番外編 威張る幼女
「~!!」
パソコンを叩く音と優理と瀬那が見ているアニメの音だけが部屋の中を響き渡る。俺がふとテレビを見ている二人を見ると二人は口を開けアホっぽい顔をしながらポケーとテレビを見ていた。
「…」
俺は一旦仕事を止め、彼女たちのためにお菓子と飲み物を取りにいく。もう彼女たちが来るのはいつものこと…日常みたいなものだ。しっかりと子供用にお菓子やジュース類は常備してある。
棚からポテチを取り、冷蔵庫からオレンジジュースを取って割れないようにプラスチック製の容器に入れる。全ての準備が終わったらそれをお盆に乗せ、彼女たちの近くに置いた。
「…」
俺はその場からするするとと立ち去る。そして扉の影から様子を伺った。
相変わらず何も考えていない顔をした幼女たちは何も疑うことなく近くに合ったお菓子を手に取り食べる。あっという間に消費されたそれを見て俺はとあるいたずらを思い付いた。
「くくく…これは面白くなりそうだぞ…!!」
俺は再び棚に行き、そこから俺用に買っていた激辛お菓子を取り出す。もちろん子供に悪影響が出ない範囲でのものだ。俺はその袋を見られないように皿に入れそれを持って行った。先ほどと同じように差し入れとして置き、扉の影から出来事を見守る。
二人は何も気にせずお菓子を手に取り口の中に入れた。そして目をいっぱいに見開いて…
☆☆☆
…俺はその惨状を見ながら少しやりすぎたかなと反省していた。
今、俺の目の前で瀬那はあまりの辛さに床に倒れ目を虚ろにしながら口を開き涎を垂らしている。時折辛さがぶり返すのかぴくぴくと細かな動きを繰り返していた。ユーリはあまりの辛さに口を押えながら寝転がり暴れている。その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。動き回ったせいでワンピースの裾の部分が乱れ白い下着が露わになってしまっている。
「まさか、ここまで劇的な反応を示すとはな…辛いもの初めて食べたときは皆こんなもんだっけか?う~ん。ずいぶん昔だから思い出せないな…ともかく辛さが強すぎたか…」
だが…っと俺は考える。ここで少しでも俺が悪いと見せつけてしまえば彼女らに弱みを握られてしまう。これはただのいたずらなのだ。あんな反応を示すとは思ってもいなかったわけで…うん堂々とネタ晴らしをするのが一番だな。それで速く終わらせるべきだ。
「どうだ幼女ども!!アホ顔でテレビを見てお菓子をしっかりと確認しないからいけないんだぞ!!今回はお菓子だが、虫とか知らずに口に入ってもわからんからな!!」
俺はあくまでこれはしつけという体で話をすることを決めた。注意するためにわざわざやったんだよといたずらではなかったんだよとして怒りを鎮める作戦だ。
その言葉に相変わらず瀬那は倒れたままだがユーリは辛さに耐えながら立ち上がった。そしてジュースをかぶっと一気飲みしていつも持ってきてるポーチから何かを取り出す。
そしてその一つをおもむろに俺に投げ始めた。
「いて!!何するんだよ!!…硬貨?なんでまたこんなものを…」
「ジュース買ってこい!!」
怒りの顔でこちらを見つめる優理。俺はその後ろに虎の幻覚をみた。一歩後ずさりながら反論をする。
「そんな怒らなくてもいいだろう?ちょっとした出来心だったんだよ」
俺は優理をなだめようとするが優理の怒りは収まらない。優理はさらにポーチからUSBメモリを取り出した。俺の顔は恐怖で引き攣る。
「ゆ、優理さ~ん。そのUSBは何かな?キミはいったいそれで何をする気かな?」
「この中には私が作成したウィルスが入ってる。買に行かないならこれで作ったアプリを削除する」
一歩歩みだす。優理を俺は必至の思い出言葉をかけ止める。幼女に脅されていい大人が行動するのもいやだが努力の結晶のアプリが消されるのも困る。何より俺の生活資金が困ったことになってしまう。
「ちょ、ちょっとまって~!!優理は今自分が何をしようとしているのかしっかりとわかっているのかな?クリエイターに取って作品は命だよ?それを作るのにどれだけの時間と愛情をかけているか…だからやめようね~!!」
じりっと一歩優理がパソコンに近寄る。
「まって!!まってまって!!争いからは何も始まらないラブアンドピースだ!!お互い慈愛の心を持とう他者を許す気持ちを持つんだ」
じりっとさらに優理が近寄る
「田舎のおじいちゃんとおばあちゃんがなくぞ、ホラかつ丼出してあげるから罪を認め大人しく投稿するんだ!!」
じりじりと大きく優理が近寄りパソコンの前に移動する。
「まって今のは悪かった!!つい調子に乗って警察官ごっこしてしまった悪かったからホラやめて」
俺の意識を逸らす作戦も失敗し優理の手がパソコンに伸びる俺はそれを見て…
「すんませんでした~!!今すぐ買ってきますのでなにとぞお許しお~!!」
土下座をした…
☆☆☆
「まったくこの時代、自動販売機探すのだって大変なんだぞ…」
ぶつぶつ言いながら俺はひたすらに町をさまよっていた。どこも彼処も寂れてしまっている。この時代、商店街なんていうのは様々なものが手に入るVRに浸食されその数を減らしていた。多くの店が暖簾を卸し、元商店街のこのあたりはシャッター街になっているのだ。ただ、それでも店舗が近くにあるというのは優れているのかコンビニ的な役割で生き残っていたり、完全に通信販売オンリーにして生き残っている店舗もある。だがその役割も形も大きく変わってしまったのは事実だ。
「お、あったあった」
やっと見つけた自動販売機に俺は近づき、もらった硬貨を入れる。並ぶジュースの中、一瞬炭酸が目に入り、これにしてやろうかなといたずら心がうずいたが、もう一度やると本気で消されかねないので大人しく辞めた。果実系のものから適当に選んで購入する。
「まったくあの幼女たちは俺のことをなんだと思ってるのかね~」
「あ゛!?幼女だと!?」
「いくら天才児といっても所詮は子供…ここはガツンと大人の風格をみせるべきかもな…」
「へ!!上等じゃね~か!!やれるもんならやってみろよ!!」
「さっそく帰ったら何か対策を…と誰だ?」
落ちてきたジュースを取り、立ちあがた俺は気づかずに近くに来ていた人物に気付いた。思わず俺は問いかける。
「ああん!?誰…だと!?てめぇさっきから俺を無視しやがってたのか!!」
俺が目にしたその少女…いや幼女は金髪でかわいらしい顔をしながら胸を張りこちらを見下ろしているつもりなのか顔を上にあげていった。しかしこちらからは精一杯見上げているようにしかみえない。
(不良?この髪…地毛か!!そういえば肌も白いし、目も青い。ハーフか何かかそこまで顔の堀は深いようにみえないからな、行ってみればアニメ顔ってやつか)
「はあ、嬢ちゃん。あんまり目上の人間にそんな態度は良くないと思うぞ。それにそんなかわいい顔で威張られても全然怖くなんか…ぐば!!」
俺は突然腹に強力なパンチを食らった。この子がVRチルドレンかわからないがVRチルドレンたちの基本的身体能力はオリンピック選手クラスが平均値だ。その強力なパンチが俺の腹を抉る。吹っ飛ばされ、塀に叩きつけられた俺は怒りの表情で幼女を見た。
「か、かわいいとか馬鹿にしてんじゃね~ぞ!!今回はこの一発で許してやる!!じゃあな!!」
そういって幼女は立ち去っていた。
「なんなんだよ…もう…」
最近幼女に絡まれ過ぎだ。次から次に問題がやってくる。まったく俺は保母さんじゃねーんだぞと心の中で思いながら帰宅の途に就いた。
☆☆☆
「ただいま~」
「おかえり、ん」
お帰りといった後、優理は手を前に出して物を要求した。俺は買ってきたジュースを渡す。
「ほらよ。安心しろ普通のジュースだから」
「ん。さすがに次はなかったから良かった」
恐ろしいことを言いながら笑顔で受け取る優理にゾクッとしながら。俺は中へ入っていく。そして中で俺は予想外のものを見ることになる。
「…優理。瀬那は何しているんだ?」
「…おじさんのせいだからね」
俺の見る先で瀬那は先ほどのように項垂れた後、高揚とした表情でのろのろと歩きだし、あの激辛お菓子を取り出して食べた。そして再び床に倒れ前と同じ状態になる…それを繰り返していた。
「「…」」
俺と優理が無言になってそれを見ていると気付いた瀬那がこちらに向かい歩いてきた。
「あ、兄さん帰ってきていたんですか?ははは、恥ずかしいところを見せてしまいました…ところであのお菓子はもうないんですか?あの辛さが病み付きになってしまって…あったら分けて欲しいんですけど」
つらつらとそういう瀬那に俺とユーリはドン引きしていた。…どうやら瀬那にはMの気質があったらしい。初めて食べた刺激的な辛さが癖になってしまったようだった。
「もう一度言う。おじさんのせいだからね」
「すまなかった」
俺は前とは違い、間をおかず謝った…
番外編 威張る幼女おわり




