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異世界の姫さまが空から降ってきたとき  作者: 杉乃 葵
第六章 朱堂アリス
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第七十八話: He demanded

 「うちの学校のユニーク枠って、なんですか?」


 爺様が麗美香から全て聞いているのならと、単刀直入に切り出した。そもそもこっちはただの高校生。こんな爺様と駆け引きやら会話術とか考えたところで大した意味は無いだろう。さくっと訊いて、さくっと答えて貰って、さくっと帰ろう。こんなところに長居は無用だ。緊張のあまり、自覚できる程、頬が引き攣っていた。


 爺様からの返答は無い。じっと押し黙って鷹の様な眼で此方を睨み続けていた。


 「いや、あの、麗美香さんから聞きまして。爺、、、えっと、そちら様がユニーク枠をお作りになられたと。」


 眼力に負けて、相手から早く会話を引き出そうと情報を急いで追加する。


 「広報誌に載ってるはずですが?」


 敢えて分かり切った返事を返して此方の反応を伺ってきた。

 冷や汗が出る。

 さっきの会話から考えれば、麗美香から全てを聞いているはずであるのに、とぼけて、此方の反応を視ている。ならば。


 「麗美香さんから全部お聞きになっていると思いますけど?」


 喧嘩腰に聞こえてやしないかと、内心ぶるったが、爺様は別段気にした素振りは見せなかった。爺様のやり方に多少イラッとしたのは事実である。それがつい口調に出てしまったのは若さ故?


 「ああ、聞いてるよ。なんでも悪い事を私が企んでいるとか。」


 麗美香おまっ。もっと巧く云えよ。というか、そもそもこの件に関して麗美香は味方とは限らなかったんだ。むしろ、敵と考えた方がいいんだった。どうも麗美香が敵って実はピンと来ない。別にこいつを信用しているつもりはないのだが、本気な意味で悪退いことをするようには見えない。それは甘い考えなのかもしれないが。


 「あは。いえ、それは、その。。。つまり、言葉の綾でして。へへへ。」


 自分で自分の発言や様子に腹が立つ。なんかすごく謙っている。ビクついている。もっと堂々としていたいという気持ちと、巧く会話出来ない事でのイライラが募る。それに麗美香にそんな自分のみっともない姿は見られたく無かった。別に麗美香を意識しているわけではなく、女の子の前で格好つけたいという男心からだ。ほんとに泣けてくる。一刻も早く此処から逃げたかった。


 「まあ、そんなに怖がらんで。」


 当然といえば当然。此方の態度は隠しようのないぐらいに萎縮して見えているのだろう。ごめんなさい、悪かったです、もう探ったりしません、って云って逃げ出したかった。

 自分ってこんなに弱かったんだ。冷静な自分が自分をそう評価していた。そう思うと同時に、少し落ち着きを取り戻してきた。

 こほんっと咳払いをしてから


 「ちょっとした好奇心で、なんかあるのかなあっと。まあ、そのぐらいの軽い気持ちでちょっと麗美香さんに調査をお願いしたんです。済みません。なんかこんな大事になるなんて思ってなくて、その、ちょっとした子供のいたずらみたいなものだったんです。」


 一気に言い切ると、そのまま立ち上がって、深々と頭を下げた。


 「すみませんでした!」


 これで乗り切れるだろうか・・・・・・と思ったが甘かった。


 「それで、どうして悪巧みみたいな話が出たのかな? 何かきっかけがあったはずだよね。」


 さすが老獪。あっさりとは引き下がってくれない。ならば、麗美香が知っている情報の範囲で巧く話をまとめるしかないか。さすがにNULLさんから頼まれたって云う訳にはいかないし。ならば。


 「屋上での出来事がきっかけです。」


 爺様の眉がぴくりと動いた。爺様が口を開くよりも先に、言い切ってしまおうと先を急いだ。


 「既に、麗美香さんから聞いているとは思いますけど、あの怪物の件。あの時の麗美香さんや、他に一緒に居た人を観て、その、ちょっと普通とは違うなと思ったんです。なんというか、その、特殊な能力を持っているって感じで。」


 画面に映る爺様は、瞑目し何やら思案している様子だった。


 「なので、その、こういう人たちがユニーク枠で入って来たのかと思いまして。じゃあ、なんで学校に集めたのかと。まあ、そんなところです。」


 ふぅっと溜息が出た。それに釣られる様に、爺様もふぅっと息を吐いた。


 「なるほど。それで麗美香に頼んだと。ふむ。あー、他に誰かに頼んだりしたかな? あるいは、誰かにそんな話をしたかな?」


 背筋が凍るというのは、こういうときの事を云うのだと思うぐらい背中が冷やりとした。なんだこれは。誰にも云ってなかったら、自分が口封じされたら終わりみたいな雰囲気じゃないか。やばい。とは、云え、誰かに云った覚えもなく、確かニーナにも云って無いよな。それに、誰かに云ったとして、それを此処で云っちゃうのはどうなのだろう。その誰かに火の粉が降り掛かるよな。いや、待てよ、誰かが居るように匂わせてってのはどうだ。いやいや、なんか拷問してでも吐かせられるとかだとやばいじゃねえか。


 返事が出来ぬまま、ダラダラと汗ばかりが流れる。どっちだ。居ると云った方がいいのか、居ないと云った方がいいのか?


 微かな望みを掛けて、隣の麗美香を観た。


 彼女は退屈そうにソファーに寝そべりながらスマホをずっと弄り続けたまま、此方を視ることは無かった。


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