表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神籍のトワ  作者: 灯野 しおん
第三章 『ユラ』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/38

第三十五話

光と闇がぶつかっていた。


 伏見の空。


 世界の裂け目。


 ヨルの翼。


 世界の外から伸びる巨大な腕。


 その衝突だけで、

 現実が悲鳴を上げている。


 鳥居が砕ける。


 山が揺れる。


 空間そのものが歪む。


 だが。


 トワは見ていた。


 ヨルが苦しんでいる。


 何万年もの孤独。


 何万年もの戦い。


 ずっと一人で背負ってきた。


 もう十分だ。


「ヨル。」


 トワは前へ出る。


 レンが叫ぶ。


「神崎!!」


 アマツも止めようとする。


 だが。


 トワは首を振った。


「違う。」


 白い光が広がる。


「一緒に戦うんでしょ。」


 ヨルが振り返る。


 赤い瞳が揺れる。


「シオン。」


「今はトワ。」


 トワは笑った。


「だから。」


「神崎トワとして行く。」


 その瞬間。


 ユラたちが飛び出した。


『トワ!』


『イッショ!』


 ヒカリも駆ける。


「私も!」


 白い光。


 金色の光。


 小さな三つの魂。


 そして。


 トワの胸へ吸い込まれる。


 眩しい光が世界を包む。


 優しさ。


 勇気。


 希望。


 トワが生み出した三つの魂。


 いや。


 トワ自身の心だった。


 その全てが一つになる。


 光の中で。


 トワは思い出す。


 神籍とは何か。


 魂の戸籍。


 魂の記録。


 輪廻の管理。


 だが。


 もっと古い意味があった。


 神籍。


 それは。


 世界に存在した全ての魂の記憶。


 誰かが忘れないためのもの。


 消えた命も。


 生まれなかった命も。


 苦しんだ命も。


 全部。


 存在した証。


「だから。」


 トワは裂け目を見上げる。


「消させない。」


 巨大な存在が動く。


 《異常》


 《理解不能》


 《修正不能》


 初めてだった。


 感情のない存在が。


 戸惑ったのは。


 トワの光が広がる。


 京都を包む。


 日本を包む。


 そして。


 世界中へ。


 無数の魂が輝き始める。


 誰にも見えない。


 けれど確かに存在する光。


 忘れられた魂たち。


 輪廻へ帰れなかった魂たち。


 生まれられなかった魂たち。


 その全てが。


 トワの光へ応える。


 ヨルが笑った。


 アマツも笑った。


 ミコは泣いていた。


 レンは静かに見守っている。


 巨大な存在の腕が崩れ始める。


 世界の外側へ還っていく。


 《記録更新》


 最後に声が響く。


 《新規生命循環システム確認》


 《承認》


 全員が固まった。


 承認?


 巨大な目が閉じていく。


 そして。


 最後に。


 ほんの少しだけ。


 優しい声が響いた。


 《よく見つけたね》


 裂け目が閉じる。


 静寂。


 夜空には星が広がっていた。


 誰も動かない。


 やがて。


 ヨルが小さく笑う。


「終わった。」


 トワも笑った。


「うん。」


 長かった。


 けれど。


 終わったのだ。


それから一年後


 東京。


 春。


 神崎トワは高校へ通っていた。


 少しだけ普通ではない毎日。


 ユラたちは相変わらず騒がしい。


 ヒカリはよく笑う。


 ヨルは時々遊びに来る。


 アマツは京都で神籍管理局を困らせている。


 ミコは黄泉駅を守り続けている。


 レンは――


「神崎。」


「なに?」


「遅刻する。」


「レンが急かすからでしょ!」


 そんな日常。


 空は青かった。


 世界は続いている。


 そして。


 魂は巡り続ける。


 新しい出会いのために。


 未来へ向かうために。


 トワは空を見上げる。


 どこかで。


 誰かの新しい魂が生まれる気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ