4のプレイヤー"という意味になる。
エアスタ様が別キャラを作って初心者救済のような活動をしているのではないかと。
親衛隊と名乗ってはいるものの、HoneySwordではエアスタ様と話せる機会など無い。
ならば、自分も別キャラを作って初心者エリアで出会えば
話す機会ができるのではないだろうか。
あわよくばメインキャラ同士で仲良くなれないだろうか。
そうしてキャラを作り直すという訳でもなく
別キャラを作ってViertenSpielerに会いに行ってみた。
するとどうだ。
すでにViertenSpielerはボランティア活動を止めていて
初心者エリアでも中々見かけないというではないか。
実際、1日に何度か別キャラでログインして、闘技場の周辺を探し回ってみたが
やはり全く見かけることが無かった。
そうして、1週間程度でViertenSpielerに対する興味を失ってしまった。
再びその名前を目にしたのは、1か月程前のことだった。
エアスタ様を中傷している書き込みが無いか、SNSを巡回していると
ノーマナープレイヤー同士の内輪揉めで荒れているコミュニティを見つけた。
そこでは何故かLinehaltというプレイヤーを責める内容から
ViertenSpielerがチーターか、そうではないかという内容に話が変わっていき、
ViertenSpieler派と反ViertenSpieler派の言い争いになっていた。
その話の中で目についたのは、ViertenSpielerが異常に強いということ、
そして18000敗という異様な戦績だった。
強さということなら理解ができる。
おそらくエアスタ様であれば、サブ武器や防具を別キャラに渡すだけで
前半エリアなら飛びぬけた強さになるだろうし、
そもそもプレイスキルが高いからこその強さなのだ。
それを理解せずにチーター呼ばわりしている奴らは許せない。
ただ、戦績は理解できない。
ただ負け続けるだけと言っても18000敗だ。
一体…一体どれほどの時間を費やせば、そんなに負けることができるというのか。
ましてやエアスタ様はメインキャラでプレイし続けて、
最前線でランキング1位を維持し続けていることも知っていた。
…エアスタ様の別キャラではないのだろうか?
だとすれば目的はなんだ。
エアスタ様の強さにあこがれてキャラを作ったのであれば、
18000敗という戦績に納得がいかない。
やはり一度本人を見てみなければ。
本気で居所を探してみれば、どのエリアに居るのかを見つけるまではあっという間だった。
第6エリアでバトルロワイヤルの開催を待っているという情報が入ってきた。
ならば丁度いい。第6エリアまで進めて、バトルロワイヤルに中々勝てず
放置しているキャラクターがあるので、それで観戦してみよう。




