チュートリアル -ダンジョン-
薄暗い木の葉っぱに隠された枝の上を俺たちは歩いていく。一歩足を踏み間違えれば落ちそうな恐怖のあるこの場所は風鈴の大樹の中だ。
「相変わらず高所恐怖症の人が来たら腰を抜かしそうなステージだよな、…まあ実際には落ちることはないからこうして普通でいられるんだが」
「そうですね~」
「ふんふ~ん」
俺に同意してくれたセナさんとピクニック気分で歩くユーリ。なんとも言えない緩い雰囲気の中俺たちは進んでいた。
「おっと敵だな」
そこに初めての敵が登場する。ドロっとした水色の物体…スライムだ。それが三匹やってきた。
「よし、モンスターについて説明する。手は出すなよ…デッキオープン!!」
俺はセナさんとユーリに後ろに下がってみておくように命令した。
「まず、モンスターをよく観察しろ、プレイヤーと同じように光る板が周囲にあることがわかるか?」
スライムの攻撃を躱しながら二人に質問を投げかける。
「うん」
「確かにありますね。モンスターもカードを使うんですか?」
「それは違う。モンスターはカードを使わない…これはカードではなくて強さの指標なんだ」
「強さの指標?」
ユーリは何を言っているんだという顔をしているがセナさんは俺が言おうとしていること気付いたようだ。
「あ、そういえば始めてあった時時間で強化されている…とか言ってましたね」
「そう、それだ。モンスターは時間をかければかけるほどあの光の板が増えていき、能力が上がったり、攻撃方法が増えたり、攻撃モーションが変わったりするんだ…時間経過で強化される理由はそのままだと時間をかければこのブレイブカードのルールだと必ず倒せてしまうからだ手札がライフのような扱いでいくらでも逃げて演唱ができるからな相手にもよるが。そうするとそれぞれの強さの意味がなくなってしまう。だから時間経過で強くなるんだ。強くなるまでに倒せないなら引き返して準備をし直せってところだな」
「ならさっさと倒した方がいいんじゃ?」
ユーリが当然の質問をしてくる。それは予想の範囲内だったので俺は答える。
「カードショップのところで強さが変わるとカードの出現率やレアの出現率が変わるっていっただろ?この板の枚数がその強さなわけだ。時間をかけると強くなるがカードの出が良くなる。だから強いプレイヤーはわざと時間をかけて倒して少しでもいいカードが出るようにするんだよっと」
俺はスライムを一匹切り裂いて倒す。そこにはノーマルのスライムのカードがあった。
「そして!!」
俺はもう一匹の二枚板のスライムを倒す。そこにはレアのスライムのカードがあった。
「まあ、こういうことだな」
「「なるほど」」
二人が頷いて意味を理解しているのを確認してから俺は残りのスライムに向き直った。
「それとユーリは進化カードについては知っているな?セナさんも知っているか?」
「は、はい。一応どういう物かだけは…」
「ならいい。見ておいてくれ。発動ファイアーストーム!!」
俺はスライムに対してファイアーストームを当てる…するとスライムはそれを吸収して真っ赤な色合いに変色した。
「こ、これは」
「進化した!?」
「そう、進化だ。特定のモンスターは特定のカードを使って攻撃すると進化し、別の種族に変わる…スライムは魔法系の攻撃を吸収し、その魔法の属性のスライムに変化するんだ。今回は炎で攻撃したからフレアスライムになっているな。このようにただのモンスターでも変化させることで有用なカードになることがある。それぞれの組み合わせは公表されておらず、自分たち自身で探し出すしかないんだが…まあ大体は攻略サイトに先人たちの試した組み合わせが乗っているからいざと言うときはそれを参考にするといい。このモンスターを倒すっと」
俺はフレアスライムを切りつけて倒すとそれはフレアスライムのノーマルカードとなった。
「こうして出るカードも変わるわけだ。既に進化した状態の進化カードっていうか進化した種類のモンスターが手に入るってことだな。この進化の組み合わせは自分でスライムのカードを召喚した時も同じでファイアーアーツなどを使えばフレアスライムになってくれる」
俺はカードを拾いしまった。
「とりあえずモンスターについてはこんなもんだ。次はデッキの展開タイミングについて説明する」
デッキクローズっと宣言し、デッキを閉じる。そしてデッキリロード宣言し、デッキを回復する。
「基本的には今やったみたいに敵を倒し、安全を確保できたらデッキをいったん閉じ回復させたほうが良い。再びデッキを開けば完全回復した手札五枚になれるからな。デッキ再オープンだけでも手札は五枚回復するがデッキは回復せず尻損になるからあまりお勧めはできないな。ただ、デッキを閉じている間は無防備になる。その状態でモンスターに攻撃されると一撃でやられてしまうため。常に展開した状態でダンジョンを進むというやつもいる。その場合、消費が激しくなるし、気づかずに敵と戦闘状態に入っていて知らぬ間に強化してしまう危険性もあるからどっこいどっこいだな。この辺は個人で判断していい。…それとこのゲームでは許可なくPKできない仕様だからデッキクローズ中のプレイヤーの襲撃は気にしなくていいぞ?デッキをオープンしてると許可されたと判断して襲い掛かれるようになる場合もあるが…まあそんなところだな」
そういって俺は一旦言葉を切る。
「まあ、とりあえずはこんなところだ。あとはボス戦の説明をすれば初心者研究は終わりだ。じゃあボス部屋に向かっていくぞ」
そういって歩き出した俺たちはすぐに止まることになる。上を偶然見上げたセナさんがその襲撃に気付いた。
「上に大きな蜘蛛が!!」
「なんだって!?デッキオープン!!」
「…デッキオープン!!」
「デッキオープン!!」
三人がそれぞれデッキを展開し、戦いの準備をする。そして敵の姿を確認した俺はそれがなにかに気付いた。
「ユニークモンスター軍隊グモ!!…やつら大型のボス個体を潰さないと小型は無限に湧くぞ!!気を付けろ!!」
俺がそういうのと同時に大量の蜘蛛が空から降ってきた…。
☆☆☆
手札を確認しながら俺は一番近くにいた小型の蜘蛛に切りかかる。吐き出した糸を体を逸らしてかわし、返す刀で切り裂いた。
切り裂いた個体がカードに変わるが拾っている時間がない。中にはそのまま谷底に落ちるものもあった。
「あ~あ。もったいない…。くそ、軍隊グモは絶好の稼ぎモンスターなのに…場所が悪いなこれは」
エアカッターを使い当たりの軍隊グモの小型を切り裂いたセナさんが話しかけてくる。
「拾えないんですかあの落ちたの」
「ここのボスのカードの特殊効果や一部の魔法を使えば使用者が一時的に飛行できるんだ。…だがそれがないとどうにもならないな他の方法がないわけではないがどっちにしろ今はどうにも出来ん」
泣き言を言いながらまた一匹の小型を潰す。カードに変化するがそれもまた下へと落ちていった。
「はあ折角のユニークなのに」
「ユニークって何?」
蜘蛛を槍で潰しながらユーリがこちらに合流する。その顔は集る蜘蛛たちを鬱陶しそうに見ていた。
「ユニークモンスターってのはダンジョンにまれに現れるモンスターのことだ。純ボス並みの能力を持っていて追加で特殊な効果をもっていることも多い。優秀なカードになることも多いが出現率が低いから取り合いになるモンスターだ。此奴はさして強くもないが増殖能力だけはやっかいなんだよ。本来なら稼ぎになるがそれができない今は邪魔なだけだしな」
「じゃあ、ちゃっちゃと倒しちゃっていい?」
「ああ、面倒だし終わらせてくれ」
「ん」
そういうとユーリはカードを発動させる。
「粉雪!!」
その言葉で周りの蜘蛛たちの動きが鈍る。…粉雪…あたりに粉雪を発生させて鈍らせたり、相手を発見することのできるカードだ。その後、アイスバードを呼び飛び乗る。
「氷冷の太刀!!」
ユーリの手に氷出てきたきれいな太刀が現れた。軍隊グモの大型がユーリとアイスバードを潰そうと糸を銃弾のように飛ばしてくる。だがそれは粉雪によって威力が下がり、太刀の一閃によって氷が付着して粘着力を失い落ちていった。そして大型のそばまでより、一瞬居合のように太刀をしまうと勢いをつけて切り裂いた。
「は!!」
真っ二つになった大型の蜘蛛が消えていく…それに合わせて小型の蜘蛛も消滅した。
落ちてきたカードを拾い俺はユーリに投げ渡す。だがユーリはそれを回避した。
「…おい」
「蜘蛛きらい。いらない」
なるほど自分から倒しに行くと言ったのはさっさと倒して蜘蛛を消したかったから。とはいえ倒したのはユーリなのだからユーリがもらうべきカードではある。
「セナにあげる」
「え、僕ですか!?」
カードをユーリに渡すために拾いあげていたところだったセナさんは驚いた顔をした。
「まあ、もらってやれば?そいつ風属性だし。俺も蜘蛛とか売りに出すだけだからいらないし。いらなかったらオークションかショップで売ればいいんだから」
「え、えーと…。わかりました。じゃあもらっておきます…」
セナさんは蜘蛛のカードを拾い集めしまった。
「ふう、余計な時間を取られてしまったがそろそろ進んでボス戦いきますか」
「そうですね」
「ん」
三人は再びボス部屋に向かって歩き始めた…。
☆☆☆
「ここがボス部屋ですか…」
「そうだ。ダンジョン徘徊型のボスとかもいるがここのはキチンとボス部屋のあるタイプだな。…中にいるのは風影の風見鶏っていうモンスターで風による攻撃と影を利用した回避がやっかいな相手だが体力が多いわけじゃないから初心者向きだ。俺は後ろから見てるから二人だけで頑張ってみなさい」
その言葉に二人はお互いの顔を見た後、俺を見た。
「私たち二人だけでですか?」
「これと二人で?」
「これとかいうんじゃない。初心者教育の全てを使ってボスを倒す…乙な展開じゃないか。安心しろ危なかったら颯爽と参戦して助けるから」
ぐいっと親指を立てていい笑顔を浮かべる俺。二人はそれを見て覚悟を決めたように頷くと中へと入っていった。俺も少し遅れて中へと入った。




