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光と闇の少女たち  作者: 飛騨仇義
第二章 狂いだした歯車

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12/41

2-6

 次にわたしがとった行動……それは光輝に会いに行くことだった。

 いかなるときでも、彼はわたしの理想像の星野光輝でいてくれた。

 載鐘くんの自宅で居候した際も、光輝はみんなを茶化しながら励ます存在だったし、なによりも勇敢だ。

 そんな彼に会いたい――。

 光輝には連絡を入れず、その足で彼の住まう一戸建てに辿り着いたとき――空は一面、あかね色に塗りたくられていた。

 目を瞠るほどに美しい。

 けれど、いずれ儚く消えてしまう日没頃にかけて起こる現象……それがこの地球で見られる『夕焼け』――。

 そのとき、誰かの視線を感じた。

 わたしは神秘あふれる夕焼け空から、この惨状の大地へと視線を移した。

「知っていたか? 馬鹿みたいに空を眺められるのは、子供の特権なんだ。大人になると、その特権を徐々に忘れてしまうのさ」

 なんとも悲しいもんだ――そう呟きながら、光輝はゆっくりとアプローチからこちらのいる門まで歩いてくる。

 夕焼けによって反射し、こちらへ向かってくる姿はまるで、後光が差しこむ仏のようだった。

「……あなたの理論でいくと、わたしはまだ子供なのね」

「子供だな。というより、子供じみている」

 光輝は門を開放すると、わたしをアプローチへと招き入れた。

 わたしは光輝のあとに従い、しばらく無言でアプローチを歩き続ける。

 玄関ポーチへと辿り着いたところで、わたしは口を開く。

「わたしのどこが子供じみているのか、教えて欲しいわ」

 すると、光輝は吐き捨てるように言った。

「天下の清水光凛ともあろうお人が、ただの親友の裏切り如きでごたごたと取り乱す……それが子供じみているって言っているんだよ。違うか?」

 ただの親友の裏切り如き――。

 わたしは自分の心の奥深くから毒が湧き出てくるのを感じた。

 その湧き出た毒は心の隅々を腐らせた。

「違う、違うわ……まるでなってないわね。ところで、あなたはなにを言っているの?」

「それはこっちのセリフだ。お前こそ、スカスカと中身のない言葉だけ並べて、なにが言いたいんだ? はっきりと言えよ」

 わたしは唇をぐっと噛みしめ、それから心にたまった毒を存分とまき散らした。

「わたしと夜魅がただの親友……それは大きな間違いよ。わたしにとって、夜魅は迷惑な存在で邪魔な存在なの。夜魅はわたしを馬鹿にしたような目で見るし、嫌がらせも平気でしてくる。わたしがなにかをすると、夜魅は鼻を膨らまして、目の前で同じことをする。わたしはわたしで、夜魅が失敗する度にほくそ笑んで……ねぇ、この意味、分かるわよね。夜魅はわたしのことが嫌いで、見下げている。わたしも夜魅のことが嫌いで、見下げている。この歪な関係を言葉で表すのなら、それは一つしかないわ」

 そこでわたしは言葉を切り、目の前の光輝に眼差しを向ける。

 そうすることで、わたしの言葉を彼に答えてもらうのだ。

 わたしの光輝ならば、答えられる。

 わたしの『従者』ならば、答えられる。

 なぜなら、それがこの地球の掟だからだ。

「ライバル……だな」

 見事に光輝は答えきると、愛らしく破顔する。

「ご名答」

 わたしは光輝の背中を強めに叩くと、彼と同様に破顔した。

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