第7章 第24話
解散してその晩。
Seregrance、ErsterSpielerと3人で宿に入る。
この1週間はだいたいこうだ。
寝る準備を済ませるとSeregranceもダンスにログインし、3人で宿で話しながら過ごし、
眠くなったら寝る。
あの結婚初日。
2人を残しログアウトすると、バタバタと用事を済ませ、1時間でダンスに戻った。
2人はまだ話しを続けていたのだが、Seregranceからの提案で3人で一緒に寝ることになったのだ。
「あたしは修学旅行って行ったこと無いんだよ。
中学では修学旅行が中止になって、高校の修学旅行前に発病しちゃったからね」
以前、俺が口にした修学旅行気分を思い出すという台詞。
何の気無しに使った言葉が気に障ったかと心配したが
「いいんだよ。正美さんの事はともかく、自分の事なんてとっくに整理できてる。
それより、君たち2人がこうやって付き合ってくれてるのが嬉しいよ。」
そんな訳で、夜はErsterSpielerと話しながら寝るというルーティーンが出来ていた。
『そういえば、エアスタ。この指輪相当良いもんだって聞いたんだけど。貰っちゃっても良かったのかな。』
「あー、それね。結婚指輪としては最高級だけど、使えなきゃタダのお荷物だからね。
むしろ使いたい相手が現れてくれて嬉しいくらいだよ。」
『そうは言ってもなぁ。装備に全然お金かけてないから、それなりにはお金も持ってるし、いくらか渡した方が良いかと思って。』
「んー、お金は余るくらいあるから要らない。」
「多分、スピと私のお金足しても、エアスタさんの方が遥かに多いわよねー。」
「あはは、そうだろうね。あたしは誰よりも長くプレイしてるから。
それより、あたしもすっかり忘れてた。せっかくだから共有ストレージ使いたいね。」
『えーっと、装備品を入れられてどちらでも装備できるんだっけ?』
「そうそう。お互い1つずつ自分の装備を入れられるんだ。
あたしが装備してる間は、君は装備できないからトレードしても結果は同じなんだけど
頻繁にトレードするような物だったら手間が省けるって程度の効果だね。」
『じゃぁ、エアスタに使わせたい装備を入れれば良いってことか。』
「そういうこと。あたしはこれだな。」
そういってメニューを操作するErsterSpieler。
共有ストレージを見てみると [強化のマント(固有スキル)] という表示。
『これは?』
「あたしのアクセサリーだよ。君が借りてるアクセサリと同じで、固有スキルを強化してくれる効果。
さらにオプションがあって、マント自体を透明にできるよ。
ドリッピーが持ってる盾の半透明オプションと同じような見た目だけにかかわるオプションだね。」
「そんな良いもの入れちゃって良いの?」
俺と同じ疑問をSeregranceが口に出す。
「せっかく共有するなら良いものじゃないと勿体ないじゃない。」
『それもそうか…となると、やっぱり俺が入れるものはコレしかないよなぁ。
セレが作ってくれたものだけど良い?』
「もちろん良いわよ。」
メニューを操作し、+50初心者のメイスを共有ストレージに入れる。
「おー!実をいうと一度使わせてもらいたかったんだよね!」
『早速明日使ってみるといいよ。』
「やった!へっへー、久々にダンジョン行くのも楽しみだな!明日のあたしは強いぞー!」
『楽しみが増えるなら何よりだ。』
その後も他愛のない話を続けて眠りに落ち、翌朝。
目が覚めるとErsterSpielerの姿は無かった。
そして…この日を最後に、2度とErsterSpielerの姿を見ることも無かった。




