7節 金では買えないモノ
私が目を覚ますとそこには右手でメアちゃんの左胸を触って、左手の二本の指は彼女の口の中に見事にホールインワンを決めていた。
そして私たちのそばにジョルダーさんがいた。
「いえ、不可抗力です」
「海塚君、メアに言われなかったかなぁ?メアに何かしたら処刑するって」
いや、そこまで言われてないんですけど。というかあんたの方がやばいことしてたよね。姉のブラ、時を止めてる最中に外してましたよね?
「さすがにかわいそうじゃない?寝てたんだから。アンタみたいなゴミとは違って」
いや、本人いたー。ありがたいけどなんかありがたくねぇ。というかジョルダーさんバレてるし。
「そういえばジョルダーさんはメアさんたちのボス的な感じですよね?」
「あぁ、そのことなんだが。お前にそれを任したい」
「いや、そんな大勢をいきなりなんて無理ですよ」
「海塚君、何言ってんだ?」
「だってあの時、メアちゃんたちがあなたのことをボスって」
するとセロリアさんが口を挟む。
「いえ、それは嘘ではないわ。この四人のボス、つまり今与えられたあなたの役割ね。ちなみにそこにいるのはボスではないよ、私たちのボスはもっとすごい人だから」
「なるほどー」
そう言ったらメアちゃんが起きた。
「んん……おはよ……う?」
目を擦りながら体を起こすその姿は何とも可愛らしかった。
私はテレビを付ける。
『昨日の騒動のあの事件は本校の校長によるものだと明らかになりました。なお、彼は逃走しているのか等について詳しく調べている状況です』
ニュースのアナウンサーの話はもちろん私たちが体験したことである。そういえば……。
「眼鏡は?」
「あぁ、あのボーイは『何やってんだか』とかいいながら去って行ったよ」
ジョルダーさんはそう言う。私は「ありがとう、ジョルダーさん」と言い、近くにあったリュックから例の本を取り出す。
『お疲れさんだな。全ての技の説明をしてやろうかな。筆術だけではあるが(本章の7.5節参照)』
私はそこにある文字を見ながら校長先生に対して思った。
私の側に金では買えないモノが揃いましたよ。だから校長先生も金にこだわらなくていいじゃないですか。それはきっとあなたの胸の中にありますから。だからいつもの校長先生でいて下さいよ、と。
そんな私の思いを知らない目の前の三人は愉快に話し合っていたのだった。何はともあれ、ひとまずこれでよかったのだ。




