4節 オリジナルにはなれない
片っ端から倒していった私たちはついにメアちゃんと合流した。そしてついに最後の黄金の女性だけとなった。
「私はJに愛された女。そして必ずトランプの中にはジョーカーちゃんと十一のJさんが入っている。そんな私の名前はジョルコよ?優しくしてね?……何このセリフ……気持ちわるっ!!」
セロリアさんもメアちゃんも私を見て頷く。その頷きに私も返した。百パーセント以上、彼女の中に能力的にではあるがジョルダーさんがいる。というかジョルコって……。
「なーんだ。ジョルダーさんか。なら二人とも倒し方とか知っているよね……ね?」
反応がない。しばらくするとメアちゃんが乾いた声で言う。
「お兄さん。あの時、ジョルダーさんは私たちよりも上の幹部って言ったわよね?」
「あぁ、言ってたね」
「あの時、言えなかったんだけど私たちのボスよ」
彼女の言い放った「私たちのボスよ」という言葉が私の脳内で何度も再生される。
いや、待って。何その展開。何度も似たような敵を倒してレベルを上げていたのにいきなりラスボスに遭遇してしまう感じの展開だよ、これ。どうするの。
「まあ、何にせよ。ボスだからね。それなりの覚悟をしないとね」
さすが姉御。なるほど、真剣に戦うんだな。
「ごめんなさい……何してるの?海塚君。死にたいの?」
いやいや、それはこちらのセリフですよ、セロリアの姉御。戦うかと思いきや土下座で謝罪ですか?セロリかと思ってスーパーで買ってきた食材が家に帰ったらブロッコリーだったというぐらいの驚きですよ。というか無言でメアちゃんも真似してるし。これ、悪いの私ですか。
「お前ら、そんなに死にたいならジェンガが崩れ落ちるかのように私が徐々に倒してあげますよ。あなたの心の中に私もジョインとジョイン……だから訳分かんねえしきもいって!!」
私はつくづく思う。この二人はこいつ(原型の方)がボスでよかったのだろうか。
「今よ」とセロリアさん。
「妖人」
メアちゃんがそう言って指で綴る。するとセロリアさんの足が薄くなり、まるで浮いてるかのようになっている。その見た目はまるで幽霊だ。おまけに鎌を持っているからなおさら恐ろしい。いや、本人に失礼だが彼女の存在自体が恐ろしい。
そのまま彼女はジョルコさんに飛びかかる。
「ジョルダープロテイン」
鎌が弾かれた。私たちの後ろに飛ばされる姉御。
「姉御に何を?」
「体を硬くしただけですね」
「教えていただきありがとよ、御無封選」
「オートプレイ」
メアちゃんの作り上げたぬいぐるみたちがジョルコに直撃する。
うさぎのあの大きな鎌が心臓に突き当たった。うさぎはそのままその鎌をそこから引き抜く。すると女性はその場で足を強打し倒れこんだ。
「私の可愛い彼女たちに何をしてくれるんだ?君たちは?」
「安心しろよ、俺たちの手でお前も彼女たちと同様にしてやるからよ」
黄金の女性たちの砕けた体のそばで私は彼に伝えた。
どうなるかなんて知らない。でもやらなければここから出られないし、オリジナルが敵であろうとも私の性格的に救ってやりたいと思ってしまうのだった。




