4節 本当の姉と本当の仲間たち
櫻木さんは私たちをにやりと見るなり、話を続ける。
「さぁ、お姉ちゃんを助けなさい」
「承知ぃしましゃだ」とメアちゃんは息苦しそうに叫ぶ。
「あら、ちゃんと言えないのかしら?それじゃあ、封印解いて発動できないじゃないの。ほら、ちゃんと言いなさい。承知しましたって」
私の目の前にいるセロリアさんが櫻木さんの方に向かって走って忍び寄る。そしていつも持っている鎌を振り切ろうとしていた。その時、間にメアちゃんがいつの間にか来ていた。私が後ろを振り返るとそこには彼女の姿がなかった。
「そこをどいて、メア」
「……」
青白くなっていつ倒れるかもわからない状態のメアちゃんがそこにいた。
「お願い、どいてよ。妹は斬りたくないの……」
「くっくっくっ。これは傑作ね」
櫻木さんは不気味な笑いを浮かべてる。私はその笑いを見て次の行動に決意した。
「なぜ、君が?」
私はメアちゃんとセロリアさんの間に入ると彼女にそう聞かれる。あの鎌はやたら刃が長く丸い上に暑さが薄く鋭い。なので私のところまで鎌の刃が来る可能性は高い。
「姉御、ごめん。自分ごと斬ってくれ」
「ちょっと海塚君?」
私は彼女の言葉を無視してこう言う。
「ごめんなさい。そしてさよなら」
「マスター命令を下す。セロリアよ、海塚とセロリアをその鎌で一振り振れ。この命令を恐れるな」
「クククク、そうじゃないとねぇ。クライマックスは」
彼女はためらいつつ、一息を吐いて言う。
「了解!!」
彼女の刃が私たちを目掛けて振ってくる。しかしその瞬間、後ろから私を両手で掴み、下に転ばした者がいた。
その者は私と同時に転んだ後に両手を離して半回転して後ろに向き、そこで話す。
「私の姉はあなたではない、彼女だ。それに私の仲間はここにいるみんなとそれ以外だ」
「ちっ、封印を使う前に収縮してしまったか。なら、私がしてやろうじゃないか。かつてお前らが倒してきた男たちにもやってきた技でなぁ。その前に返してもらうぞ、メア。いや、役立たずの小娘。双別」
櫻木さんは筆術を使うと、メアちゃんの体から黒い影が下に落ちて彼女に向けてそれが速やかに進み、彼女の足元を通じて体に吸収されたらしい。メアちゃんはその場で倒れた。
「うまいうまい。でも足りない」
彼女は注射器を使って先程の緑の液体を自分の腕に刺しまくる。彼女の体から次第に白い煙が焚き付ける。
「まさかここにいたとはね。私たちが探していた物が。ねぇ、櫻木さん……いや、双魔獣スプリング」
みるみる大きくなった彼女を見て、セロリアさんは告げた。
そういえばあの黄金の時も彼女は何か探していると言っていたが、まさかこのデカ物だったとは。かなり揺れてる。このままだと崩れる。
「じゃーね、小人さんたち」
緑色の大きな翼と四つん這いになった大きな体。さらに櫻木さんが着ていた服もそのまま大きくなる。両手両足がもう一本ずつ横の腰と胸脇から生えている。背中には大きな双剣がくっついている。その大きな体から生えた四本の足を蹴って羽で浮き上がり、速やかに地下に向かっていく彼女。そして私たちはその足蹴りのせいで建物ごと崩壊させられた。
「クローバー、任せた」
「クロン♪クローバーアンブレラ!!」
私たちが落ちるのを見計らってメアちゃんたちのボスはクローバーさんに命令を下すと、彼女はそう叫んでクローバーの傘を開く。すると巨大な傘が逆さになって私たちを包み、ゆらりゆらりと下に落ちて行く。
「さすが副マスターさん」とジョルダーさんは言う。
私はそんな彼の言葉に驚きつつもメアちゃんに近寄る。
「メアちゃん?」
私はそう言うが返事はない。しかし息は微かにしてるようだ。肩の揺れから分かる。
「寝ているだけよ。それよりも私に言うことないのかしら」
セロリアさんは傘の上で立ち上がって私に向かって近寄るなり、私に向かって言った。それでも傘のバランスが崩れることはなかった。
彼女は私に急に平手打ちをする。かなり激しい痛みが私の頬に感じる。
「ふん。こんなことしたくないのに」
そう悲しそうに言って彼女は私の離れたところに行って座った。
なぜ、私は叩かれたのだろう?彼女とキスをしたからだろうか?でもあれは不可抗力だろう。
するとクローバーさんが近寄ってくる。
「痛そう、クロロクロロ」
「……」
「あれはすぐに落ち着いてくれないかもだよ。もしかしたらもっと殴るかもなぁ。なぜ、殴ったか分かる?」
クローバーさんはにこやかに笑う。
「キスをしたから?」
「ストレートに言うね。私も女だからそれ言われるとされてないのに恥ずかしくなるなぁ。でもそれに怒ってあんなことするのはするかもしれないが、彼女よりもあのバカが手を出してくるよ」
彼女が指を示す方にはこちらを睨むなり、拳を握って震えているジョルダーさんが私の真向かいにいた。
「じゃあ、なんで?」
「彼女はあなたのことを私たちがこちらに来るまでものすごく心配してたわよ。ここに来たのも彼女のおかげかもね。それに彼女、自分の手を見るなり悔やんでるよ。姉御と親しんでいた弟みたいな存在の子に手を出してしまったことに。これで分かったかしら?」
彼女が言う通り、セロリアさんは両手を下に広げて悔しそうにしていた。彼女の言葉と共にその姿を見て全て納得した。そうだよね、セロリアさん。
「私も死のうとしたから?」
「まっ、そういうことね」
彼女は立ち上がり、大声で言う。
「そろそろ到着するので各自戦闘準備!!」
「了解」などの返答が飛び交う。
私たちが降り立つとそこにまたふた回り大きな彼女がそこにいた。
私はここにいる仲間と共にこれから戦うのだ。私のパートナーであるメアちゃんのためにも。




