プロローグ・登場人物紹介
セレスティナ・ソレムは生まれた時から、一家の異物だった。
ソレム家はハーダル王国から伯爵位を賜った由緒ある家系で、解呪の能力を受け継いでいる。ハーダル王国では時おり瘴気が発生して魔物が生じるのだが、魔物に対抗する魔力を持つ者たちが人々を守護し、支配してきた歴史がある。貴族に叙せられるのはそういった家系だ。ソレム家は長い歴史の中で魔力が解呪に特化し、貴族の中でも特異な位置を保っている。大貴族とは言えない伯爵家でありながらも注目されるのはそういった理由が一つ。
そして理由のもう一つが、その美貌だった。一族の多くの者が金髪に碧眼、均整の取れた体格、端麗な顔貌を持つ。その能力と美貌とで、ソレム家は貴族社会に一定の位置を占めていた。
しかしセレスティナだけは例外だ。生まれた時から髪は真っ白でぱさぱさしており、青白い肌は生気がなく、しかも体中が痣だらけだった。まるで魔物の呪いを受けたかのようだと、赤子の誕生に居合わせた人々は恐怖した。
瘴気から生まれる魔物は人に害をなす。獣のような姿で現れ、人を爪や牙などで傷つけ、傷口に爛れを残す。瘴気に触れた傷口は治りが遅く、呪われた痣として残ることもある。魔物に触れられたことがないはずの娘が痣を持っていたことを、そしてその痣が自分たちに解呪できないものであったことを、赤子の両親は受け入れられなかった。赤子は遠ざけられ、両親の目の届かないところで育てられた。
ソレム家の中で、赤子の味方になった者は一人だけだった。赤子の祖母フラヴィア・ソレム、彼女が赤子にセレスティナと名前をつけて慈しんだ。解呪師としての魔力がまったく現れないセレスティナを見捨てることなく、遊び相手になり、勉強を教え、離れの建物で共に暮らした。
セレスティナが生まれ、その痣も無能力もまったく改善する兆しが見えないことで両親の仲に亀裂が入りかけたが、それも第二子が生まれるまでのことだった。セレスティナの誕生から一年少し経って生まれた妹は、一族の金髪と解呪師の能力を受け継ぎ、眩いまでに美しかった。両親はいたく喜び、いよいよセレスティナのことを意識の外に追いやり、幸せな一家として暮らし始めた。第三子である長男も美貌と魔力を持って生まれ、当主夫妻と二人の子供はそれだけで完成された一幅の絵のようだった。
美しく幸福な四人家族。世間の目にはソレム家がそのように映った。第一子のセレスティナはいないものとして扱われ、祖母と離れに引きこもって暮らしていた。
転機はセレスティナが十歳の時。祖母が亡くなった。
[ソレム伯爵家]
☆セレスティナ(ヒロイン)
フラヴィア(祖母、ルイスの母、先代当主夫人)
ルイス(父、当主)
イザベル(母、当主夫人)
マリー(妹)
フィリップ(弟)
カレド(遠縁)
[ファルカンド公爵家]
☆ナイジェル(ヒーロー)
ハロルド(オリヴィアの父、先々代当主)
オリヴィア(母、先代当主夫人)
ウォルター(父、先代当主)
クレア(妹)
ティルダ(オリヴィアの侍女、伯爵令嬢)
ネリー(オリヴィアの侍女、男爵令嬢)
アン(メイド)
[その他]
フェリシア・ハーダル(ハーダル王国第三王女)
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