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魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】の各話一覧  作者: Koh


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第37話 "魔法"と"魔術"

 グリモワルドが軽く手を振った。


 部屋の中を飛び回っていたミニフェニックスが、ふっと消えた。赤い光の粒が散って、空気に溶けていく。



 グリモワルドが、ピリカの方を見た。


「さてピリカ。大会で使った”無詠唱の爆裂魔法”、つまりは"水素爆発"がどう起きるかを説明せい」


「はい。空気中の水素と酸素というものがあり、そこに着火すると結びついて爆発が起きて水になります」



 アリサが目を瞬いた。


 ——水素? 酸素? 爆発して水になる?


 聞いたことのない言葉が並んでいる。だが、ピリカは淀みなく答えている。



「わしからするとまだまだ雑じゃが——まぁ、"何が燃えてるかわからないけど燃えている"に比べると、だいぶ精度は高いわな」


 グリモワルドがコーヒーを啜った。


「では、水素と酸素の作り方は?」


「はい。水に魔力を流して、水素の空気と酸素の空気に分けるイメージをしています」


「え——水から、空気が生まれる……?」


 アリサが思わず口を挟んだ。


「そうじゃ。その通り」


 グリモワルドが頷いた。


「今までの魔法が"魔力を流すと、なんかいい感じに結果をくれるもの"だとしたら——ピリカがやったことは"過程をきちんと認識して、そこを魔力で補助するもの"じゃ」


「…………」


「その準備さえやってやれば、あとは起動するだけ。その起動も、火花ひとつで問題ない」


「…………」


「そして、わしらは最近これを"魔法"と対比するものとしてこう呼んでおる」




 ——"魔術"とな。




 ——過程を認識して、補助する。


 アリサは、さっきのピリカの説明を思い返した。水素と酸素。着火すると結びつく。爆発して水になる。——何が起きているかを理解した上で、魔力はその過程を"手伝う"だけ。


 だから、魔力が少なくても成立する。


「……つまり、魔術は"とても効率がよい魔法"ということですか?」



「そのとおーり!」


 グリモワルドが手を打った。


「お主、本当に筋が良いのう」


「私、それに気づくのに三日くらいかかったのに……」


 ピリカが肩を落とした。



「ちなみにじゃが——」


 グリモワルドがコップをテーブルに置いた。


「わしは魔法も魔術も、どっちもめちゃめちゃ使えるぞ」


「…………」


「考えるのが面倒な時、大雑把に結果をくれる魔法は大変便利じゃ。さっきのフェニックスもそうじゃな。その分、細かい制御が効かない傾向はあるがの」


 ——魔法も魔術も、両方使える。


 アリサは、ようやく理解し始めていた。さっきのコーヒーを淹れる並行魔法。ミルクの遠心分離。フェニックスの短縮詠唱。——あの全てが、この人にとっては「どちらかの道具を適当に選んでいるだけ」なのだ。


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