レギオン -始メル-
カードの種類を一つ増やしました。増えた種類は
A-アビリティです。
「畜生…どいつもこいつも…」
俺は一人部屋で項垂れていた。今日、自動販売機にジュースを買いに行くと変なおっさんにあった。俺のことをかわいいとかふざけたことを抜かすヤツだったがなぜか雰囲気があのゲームで合ったむかつく男と似ていたので家に帰ってからこうやってまた怒りがぶり返してしまったのだ。
「あれれ~姉ちゃんご機嫌斜めだね~どうったの?」
むかつく弟の声が聞こえる。そもそもこんな思いを俺がするはめになったのも此奴のせいだ。
もともと俺はとあるVRの格闘ゲームで手当たり次第に敵を倒し、そこで無敗のチャンピオンとなっていた。だがある日、弟に「姉ちゃんってホント馬鹿だよねー。あんなただ殴り合うゲームでチャンピオンになったってお山の大将もいいところだよ」と言われ、売り言葉に買い言葉で「はっ!!なんのゲームだろうと俺は勝てる。力だけじゃなくて頭もあるって認めさせてやるよ」と調子に乗ってしまい。「そうじゃあこのゲームやってくれないかな?それで指定した相手を倒して見せてよ」と言われてその挑戦を受けてブレイブカードを始めたのが始まりだった。
…結果、俺は弟が指定した相手に襲撃をかけ…コテンパンに負けた…結果を認められず再戦をしたら今度は舐められて手加減をされて負けた。あれ以来、俺のプライドはボロボロだ。なんどもなんども勝つために再戦をしようとするがアイツはひらりひらりと躱して逃げやがる。
「ふう…」
俺は大きく息を吐いた。起き上がりそして歩き始める。
「お、姉ちゃんブレイブカードやるの?せいがでるねー」
「うるせ!!」
「うわっと!?アブな!!」
にしにしと笑う弟の顔にモノを投げて俺は部屋へと入る。
しっかりと戸締りを行い。VR装置に手を掛けた。
「今日こそはアイツを…あの炎ノ魔皇を倒してやる!!」
俺はそう叫んで仮想世界へと意識を移していった。
☆☆☆
「レギオン作りたい」
家で寛いでいると瀬那と一緒にやってきた優理が突如そう呟いた。
「そうかそうか。まあ頑張れ」
俺は適当に受け流し、今週のカードゲーム雑誌を読む。ほえぇ~そんなコンボあったのか~とかああ、それは知ってたなどと言いながらゴロゴロしていると優理は俺の読んでいる雑誌を取り上げ俺の顔の前に自身の顔を持ってくるとちょっとむすっとした顔で先ほどと同じ言葉を言った。
「レギオン作りたい」
「だから頑張れっていってるだろう?」
俺は雑誌を取り返そうとするが半歩下がった優理にあっさりと阻止される。俺は再び体を少し浮かし手を出すがまたも優理はひらりと躱した。
「レギオン作りたい」
「はいはい分かってますよっていい加減かえせ!KAESE!!」
俺は立ちあがり優理へと飛び掛かる。彼女はその小さい体を活かしてそれを躱す。お互いに立ち位置を変えた俺らは構えを取った。戦場に緊迫感が満ちる。
「っ…動けばやられる…!!なんていう気だ!!」
「ふ、誰も私を止められない…」
ジリジリと横に動く俺たちの間に瀬那割り込んだ。
「そこまでです。二人ともふざけないでください」
「第三者の介入だと…!!真の敵は優理ではなかったのか!!」
「強敵…」
「ふ・ざ・け・な・い・で・く・だ・さ・い!!」
「「はい」」
笑顔で切れる瀬那に言われ俺たちは大人しく元の位置に戻る。その際しっかりと雑誌は返してもらった。
「ところでいきなりどうしたんだよ。今までレギオンに興味なんかなかっただろう?」
真面目な話に戻ったところで俺は当然の疑問を質問した。
「それはですね…最近なぜだか良く勧誘されるんですよレギオンに優理さんと二人揃って」
「良かったじゃないかそれならそれでわざわざ作る必要もない」
なんだっと言って俺は再び雑誌に目を通す。カードのイラストやテキスト、名前に隠されたカード同士の意外な関係性にほろりとしながら再び寝転がる。
「まあ、誘われること自体はいいことなのかもしれないんですけど…なんていうか目線が嫌なんですよ」
その言葉を聞き俺は理解した。
「なるほど直結厨か。いるんだよな~たまに。カードゲームを元にしてるから他の所よりかは少ないけど。まあ、どこにでも現れるからなああいうやつらは、ネカマかもしれないのにようやるよ。…いや最近は仮想の肉体は女だからネカマもありだっていうやつまで出てきてるんだっけか。水精のヤツがそういう輩に粘着されて困ってるって言ってたな」
俺は正直理解したくない物を考え顔を歪める。恋愛は自由だからといっても、仮想の体は女だからといっても中身男に執着する気持ちは正直良くわからない。薄気味悪さすら少し感じてしまうのが本音だ。そもそも好きでゲームをやっているのにそこから無理やりリアルに持っていく…踏み台にするようなやり方は好きに慣れない。
「でも、それなら俺を誘う意味はないだろう?適当に女アバター集めてレギオン作ればいいじゃん」
そうだ、そもそもその理由なら俺を誘う意味はない。むしろ直結に絡まれそうで面倒だ。俺は起き上がり、棚からカードを取り出して先ほど雑誌で見たコンボを再現するためのデッキを作成していく。
「レギオン作って」
優理はそういってコンボの要、他のカードを強化するカードを俺の手からひったくる。
「お、第二ラウンドでも始める気か?…いいぜ…俺の本気を見せてやるよ…」
腕をぽきぽきと慣らし再び茶番を始めようとする俺たちを瀬那が止める。
「ちょっとちゃんと話を聞いてください!!確かに女性アバターを探して組めばそれでいいのかもしれませんが、あまり知らない人とレギオンを組みたくもありませんし、それに最近は女性アバターを使って女を装ってオフ会までこぎつけようとする直結厨?もいるって話に聞きますから出来れば身内で作りたいんですよ!!」
俺はそれを聞いて構えを解いた。そして少し考える。
(確かに話には聞くな。女性だと名乗って油断させオフ会まで引きずり出してから暴露して襲う厄介なタイプだっけか。まあでもそういった場合ならことが起こる前に俺がこっそりついていって通報すればいいだけだし、怖いネット社会のいい経験になるだろう。経験をさせずに何もかもから守るっていうのは俺の主義にも反するな。それに何より…)
「あのな、俺は孤高のデュエリストってことで話が通ってるの。これでも七色の担い手の一人、炎ノ魔皇って呼ばれてる有名なトッププレイヤーの一人なんだからな?レギオンなんて組んだら俺の魔皇のイメージ崩れるだろう?」
きらりと歯を光らせ片目を閉じてチャーミングにポーズを取る。そう、俺はこんなんでも一応トッププレイヤー。バハムート百匹狩りで名を轟かせた七色の担い手の一人なのだ。
「炎ノ魔皇?七色の担い手?」
俺のことを知らなかったのか瀬那が疑問の顔を浮かべる。優理はそれを見て説明を始めた。
「おじさんの異名。私はその名を聞いておじさんに勝負を挑んだ。…正確には雷帝を倒した時に炎皇のことを教えてもらった」
「な!?ユーリがどうして住所不定の俺を襲ってきたのかわからなかったがライムのヤツが喋ってたのか!!まったく面倒事押し付けやがって…」
「面倒事?」
優理が怒りの波動を出しながら俺に聞いてくる。俺はぶるぶると震えながら
「いえ、はい。面倒事ではありません。とても楽しく今過ごさせて頂いてます。…こほん七色の担い手って言うのは俺…炎皇を含めた七人、炎皇、水精、風賢、雷帝、地勇、光将、闇妃のことを指しているんだ。…ちなみに瀬那は他の担い手にも何人かは既にあっているぞ?」
俺のその言葉に瀬那は驚いた顔する。
「え!?そうなんですか!?誰だろう…?」
俺は瀬那が考え始めたのをいいことに再びデッキ作りに戻った。このままレギオンのことを忘れてくれると助かる。…だがそうは問屋が卸さなかったようだ。
俺の右腕を優理が背伸びをしながら掴んでいた。その目には有無を言わさない力が籠っている。彼女はここで説得は無理だと判断して強硬策に出てきたのだ。
「もうアプリ作らないよ?」
「え?何かいった?」
鈍感系主人公を装い俺は優理の発言をなかったことにしようとする。
「もうアプリ作らないよ?」
だが律儀にも優理は言葉を繰り返した。俺は諦めずにえ?っと言葉を放ち再び聞こえなかったことにしようとしたが…優理に睨まれそれを止めた。感じで言えばえ?なに…お、おうっと言った感じだった。
「やだな~優理さんご冗談を…もうあなた達なしでは俺のアプリは売れなくなってしまったんですよ~ちょっとふざけるのはやめてほしいな…」
そう、俺は既にこの幼女たちに生命線を握られていた。瀬那が増え、より一層この部屋にやってくるようになった二人は俺と遊ぶ時間を確保するために二人で俺の仕事を手伝い始めた。努力型の瀬那と天才型の優理は凡人型の俺よりはるかに優れていて今や素材は全て頼りっきりだ。俺のアプリのお客さんも二人の書いた美麗なイラストを楽しみにし始めた。こうなってしまったらもう終わりだ。一度きれいなイラストに慣れた消費者はもとのイラストには戻れない。ドットがポリゴンになり、ポリゴンがCGになって淘汰されていったように既に俺のイラストは用済みなのだ。
知らぬ間に仕事を乗っ取り、さらにそれを弱みとして握る。最近の天才幼女のしたたかさに内心汗をだらだら流しながら俺は優理に恐怖する。大人の威信とか言っていたことが遥か昔のことに思える。
俺が遠い目をしていると再び優理から声がかけられる。
「アプリ…「すいませんでした!!~はい!レギオン作らせていただきます!!」」
優理がそれを言う前に俺はジャンピング土下座でそれを了承した…。




