第8章 第1話
「エアスタさん、来ないねぇ…」
もう何度目だろうか。ドリッピーが呟いた。
「エアスタ様…具合でも悪いんでしょうか…」
静寂に耐えられずHoneySwordも呟いた。
「もう3時間になるわね…」
待ち合わせの時間は19時。時計は既に22時を指していた。
あの朝、目が覚めると既にErsterSpielerは居なかった。
何かしらリアルでの都合があったのかと
さして心配もしていなかったのだが。
結局ErsterSpielerは、それから一度もログインすることなく今に至っていた。
『さすがに今日はもう遅いし、解散にしよう。
連絡があったら、皆にはすぐ伝えるよ。』
「必ずですよ!連絡があったら必ず!すぐに!伝えて下さい!」
取って食われそうな程の勢いで詰め寄ってきたHoneySwordに
了承の返事をし、この日は解散となった。
翌日。翌々日。その次の日もErsterSpielerは現れなかった。
『ニード。エアスタって、こんなに何日もログインしない事って
これまでにもあったのか?』
「私が知る限り、この2年では1日としてログインされなかった日はありません。」
そんなErsterSpielerのログインしない日が、1週間も続いていた。
毎日ErsterSpielerのオンライン状況を確認しては落胆する。
さすがに、何か予期せぬ事が起きていると感じ始めていた。
無事なのか、状況だけでも確認したいのだが、ダンス外での連絡手段が無い。
『深谷さんの連絡先だけでも聞いておけば良かったな…』
独り言のように呟くが
「でも、エアスタさんに何かあれば、向こうから私達に連絡をくれそうじゃない?」
Seregranceがその呟きを拾って問いかけてくる。
『どうだろうな。俺たちの主観ではエアスタとはかなり深い仲だけれど、
深谷さんからしてみたら、まだ知り合って間もないただのダンス内の友人
という認識の可能性もある。』
「でもでも、エアスタさんと同じようにコントローラを埋め込んでて、
さらに強制ログインまでされてるんだよ?」
『そうではあるんだけどな。エアスタの個人的な事情を連絡してもらえるかは、
また別じゃないかな。』
ドリッピーの問いかけにも返事をする。
Seregrance達が希望的観測を持ちたがっているのは分かる。
相反するように自分は悲観的な考えを持とうとしている。
冷静に、客観的に状況を分析しなければと思うが、
自分も含め、とてもじゃないが皆そうはいかない。
ならばいっそ、極端な視点で意見をぶつけ合う方がマシかもしれない。
「そういえば、深谷さんと高山先生ってデータのやりとりで連絡とったことあるんじゃないの?」
Seregranceの一言にハッとする。
『そうか!高山先生から深谷さんに、俺たちに連絡をして欲しいと伝えてもらうのか!』




