5節 土のような男
彼を見つめる私。彼もまた私を見つめる。
先に動いたのは彼だった。
「土豪」
私を周り囲む壁を作り、私に向かってその高い壁の部分から土が降り注いでくるかのように私を襲ってくる。檻に閉じ込められた土砂崩れとでも言ったところか。私は指を動かして「向攻」と言う。
私とは反対側に土が落ちていく。
なるほど。ここは建物だから土の筆術なんて使えないと思っていたが、使えるではないか。そういや、あの眼鏡野郎と学校で初めて会った時、こいつ止められて土の雪だるま作ってたな。何気にクオリティ高くて壊して悲惨な顔を見たかったけどな。
「海塚、それありかよ?」
「ないなんてことはない。あるからこそ出来てしまうんだよ」
「壊れた。海塚が壊れた」
「あぁ、あの本を手にしてから壊れたかもしれねぇが、大事な親友に対して俺の攻撃を与えるのが何よりも辛く壊れてしまいたくなるんだよ」
「そうだよね……ごめん。土破真理」
私と彼の間に土を盛り上げながら地割れが私に向かって迫ってくる。私はそれを物理的に右に動いてかわす。
「土迂砲」
土でできた砲撃を私に向ける。土岩の玉が私に向かって飛んでくる。
「土気」
どんな技かは分からないけど、攻撃はないようだ。
「土壊」
彼はその場に倒れた。そして彼の下に彼の姿を形作る穴が現れ、彼をそこに落とした。
審判の女性が私のいる方の手を高くあげる。
「勝者、海塚。おめでとうございます」
「は?待てよ。俺はあいつを倒してないぞ」
「彼は自滅を選んだのでしょう……自滅というルールあるなんて言いましたっけ?つまりそういうことです。さぁ、二回戦を始めるのであなたはこの壁にいる二回戦者と移り変わらせてもらいます。では、どうぞ」
その壁の部屋が解かれた。他の六人の人々が私を見つめた。私はそこから動き、女性の声に呼ばれた二回戦の二人と入れ替わる。
私は自分の出番が来るまで親友を倒したことに後悔を感じて気を落としていた。彼はやはり土のような男だった。何も嫌がらずに人に踏まれるあの土のような優しさというか温もりさというかそんなものが山口にはあった。
そして次のトーナメント相手が以下のように発表された。
『第二ステージ
第一戦 海塚 VS セロリア
第三戦 月野 VS 鈴木』
私は親友のことで他の人の名前をしっかり見ていなかった。セロリアという人はメアちゃんと同じように妖術などを使用してくるのだろうか。
何はともあれ、親友の分も俺は勝ち抜かなくてはならない。
私は目の前にある部屋に入りながらそう思った。




