チュートリアル -レギオンとのふれあい-
それからの帰り道、デュエル山賊が襲ってくるなどといったイベントも特になく俺たちは始まりの町の城門までやってきていた。
「やっと戻ってきた…」
「ちょっと疲れましたね…」
「おいおい若いの元気が足りないぞ?」
二人からジト目を向けられる俺
「そりゃ、一人ボス戦ってないんですから余裕ありますって」
「なんでこんなに無駄に元気なのこの人」
「無駄ってなユーリ酷い言い方だ。このな俺の心の奥底に眠る少年の魂が俺に無限の力をくれるのよ」
はあ~と二人そろってため息を吐く。どうやらいつの間にか仲良くなっていたらしい。
そんなことをしていると後ろから声がかけられた。
「少年?少年じゃないかね!!」
俺たちが振り返るとそこには上半身裸で下半身ズボンのマッチョな集団がいた。
「あ、アーサーさん…。相変わらず素敵なデュエルマッスルですね」
「ふ、言ってくれるな少年。我々は常にデュエルの練習のためにクマと戦っているからな。そういう少年はまたデュエルマッスルが落ちているんじゃないか?ちゃんとエアードロー練習はしているのかね」
「あはは…。まあ、ぼちぼち?」
俺はそんなことを言いながら言葉を濁す。相変わらず暑苦しい集団だ。
「だれこれ?」
ユーリが服を引っ張り質問をしてきた。心なしかセナさんも答えを求めている気がする。だがそれは俺が答える前に相手が答えてくれた。
「我々か?我々はな嬢ちゃん」
その言葉と同時に仲間たちが配置につく
「「「「我々はレギオン」」」」
「マキシマム~!!」
「「「「「エーックス!!」」」」」
マキシマムの段階でアーサーはこちらに背を向けエーックスの部分で両手を上に伸ばし、足を広げて顔だけを半分こちらに向けてきらびやかな光る白い歯を見せた。
「なにやってるの?」
「はッ!!すまん!なんかノリで!」
一緒になってポーズを取っていた俺は二人の近くに戻る。
「アーサーたちはデュエルマッスルをこよなく愛するレギオン、マキシマムエックスのレギオン員なんだ。ちなみにアーサーがレギオンリーダーって言ってレギオンで一番偉い立場の人だな」
俺がそういうとアーサーは親指を立て白い歯を見せながらニコリと笑う。
「そうだ。我々はこの…むん!!デュエルマッスルを愛している…ふん!!少年と一緒にいる君たちもこのマッスルの素晴らしさに気付いたらぜひとも我がレギオンに入りたまえ…それではな少年」
ポーズをとりながら説明をしていたアーサーはそれだけ言うと俺たちの前から去っていった。あまりの出来事にセナさんは引き攣った笑みを浮かべたまま停止し、ユーリは口を開けてぽかんとしている。
「あはは…すごい人たちですね。リアルでもむきむきなのかな…」
「いや?そうでもないらしいぞ?中の人は40代くらいの中年でヒョロヒョロのおばさんだって前言ってたしな」
「…真逆」
「え!?そうなんですか!?」
「ああ、なんでも自分が普段ヒョロヒョロだから自分とは真逆のデュエルマッスルを見てひかれてしまったらしい。…リアルであんな行動をやっていたらドン引きものだからなでもVRという仮想現実の世界ではそれが許され成りたい自分になることができる。もとの自分と関係なく自分のすべてをさらけ出せる…まあそういった事情でああいうキャラになったのだろう」
「ふーん。でもそれなら中身の情報言ってよかったの?」
「まあ、聞いたっていっても年齢とおばさんだって言う情報だけで身バレはしてないからな同じ情報ならごまんと該当する人がいるし、別に構わなかったんだろう。っといつまでもここで話してないでさっさと完了報告をしに行こう」
俺はそう言って歩き出す。ユーリはその後をすぐついてきた。セナさんはその場に留まり。
「なりたい自分になれる…そんなもの僕はなれなかったよ…」
暗い顔しながらそういうと俺たちを追って歩き出した…。
☆☆☆
…完了報告を終えた俺はリアルの世界へと戻ってきていた。ちなみに完了による報酬は風影斬というマジックカードだ。初心者教育の説明で疲れた俺は風呂に入り、そのまま布団で横になって寝た。
…深夜、突然聞こえてきた物音に俺は目を覚ます。
「~!!」
(なんか話声が聞こえる!!え!?強盗?)
俺はゆっくりと布団の中から起き上がる。そして近くにあったハエ叩き(虫を直接手でつぶすのが嫌なので至るところに常備されている)を手に取り構えながら扉を開けた。そして玄関を確認する。
(鍵はしっかりと掛かっている?中にいるものが閉めたのか?)
リビングの方を見るとそこから光が漏れているのがわかった。俺は手に持ったハエ叩きを握りしめながら恐る恐る扉を少し開ける。そしてそこから中を覗き込んだ。そこにいたのは…!!
「…優理?」
体育座りでテレビを見つめる優理の姿だった。
俺に気付いた優理がこちらを見る。
「…なんでこんなところでテレビを見てるんだよ…どうやって入った?」
「アニメ見てた。鍵は合鍵もらった」
「そうだった。忘れてた。いちいちチャイム鳴らすのもうるさいからいつでも遊びに来れるように合鍵を渡したんだった…それにしてもこの時間は非常識だろ。なんのアニメを見ているんだよ」
俺はテレビに流れるアニメを見る。それは昼間おれとセナさんの話題になったアニメだった。
「優理まさか…話に一人だけついてけないのが寂しくて一人でこっそりと勉強していたのか?」
「…」
顔を少し赤くして優理は体育座りをしたままの脚へ顔を埋めた。
「はあ、それで俺の部屋ならアニメのブルーレイくらいあると思ったのか…まあ確かにあるがこの時間はダメだ。明日みせてやるから今日はもう帰れ、よい子は寝る時間だぞ」
俺は優理の腕を引っ張って彼女の部屋へと戻そうとするだが、優理は腕を振って抵抗した。
「やだ!!まだ見てる!」
「やだってお前な…」
絶対に見切るまで動かないという目でこちらを見つめてくる優理。俺ははあとため息を吐いて優理の隣に座った
「なに?」
もっと必死に部屋に帰させると思っていたのだろうきょとんとした顔でこちらを見つめる優理に俺は言う。
「せっかくだ。俺も見ておこう。ちょうどおさらいしたかったところだしな。だから今回だけだぞ」
「うん!!」
そうやって俺たちは一晩中アニメを見続けた…。




