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恋と剣と転生事情

 僕の名前は七瀬 勇気(ななせ ゆうき)

 今、僕は一人の女の子の手を引いて走っている。

 理由は簡単、追われているからだ。

 追ってくるのは魔族と呼ばれる奴等。

 はっきり言うが、しつこい。

 僕達は路地裏を走り大通りへと飛び込む。

 人込みに紛れて追跡者をやり過ごすこととする。

 

 「どうやら撒いたみたいだな」


 「はい、助かりましたね」


 二人は手を取り頷き合いまた、人込みへと消えて行く。

 僕達の明日に平和はあるのか。


 さて、僕達が何故こうなったのか、すべての始まりをお話ししよう。



          @



 僕は普通の高校生だった。

 だが、通学途中に突然足元から光が溢れだしたかと思うとこの世界に一人、立っていた。 ここは魔大陸と呼ばれるところで、魔族などが多く住む場所だ。

 僕はある街中の路地裏に召喚されたみたいだ。

 この街の名はアスベルト。

 魔王が納める街だ。





 「ど、何処、ここ。あれ、鞄がない。え、なにこれ………」


 光に飲み込まれたと思ったら、全く知らない場所にぽつんと立っていた。

 僕の名前は七瀬 勇気。

 さっきまで学校に行く途中だったんだけど。

 僕は路地裏を進み通りへと出る。

 なんだこれ、普通の人間じゃない。

 あっちには羽根が生えたのいるし、向こうにいるのは体が赤色だし、おかしいぞ、これ。

 僕はそっとまた路地裏に戻り、今の状況を考察してみる。


 足元の光、知らない場所、人間以外の人形。


 う~ん、もしかしてこれ、異世界転生ってやつか?

 よくアニメやラノベにでてくるやつ。

 実は僕もそのてのものをよく読んでたんだ。 絶対そうだ、これ。

 まさか自分が異世界転生するとは思っていなかったので、心の中では正直困惑より高揚感が勝っていた。


 だけれど何故、路地裏。

 こういう場合、召喚者が現れて状況説明するんじゃないの。



   ~~~~~~~~~~~~~~~


 「おぉぉ、よく来た勇者よ。突然このようなところに呼ばれて困惑しているだろうが、どうか我らの話しを聞いて欲しい。我ら人間は今、窮地に立たされている。かの魔王が手下を放ち人間の街を襲っているのだ。どうか勇者よ、我らの希望よ、この世界を魔王の手から救いだして貰いたいのだ。それがなされた時には、我が娘を汝の妻とし、この国を導いてほしい」


 その言葉と共に一人の美少女が僕の前に姿を現す。


 「勇者様。わたくしも、この国のいえ、世界中の人々の平和を心から願っております。どうかお願いでございます。かの、魔王を倒しては頂けないでしょうか。それがなされ平和がおとずれた時、わたくしは喜んで勇者様の妻になろうと思います」


 そう宣言し僕の前で両膝をつきながら、胸の前に両手を組み、祈るような表情で僕を見上げるのだ。


 僕は少女の美しき心に触れ、決意を胸に宣言する。


 「我は勇者、七瀬。ここに、みなに誓う。人々を苦しめる魔王を打ち倒し、この世界に平和をもたらすと」


 城内は歓喜の声に包まれる。

 そして奥から美女がひとふりの剣をもって現れる。


 「勇者七瀬よ。これは代々我が国に伝わる、伝説の勇者の  剣 (つるぎ)。この剣エクスカリバーを持ち魔王を倒すのだ」


 僕は剣を受け取り鞘から引き抜いて、天へと掲げる。

 すると天より光が僕を照らし、ファンファーレが流れる。

 城内がまた歓喜の声に包まれる。

 僕は剣を鞘に納め、颯爽と城より旅立つ。

 この世界の平和を願って。


   ~~~~~~~~~~~~~~~


 僕は今、真っ白な部屋に立っている。

 すると突然目の前に、美しき女性が現れる。


 「七瀬 勇気。貴方にお願いがあります。異世界に旅立ち、世界を救ってほしいのです」


 なんと、かの女性は異世界の女神だという。

 その美しき女神が僕に、平和を望んでいるのだ。


 「あの、何故、僕なのでしょうか」


 「貴方には他の誰にもない、勇者の資質があります。それを見極めたうえで貴方にお願いしているのです。行ってもらえるのであれば汝に女神の祝福と、神の剣、エクスカリバーを授けましょう。その剣を持ち、かの地の邪神を打ち倒すのです」


 僕は決意しその剣に触れる。

 すると剣は眩いばかりの光を放ち、鞘から抜き出て僕の手におさまる。


 「やはり貴方こそ選ばれし者。覚悟はよいですね。では、旅立つのです」  


 「僕は、どんな困難にも挫けず邪神を打ち倒し、平和を取り戻すことをこの剣と女神様に誓う。見ているがいい邪神よ。我が勇気とみなの希望にてお前を打ち倒し、人々に笑顔を取り戻そうではないか。」


 「頼みましたよ。勇者、七瀬」


 その言葉と共にに僕は光に包まれ、異世界へと旅立つのだった。

 

   ~~~~~~~~~~~~~~~


 えっ、こんな感じじゃないの。

 じゃあ、なんで路地裏?

 ま、まさか、僕、モブじゃないよね?

 そ、そんな訳ない。

 俺は勇者だよね。


 そんな心の叫びが路地裏で錯綜していた。



          @



ここはある街の一角、よくデートの待ち合わせで使われる場所。

  御剣 聖也(みつるぎせいや)は一人の女の子と待ち合わせをしていた。

 だが、決して聖也にとって恋と呼ばれる感情は、持ってはいなかった。

 一人の女の子との約束を守るために来ていた。

 聖也にとってはある意味特別な子で、恩人であり恩師でもある方の孫娘である。

 決してないがしろにしていい、間柄ではない。


 「お、お待たせしました。遅れてすみません」


 右側より声が聞こえてくる。

 顔を向けるとそこに、うすい青色のブラウスに白のカーディガンをはおり、膝上の白のスカートをはいている御剣 真矢の姿があった。

 手には可愛らしい小さなバッグを持ち、走って来たのか息を整えるようとしている。


 「いいえ、私も今きたところですから」


 聖也は優しい笑みを浮かべながら、真矢に言葉をかえした。


 その笑顔には真矢だけでなく、周りの女性も思わず振り返り見ている。


 笑顔に心を囚われていたが、目を覚ますように聖也へと話しかける。


 「あ、あのプラネタリウムなんですけど、まだ時間があるみたいでよければ何処か、見て廻りませんか」

 真矢は精一杯の勇気で聖也をデートに誘っていた。

 真矢の性格は決してお淑やかと呼ばれるものでなく、体を動かすのが好きな行動派である。

 しかし聖也の前では道場の稽古以外に、その姿を見せた事がなかった。

 いや、出来なかった。

 真矢も年頃の女の子である。

 好きな男の前では猫を被りたくもなるのだ。

 勿論、真矢の誘いに聖也が断ることはなく、二人は一緒にショッピングを楽しむのである。




 二人は今、プラネタリウムが始まるのを椅子に座り待っている。

 中にはあちらこちらに人の姿が見え、若い男女のカップルや子供を連れた家族など、なかなかの人気スポットであった。

 真矢は聖也と、隣り合わせに座わっていることに、心をときめかせていた。


 「私、プラネタリウム初めてなんです。とても楽しみです」

 緊張からか真矢はしゃべりかけることで、気持ちを落ち着かせようとしていた。

 

 「私もですよ。今までで星を見上げることもありませんでしたから、とても楽しみです」


 聖也の横顔にチラリと目線を滑らすと、何やら憂うような表情を浮かべる姿に胸をうたれ、真矢は目線を反らせずにいた。

 真矢が心をときめかせていると照明がゆっくりと落ちていき、数秒後には辺りが見えぬまでに暗くなっていた。


 怖さは感じないが、視界が奪われたことで意識の外であろうか、真矢は聖也の手をいつの間にか握りしめていた。

 手の平の温もりに自分の手がどうなっているのかを理解していたが、何故か離すことが出来ずにプラネタリウムの終わりまで、手を繋いだまま過ごすこととなる。




 真矢は顔を赤らめながら、ショッピングモールの広場にいた。

 いまだにプラネタリウムでのことが忘れられず顔に出ていた。


 聖也は真矢が疲れているのではと思い、飲み物を買いに行っている。


 「真矢さん、これでよかったですか」


 帰ってきた聖也が真矢に飲み物を差し出す。


 「ありがとうございます」


 いつもより弱々しく返事を返す。


 やはり疲れているのかもしれないと、更に勘違いをしていく聖也。


 「すみません、気づかずに。どうやらお疲れの様ですから、戻りましょうか」


 「えっ、あ、えぇ、すみません」


 突然のことに戸惑いつつも、まだ一緒にいたいとの思いも裏腹に、つい頷いてしまった。

 自分の勇気の無さが恨めしくなり、更に肩を落とすこととなる。


 家に帰るまで真矢は終始口を開かず、聖也はどう接すればいいのか分からずにいた。


 真矢と聖也が御剣の家に帰りつく。

 すると母屋から祖父が現れ真矢に来客を伝える。


 「真矢、お友達が来ておるぞ。愛ちゃん達じゃ。はよ、行ってやれ」


 「うん」

 真矢は小さな返事をして去っていく。


 「なんじゃ、何かあったのかの」

 祖父は孫娘の背中を見つめて呟く。


 「すいません、先生。真矢さんが疲れているのに気付かずに」


 「よいよい、真矢(あれ)のことだからたいした理由でもあらせん。お前も随分強くなったが、これについては、ことに鈍いのぉ」


 老人は終始笑顔で真矢に向ける眼差しとかわらない瞳で、聖也を見つめていた。


 その老人も去り、着替えて道場へ向かう途中に、突然声がかけられた。


 「お主ここの者ではないな」


 聖也が振り返ると一匹の犬がいるも、声の主が見当たらず、気配を探るように目線のみを動かし探す。


 「こっちじゃ、こっち」


 声をたどり目線を下げると、やはり犬しかいなかった。


 「まさかとは思うが」


 「くっくっくっ、久しいな。魔剣王ゾロアーク」


 聖也はかつての名を呼ばれ驚いていた。

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